総合家電メーカーの中国TCLは、ディスプレイ技術の分野でも世界のリーディングカンパニーです。モバイルデバイスなどに応用できる技術として「NXTPAPER」というディスプレイも開発しています。
その最新モデルを搭載したスマートフォン「TCL 50 Pro NXTPAPER 5G」が、2024年9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFA2024で公開されました。
NXTPAPERは、アンチグレアディスプレイに複数のレイヤーを重ねてブルーライトを最小限までカットし、さらにCPL(円偏光発光)技術でディスプレイに当たる光を自然界の光の屈折に合わせることで、紙のような見た目を実現しています。
2021年に製品化されてから、TCLはNXTPAPERを採用したスマホやタブレットを毎年リリースしてきました。TCL 50 Pro NXTPAPER 5Gの画面を見てみると、確かに紙のようであり、しかも明るさもあって十分実用的です。
本体スペックはプロセッサがMediaTekのDimensity 6300、カメラは1億800万画素の広角、800万画素の超広角、200万画素のマクロを搭載しています。バッテリー容量は5010mAhです。ミドルレンジとすることで価格を抑えつつ、メインカメラは疑似的に望遠もカバーできるように億画素クラスを採用しています。
IFA2024の会場で連日試用してみましたが、過去のNXTPAPER搭載モデルよりも画面が明るなったと感じられ、それでいて10分ほど操作していても目が疲れにくいと実感しました。なおディスプレイのスペックは6.8型、2460×1080ピクセル、リフレッシュレートは120Hzです。
写真撮影時のプレビュー、写真の表示、動画の再生なども何ら違和感はなく、普通のディスプレイと変わらぬ感じで使うことができます。それでいて目にやさしいのですからメリットしかないディスプレイと感じさせます。
実機の展示場所にはありませんでしたが、デモ画面を見ると「T-pen」と呼ばれるスタイラスにも対応しています。手書きメモのできるスマートフォンとしても使えるわけです。
なお過去のNXTPAPER搭載スマホは、Samsung Galaxy Noteシリーズや最新のGalaxy S24 Ultraのように、スタイラスを本体に収納できるモデルもありましたが、TCL 50 Pro NXTPAPR 5Gはスタイラスは収納できません。
本体側面には電源やボリュームボタンがあります。そして下部側にも1つ追加のボタンがあります。これはスライド式のスイッチで「NXTPAPER Key」と呼ばれるもの。ディスプレイの表示モードを切り替えられます。
NXTPAPER Keyをスライドさせると、ディスプレイ表示モードの切り替えメニューが現われます。一番下の「Colour Paper Mode」は一般的なカラー表示で、真ん中の「Ink Paper Mode」はモノクロ表示になります。そして一番上の「Max Ink Mode」は電子ペーパーのような表示でもあり、バッテリー使用量を抑えるとともに電子ブックリーダーなど最小限のアプリのみが利用できます。
左がInk Paper Modeで、アイコンなどはモノクロながら階調表示となります。右はMax Ink Modeでアイコン表示は2階調のみ。電子ペーパーにかなり近くなります。
モノクロモードは電子ペーパーとほとんど見た目が変わりませんが、大きな違いは画面のスクロールや切り替え時に残像が一切残りません。一般的な液晶や有機ELと同様に、モノクロ表示の画面を快適に高速スクロールできるのです。
電子ペーパーでは画面を切り替えるとどうしても残像が残ってしまうため、そこに違和感を覚えてしまう人も多いでしょう。NXTPAPERはまさしく一般的なカラーディスプレイと電子ペーパーのいいとこ取りをした新世代のディスプレイなのです。
AIを使った文書要約など最新のトレンドにも乗った機能も搭載しています。ぜひ他社にもライセンスを供与して、NXTPAPERディスプレイを採用するスマホが増えてほしいものです。