今話題のデジタル“カメラ”といえば、iPhone 16シリーズである。「iPhone 16」と「iPhone 16 Pro」の2系統があるわけだが、共通点も多いので両者を2回に分けて“カメラ”という視点でレビューしたい。
今回(前編)は、新しいインタフェース「カメラコントロール」ってどうなの、という所と基本画質をチェックしていく。
なお、この記事では特記のない限りiPhone 16は「iPhone 16」と「iPhone 16 Plus」を、iPhone 16 Proは「iPhone 16 Pro」と「iPhone 16 Pro Max」をまとめて指す。
●なんと、シャッターボタンが“5つ”になっちゃった!
iPhone 16とiPhone 16 Proでは「カメラコントロール」というボタンが増えた。そしてiPhone 16ではiPhone 15 Proで搭載された「アクションボタン」も増えた。
なんかボタンがいっぱい、って感じですな。
ここでアクションボタンに「カメラ」を割り当ていたとしよう。その場合、アクションボタンの長押しでカメラが起動する。この場合、カメラが起動しているとアクションボタンもシャッターボタンとして動作する。
2つの音量ボタンも加えると、合わせて3つもシャッターボタンがあることになる。
続いて、新設のカメラコントロール。こちらはクリックする(ポンと押して離す)とカメラが起動する。
そしてカメラアプリではシャッターボタンとして動作する。これが4つ目のシャッターボタン。
そして、カメラアプリの画面にもシャッターボタンがある。つまり、左右の側面と画面の3カ所に合計5つのシャッターボタンがあるという、便利なんだかややこしいんだか、よく分からない状態になったのである。
個人的には「どう持っても、どれかしらのシャッターを押せる」から、妙な持ち方で妙なアングルで撮れたりして面白い……のだけど、不用意に押しちゃって予定外の写真を撮っちゃうという事案も増えております。
●「カメラコントロール」でチェックしたいポイント
そして注目のカメラコントロール。チェックしたいポイントが3つある。
1. 位置はシャッターボタンとしてどうなん?
2. いろんなことできそうだけど、使いやすいの?
3. カスタマイズできるん?
順番に確かめていこう。
ポイント1:位置はシャッターボタンとして押しやすい?
カメラコントロールには、カメラをいろいろとコントロールする機能があるわけだが、もっとも使われるのは「シャッターボタン」として、だ。
本体を横位置に持ったとき、ここにシャッターボタンがあると押しやすそうである。
ただ、その位置に賛否両論ある。
例えば、ソニーの「Xperia 1」シリーズはずっと側面にシャッターボタンを持っているが、その位置はもうちょっと端っこだ。
どちらが正解か――それはスマホをどう持つかに大きく影響される。
カメラを使い慣れている人は、上の写真のように中指を背面に当てるように持ちがちだと思う。そして人差し指でシャッターを押すのだが、その場合はXperia 1シリーズの位置が正解。iPhone 16やiPhone 16 Proの位置だと、人差し指から遠い。
もう1つ、カメラを上下から挟むように持つ人もいる。こういう持ち方だと、iPhone 16やiPhone 16 Proのカメラコントロールはちょうどいい位置なのである。
昔、この持ち方はコンパクトデジタルカメラの“悪い持ち方”の代表として取り上げたことがあるのだけど(手ブレしやすく安定しないのだ)、まあ、手ブレ補正も昔に比べて強力だし、今だと正しい持ち方も何もないのかもしれない。
Appleがどういう持ち方を想定してこの位置に置いたのかは知らないけど、わたしはカメラコントロールの位置に合わせて上下挟み持ちをするようになっちゃいました。
ポイント2:カメラコントロール自体は使いやすい?
カメラコントロールは、それ自体がタッチセンサーになっていて、軽く押すとクッと軽い衝撃があり、その状態ですりすりすると設定を変えられるし、ダブルタップすると設定項目を変えられる。
で、最後までグッと押し込むと(ここは物理的に実際に押し込める)撮影できるというわけだ。
これらができるから「カメラコントロール」と名付けられたのだろうけど、ただ、これで細かい設定をしやすいかというと、それは難しい。
カメラコントロールで調整できるのは「露出補正」「ズーム倍率」「カメラ切替」「フォトグラフスタイル」「トーン」「被写界深度(ポートレート時のボケ調整)」の6つ。これはかなりぜいたくに搭載しましたな、って感じだ。
ということで、けっこうあるよね。
で、使っていて気になったのは操作に結構気を使うことと、誤操作しちゃうこと。意識せず指が動いちゃってズーム倍率が変わったり、露出が補正されちゃったりして、何度か困った。
誤操作の被害が少ないのは「カメラ切替」で(ちょっとでも変わったらすぐ分かるし)、これを使って0.5x→1x→2x(→5x)と倍率を変えられるのはそれなりに便利なので、使うときは大抵それだ。
そういえば、かつて「MacBook Pro」がファンクションキーの代わりにタッチバーを採用したけど、最新モデルではなくなっているし、カメラの世界ではキヤノンが初代「EOS R」で似たようなタッチ式の「マルチファンクションバー」を採用したのだけど、その後どうなったのかとんと聞かない。
ポイント3:カメラコントロールのカスタマイズはどう?
カメラコントロールで注目したいのは、そのカスタマイズかと思う。
カメラコントロールの設定を開くと、押したときに起動する「カメラアプリ」を変えられる。アプリ側も対応する必要があるようだが、2024年10月初旬現在、わたしのiPhoneにはいっているアプリでは「ProCamera」と「Instagram」が対応していた。
ProCameraはいち早くカメラコントロールに対応しており、ズーム倍率や露出補正ができるようになっていた。
なお、未対応のカメラアプリではシャッターとしても使えないので注意。個人的には、Leica LUXがこれに対応してくれるとうれしい。
カメラコントロールの結論
カメラコントロールをスリスリして設定を変えるというインタフェースは、アイデアとしてはいい。けれども誤操作もしやすく、使いこなすのは難しいかなと思う。
でも、シャッターボタンとしては便利で、個人的に、横位置の時はここでシャッター押す癖が付いちゃいました。
なお、2024年内のアップデートで、シャッター半押しでAF/AEを固定して全押しで撮影という「2段階シャッター」が提供される予定なので、カメラ好きの人は“乞うご期待”である。
●カメラの基本画質をチェック!
カメラコントロールも使いこなせるようになった(?)ところで、撮影に行くのである。
その前にiPhone 16とiPhone 16 Proのカメラの違いを確認しておこう。
iPhone 16は超広角と広角(以前はメインカメラと言っていたが、今は「Fusionカメラ」と呼んでいる)のデュアル構成となっている。
iPhone 16 Proは、これらに加えて5倍の望遠カメラも搭載している。前モデルではProは3x、Pro Maxは5xと望遠カメラに差を付けていたが、今回はどちらも5xにそろえてきたので、今回はカメラ面での差分はない。
超広角カメラを比較
では、超広角カメラから比べてみよう。
iPhone 16は超広角カメラが進化した。
前モデルまでは超広角カメラが「フォーカス固定」式で、近くのものにはピントが合わなかった。それに対して、iPhone 16は超広角カメラにもAF(オートフォーカス)機構を搭載した。
これにより、ごく近距離のものにもピントが合うようになり、それを利用した「マクロ機能」も搭載されたのだ。
まずはガスタンクを取る。1200万画素でF2.2。性能的にはiPhone 15 Proと同じと思って良さそうだ。
対してiPhone 16 Proはセンサーサイズやレンズのスペックは同じまま、画素数が約4800万に増えた。ただ、デフォルトでは1200万画素サイズで記録される。
昼間の遠景で1200万画素で撮る分には、iPhone 16とiPhone 16 Proの差はあまり出ない。
Fusionカメラ(メイン/広角カメラ)をチェック
続いてFusionカメラで撮ってみる。名称がメインカメラからFusionカメラに変わったのだけど、まあ広角カメラとかメインカメラと呼んでも差し支えはあるまい。
iPhone 16のFusionカメラは、iPhone 15と同じく4800万画素のセンサーを搭載。画角は(35mm判換算で)26mm相当で、レンズはF1.6となる。
一方、iPhone 16 ProのFusionカメラはスペックを見る限り、iPhone 15 Proと同等のものを使っている。センサーは約4800万画素で画角は24mm相当、レンズはF1.8だ。iPhone 16より少し広角で、センサーサイズも少し大きい。
晴天下の撮影では、FusionカメラもiPhone 16とiPhone 16 Proの差はあまり出ない。ただ、撮影条件が悪くなるとちょっと違いがでるかも。
どちらもデフォルトでは2400万画素相当のサイズで記録する。
望遠対決
続いて「2x」望遠対決を。ちょっと画角が違うが、まあ写りは同等。厳密にいえば、ほんのちょっとだけiPhone 16 Proの方がディテール描写や階調表現がしっかりしているけど、微妙すぎるので気にしなくていい。
次は「5x」望遠対決。望遠カメラを持たないiPhone 16は、Fusionカメラのデジタルズームでがんばってもらった。iPhone 16 Proはリアル5x望遠カメラだ。どのくらい差が出るか気になるよねってことで。
iPhone 16 Proの5x望遠カメラは、iPhone 15 Pro Maxとスペック上は同じ。120mm相当で、レンズはF2.8だ。
思ったよりも面白いので、拡大表示したものを並べておきます。
よく見ると、当然ながらiPhone 16 Proの方が優秀なのだけど、iPhone 16のデジタル5xズームもかなり健闘していると思いません?
でも、植物のように複雑なものだったり文字が混じってくると、その差が如実に出てくる。
何かの参考になれば幸いだ。
●ベーシックな作例を比べてみよう
では、いくつかベーシックな作例を出しておこう。
超広角カメラで虎ノ門ヒルズ。
続いて、Fusionカメラでパブリックアートを。
まあ、どっちもよく写ります、ってことで。
続いて室内ならちょっと差が出るかな、ということでくつろいでたイヌを2x望遠で。
室内でも差はほぼ出なかった。
iPhone 16にマクロモードが搭載された記念対決!
前述した通り、iPhone 16はProモデルと同様にマクロ撮影が可能となった。
Fusionカメラは、あまり近いとピントが合わなくなる(最短撮影距離が短い)。対して超広角カメラは極至近距離までピントが合う。
そこで、Fusionカメラでピントが合わない距離まで近づくと、画面に「マクロ」アイコンが出て、カメラが超広角カメラに切り替わるのだ。
そして、超広角カメラのデジタルズームでFusionカメラと同等の画角にして撮影するのである。
カメラ自体の性能はFusionカメラの方が高い上に、超広角カメラ+デジタルズームになることで、画質はちょっと落ちる。だからマクロモードを嫌う人もいる。
でも、被写体に数cmまでググっと近寄れるのはでかい。
画質的にはiPhone 16 Proの方がセンサーが約4800万画素になっただけのことはあるのか、ディテールの描写が自然だ。
ただ、ここでiPhone 16 Proの欠点が1つ出てしまった。Fusionカメラからマクロに切り替わるときの“距離”だ。
iPhone 16 ProのFusionカメラの方が最短撮影距離が長い――つまりiPhone 16よりちょっと早い段階でマクロモードに切り替わるってしまうのである。
iPhone 16だと約15cmくらい、iPhone 16 Proだと約20cmくらい。
下は、カメラをちょっとずつ近づけながら、マクロモードに切り替わる直前で撮ったもの。これを見ると差が分かる。
ちなみに、わたしは「マクロモードに切り替えたくないな」というときは、2xで撮るようにしている。その方が形もきれいに撮れるし、背景もすっきりするしね。
料理を撮るときは、皿に近づきすぎるとマクロモードになっちゃうので、それなら少し離れて2xで撮った方がお皿の形もきれいに撮れていい。マクロ撮影よりも2xにするのがおすすめだ。
実は、最短撮影距離でもっと気を付けなければならないのが、iPhone 16 Proの5x望遠カメラ。これがまた、撮影最短距離がけっこう長いので、ちょっと近いものを望遠で撮ろうと思うと、Fusionカメラの5xズームになってしまうのだ。
マクロ時と違って、画面に何の警告もアナウンスもなく切り替わるので、クオリティーにこだわる人は要注意。
今回、どちらも5xにセットして撮影したが、片方はFusionカメラの5xデジタルズームだった。ほんのちょっとの距離の違いだ。
5x望遠カメラのプリズムを4つ使うという構造だと撮影最短距離を短くするのは難しいのかもしれないが、ちょっと残念である。
と、ちょいと不満点も書いたが、基本画質自体は相変わらずのハイクオリティーを保っている。超広角カメラもFusionカメラも、iPhone 16 Proの方が高性能なものを使っているけれども、実使用上では両者の差はあまり感じないと思う。
となると、5x望遠が必要かどうかってことになるかな。カメラコントロールの話とマクロの話で長くなっちゃったので、ポートレートや新しいフォトグラフスタイル、そして動画の話は後編で。