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「iPhone 16 Pro」と「Pixel 9 Pro」をガチンコ比較 カメラやAIはPixel優位だが、長く使うならiPhoneを選ぶ

ITmedia Mobile 2024年10月28日 12時2分

 日本で注目度の高いスマートフォンとしてiPhoneとPixelが挙げられる。2024年は「Google Pixel 9 Pro」の登場で「コンパクトな上位機種」が登場し、「iPhone 16 Pro」もカメラ性能の向上と画面サイズの大型化を果たした。くしくも似たようなスペックになったこれら2機種は、どのような人たちにおすすめなのか、両機種の実機を1カ月ほど使ってみて“異なる強み”を見ていこう。

●基本スペックとパフォーマンスの違いをチェック

 まずはiPhone 16 ProとPixel 9 Proの基本スペックを確認していこう。

 サイズはiPhone 16 Proが71.5(幅)×149.6(高さ)×8.25mm(奥行き)に対し、Pixel 9 Proは72(幅)×152.8(高さ)×8.5mm(奥行き)だ。重量はどちらも199gであり、200g以下に抑えている。iPhone 16 Proの方がやや小柄で、重量に対して凝縮されているような感覚だ。

 それでも、6型前半サイズの画面を持つスマートフォンとしては重たい部類だ。特にiPhone 16 Proは前作のiPhone 15 Proから12g増量しており、「重くなった」という意見も見られた。

 画面サイズはiPhone 16 Proが従来の6.2型から6.3型へ変更。従来よりも若干大型化したが、極端なサイズの変化は感じられない。また、iPhone 15 Pro Maxに備わっていた5倍望遠カメラが採用され、より望遠性能が高くなった。

 iPhone 16 ProのディスプレイはSuper Retina XDRと呼ばれるAMOLEDパネルを採用。120Hzのリフレッシュレートに加え、ピーク輝度2000ニトと明るいディスプレイを採用する。

 Pixel 9 Proは6.3型の画面を採用。iPhoneのProシリーズに相当するサイズは初展開となり、背景には主に日本市場で強い要望のあった端末としている。カメラ性能や画面性能は上位のPixel 9 Pro XLと共通しており、上位モデルの性能がそのままコンパクトになったと評価したい。

 ディスプレイはSuper Actua Displayと呼ばれるものを採用。こちらは1~120Hzに可変できるLTPOに対応。ピーク輝度も2000ニトと明るいディスプレイを採用している。

 iPhone 16 Proはディスプレイの上部にDynamic Island(ダイナミックアイランド)やインカメラを備える。ここには顔認証で使用するセンサーも搭載されているため、同じ画面サイズでも画面の表示面積はPixel 9 Proの方が大きく感じる。

 生体認証はiPhoneがFace IDの顔認証に対し、Pixelは顔認証と指紋認証を利用できる。この点では指紋認証も選べるPixelの方が選択の自由度が高い。また、Pixel 9 Proでは指紋センサーが光学式から超音波式に変更されており、以前よりも認証精度と速度が向上した。

 プロセッサはiPhone 16 ProがApple A18 Proを、Pixel 9 ProがTensor G4を採用する。Apple A18 Proは第2世代の3ナノメートルプロセス、Tensor G4は4ナノメートルプロセスとなっており、どちらも新型のプロセッサが採用された。チップの世代はAppleの方がより新しいものを使って製造している。

 また、Pixel 9 Proでは冷却機構にベイパーチャンバーを採用しており、従来よりもパフォーマンスが長時間持続するようにしたという。

 Geekbenchのスコアは実測値で以下の通りだ。実測スコアはiPhone 16 Proがシングル3321、マルチ8191、GPUが32927だ。対するPixel 9 Proはシングル1937、マルチ4618、GPU(OpenCL)が6539だ。OSが異なるのでこの数字はあくまで参考程度にはなるが、CPU、GPU共にiPhone 16 Proに搭載されるApple A18 Proがかなり高性能だ。

 パフォーマンスを確認するためゲームなどで実際に遊んでみたところ、iPhone 16 Proは最新世代のiPhoneなだけあって快適そのものだった。一部コンテンツは120Hz描画に対応するなど、最適化によって相性のよいゲームも存在する。

 Pixel 9 Proは性能面では1世代前のハイエンドスマートフォンといったところ。著名なところでは原神やゼンレスゾーンゼロ、学園アイドルマスターをはじめとしたゲームは高画質設定にすると描写に引っ掛かりなどがみられた。

●カメラ性能はPixelの方が望遠性能で優位 AIを用いた編集機能も充実

 注目したいカメラ性能はiPhone 16 Proはメインカメラが4800万画素、超広角カメラが4800万画素、5倍望遠カメラが1200万画素だ。テトラプリズム方式の望遠レンズを採用したことで、望遠性能を高めながら本体の厚みを抑えている。

 望遠カメラは光学5倍望遠で最大25倍の望遠撮影。超広角カメラを用いたマクロ撮影が可能だ。この他、4K120fps撮影などをはじめとした、高い性能を生かした動画撮影も可能だ。

 Pixel 9 Proはメインカメラが5000万画素、超広角カメラと5倍望遠カメラには4800万画素のものを採用する。メインカメラと望遠カメラは競合と比較しても大型のイメージセンサーを採用しており、高い基本性能を有している。光学5倍望遠で最大30倍の望遠、超広角カメラを用いたマクロ撮影が可能だ。

 以下、撮影した写真を比較していこう。上側がiPhone、下側がPixelの順の掲載だ。設定は両機種とも初回設定の状態で撮影した。

 両者共にきれいに撮影できる。細かいディテールの処理やHDR処理(明暗差の処理)はPixelの方が優れているように感じるが、iPhoneが大きく劣るわけでもない。この価格帯のスマートフォンに求められる基本的なレベルはしっかり確保していると感じた。

 一方で料理の写真の点数はiPhoneに軍配が上がりそうだ。Pixelでは青めに写るクセがあるのか、おいしそうに写らない場面があった。必要に応じてフィルターや編集機能を使ってみるとよさそうだ。

 夜景も両者共にきれいに撮影できる。iPhoneの方が夜景モードの露光時間が短くよりサクサク撮影できたが、細かいディテールの処理やフレアやゴーストの少ないのはPixelだと感じた。

 望遠カメラの性能は、4800万画素の望遠カメラを備えるPixel 9 Proがハードウェア的には優位だ。iPhoneも光学5倍望遠を備えるので10倍くらいまでは比較的きれいだが、それ以降の倍率はPixelの方が一枚上手だ。

 超広角カメラは両者ともに優秀だ。iPhoneも基本的なスペックを向上させてきたので、Pixelと比較してもそん色ないレベルになった。マクロ撮影性能も超広角カメラを用いる仕様だが、明かりを確保できる環境であればきれいに撮影できる。

●AI機能の見せ方ではPixelがリード、iPhoneはアップデート次第か

 AI機能は両者とも力を入れている。Pixel 9 ProはGemini AIを用いた機能が利用できる。Googleサービスと連携したAI機能なのでカバー範囲は自社サービスが中心となる。GmailやWebサイトの文章の要約や翻訳、Web以外にもYouTubeやGoogle マップなどをはじめとした自社サービス内の情報も引用できる。

 このあたりは、スマートフォンで必要とされているサービスの大半をGoogleが提供できているからこそできる強みだ。一方で、他社アプリとの連携はまだできていないので、ここが充実してくればより魅力的な機能に仕上がるはずだ。

 これ以外にも、ボイスレコーダーの文字起こしや翻訳などはオンデバイス(オフライン)でも利用できるようになっている。現状、日本語の文字起こしについてはPixelがトップレベルの精度を誇っており、筆者も取材などで活用している。

 Pixelでは目玉の「一緒に写る」などをはじめとしたAIを用いた写真撮影機能。編集マジックといった画像編集機能が利用できる。今作では生成AIを用いたズーム画質向上機能が利用できるなど、さらに画像編集機能に磨きがかかった。

 iPhone 16 ProはAI機能としてApple Intelligenceが利用できる予定だが、英語向けもまだβ版、日本語には2025年以降の対応としており、まだ一般には利用できる状態にない。機能としてはPixelでやろうとしていることを、より直感的なインタフェースと共に実装しようとしている。

 また、Apple Intelligenceの機能は外部アプリにも組み込むことができるため、今後は対応するアプリが多く登場すると考える。Appleもアプリベンダー向けに開発SDKを提供するなど、着々とAI対応への準備が進められている。

 iPhone 16シリーズにて新規で備わるカメラコントロールボタンもAI機能を簡単に呼び出したり、画像検索機能として利用したりできる。今後のアップデート次第で「カメラコントロールの評価」は変わってきそうだ。

 衛星通信を用いた緊急SOSについては、iPhoneは日本でも利用できるようになった。一方、Pixelについては今作のPixel 9シリーズで対応したものの、現時点では米国でしか利用できない。

 ソフトウェアのアップデート期間については、Appleは非公開だが、最新のiOS 18が2017年発売の「iPhone XR」が対象となっていることを考えると、iPhone 16シリーズも7年は最新OSを利用できると考えるのが自然だ。Pixel 9 Proは7年間のOSアップデートを公表しているため、長期間安心して利用できる。そのため、「長く使う」という意味では両者共通の強みといえる。

●基本性能のiPhone、AI機能を活用するPixel 長く使うなら性能で陳腐化しにくいiPhoneか

 iPhone 16 ProとPixel 9 Proの両機種を比較してみると、高度なアプリの最適化によって高い性能を発揮できるiPhone、Googleサービスとの高い親和性、AI処理を売りにするPixelという形でそれぞれに強みがあることを感じた。

 ゲームをはじめとした高いパフォーマンスを必要とする場合はiPhoneの方がよさそうだ。iPhone 16 Proに搭載されるApple A18 Proは現時点で登場しているスマホ向けプロセッサの中でもかなり高い性能を有しており、性能面の不満は少ないはずだ。

 今後のアップデートでApple Intelligenceに対応すれば、AIスマホとしての伸び代も期待できる。外部アプリへの対応次第では、後発商品として競合商品との差別化も図れると考える。

 Pixel 9 Proは直感的な画像編集、Geminiを便利に使えるGoogleサービスを主に使っている人におすすめだ。画像編集や動画編集を手軽に行えるので、そのような意味ではクリエイターを目指す方にも向いている。

 Pixelの画像編集機能といえば消しゴムマジックや編集マジックがあるが、これらは他のスマートフォンでも利用できるようになった。一方で「ブレ補正」「ズーム画質向上」といった依然としてPixel限定の機能も多い。音声消しゴムマジックも非常に便利だ。

 基本的な性能はiPhoneには劣るのでゲームには向かないが、だからといって大きく劣るわけではない。ゲームなどを遊ばずに普通に使う分には不満も少ない機種だ。

 最後に両者の価格(税込み)はiPhone 16 Proが128GBで15万9800円、Pixel 9 Proは128GBモデルが15万9900円だ。この差は通信キャリア向けもおおむね共通しており、価格はほぼ変わらない設定と考えてよい。

 一方でPixelの方が下取り価格の優遇やGoogleのAI「Gemini Advanced」サービスを含む機能の半年間無料特典が付属するため、お得感は強い。早期購入者は3万2100円相当のストアクレジットも付与されているので(現在は終了)、実質価格は12万円台後半という見方もできる。お得なのはPixel 9 Proだろう。

 今回はiPhone Proシリーズの価格帯にPixelが歩み寄ってきた構図となった。どちらを選ぶかといわれると悩ましいところだが、筆者はiPhoneを選択したい。PixelはいくらAI性能を高めたといえ、基本性能は同世代、同価格帯のAndroidスマートフォンに比べると劣る。アップデートは長期でサポートしてくれるとはいえ、4年後、5年後と経過したときに「性能不足で厳しい」と感じてくる場面も出てくるのではないかと考える。

 iPhoneの方が性能面で陳腐化しにくく、アプリも高度な最適化で古い機種でも比較的快適に使える。長く使うのなら、筆者はiPhone 16 Proを選択したい。

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