NTTドコモは7日、2024年第2四半期決算を発表した。売上高にあたる営業収益は対前年同期比1.6%増の2兆9938億円、営業利益は同4.7%減の5533億円で増収減益だった。業績予想に対しては順調に進捗(しんちょく)しており、前田義晃社長は、「このトレンドを維持して下期にさらなる増収を目指し、年間の増益につなげたい」と意気込む。
●irumoへの加入増が尾を引いて増収減益 下期反転を目指す
セグメント別の営業収益では、コンシューマー事業が同2.2%増の2兆2204億円で、特にスマートライフ事業が同13.3%増の2桁成長となって5901億円となった。コンシューマー通信事業は同1.2%減の1兆6495億円。法人事業は同0.1%減の8789億円だった。
営業利益は、スマートライフが同23.3%増という大幅増益を達成し、1274億円となった。ただ、コンシューマー通信が同14.1%減の2881億円となり、トータルでは同5.3%減の4155億円。法人事業は同3.0%減の1378億円だった。
上期としては増収だが、特に第1四半期の増収幅191億円に対して、第2四半期は283億円の増加となり、増収幅が拡大。営業利益も減益ながら同じく173億円のマイナスから101億円のマイナスへと減収幅が縮小。年間では増益へ反転させたい考えだ。
特に好調だったスマートライフの収益は、マイナポイント収入の減影響という特殊影響を除くと、金融・決済領域を中心に888億円の増となった。ただ、4分の3程度はM&A(合併・買収)によるものだったという。
金融・決済領域ではマネックス証券、オリックス・クレジットを買収したことで成長したが、さらにdカードの契約者増、カード利用促進が好影響。マーケティングソリューション領域では、インテージホールディングスのM&A、マーケティングDXの成長が貢献した。Lemino、dアニメなどの映像系サービスも好評だった。
コンシューマー通信では機器収入が146億円の増加となったものの、モバイル通信サービス収入が354億円の減少となった。これは低価格プランのirumoに多くのユーザーが加入したことによる影響で、トータルでは208億円の減少だった。
収益面でもスマートライフがけん引。金融・決済などの分野で357億円の増益。約2割がM&Aによる影響で、8割が純粋な成長によるものだという。モバイル通信サービスでは競争力やシェアの拡大を狙った販売強化試作費の増加などが影響して472億円減となった。
明るい話題としては、顧客基盤強化に向けたチャネル強化策が奏功し、MNPが大きく改善。特に10月はMNPがプラスとなって、特に若年層のMNPが大幅に増加した。これは量販店での販売を強化し、出張イベントの強化などが奏功した。特に若者は量販店で端末を購入するとのことで、施策の強化がMNP拡大につながったという。
さらに大容量プランのeximoへの移行が増加したことで、ARPUが下げ止まり始めた。2024年第1四半期と第2四半期はARPUが3910円で変わらなかった。2023年7月のirumo導入以来の減少傾向が止まったことから、このまま上昇することを期待する。
旧料金プランからの移行でeximoへの移行率60%達成を年度末に目指していたが、これを第2四半期の時点で前倒しして達成。旧料金プランからeximo、irumo、ahamoへの移行時の平均単価は全プランで上昇。データ利用量が増加したことで、段階制プランのirumoやeximoのARPUも上昇傾向にあるという。
こうした点を下期はさらに強化し、MNPのプラスをさらに拡大するとともにARPU向上に取り組んでいく。
●dカードにはプラチナカードが登場 数百万規模の会員を目指す
特に好調な金融・決済領域では、取扱高が13%増の78兆1400億円まで拡大。dカードも1809万会員まで到達したが、そのうち1099万がdカード GOLD会員で利益を拡大。真栄田社長は「事業性を加速させるため」として、新たにプラチナカードとして「dカード PLATINUM」を投入する。
年会費は2万9700円(税込み)で、ドコモの通信料金に対して最大20%のポイント還元や最大4万円のクーポン、マネックス証券のdカード積立での最大3.1%ポイント、プライオリティパス年間10回利用などの特典を用意する。
プラチナカードのニーズは以前からあったと前田氏。dカード GOLDの利用額が大きいユーザーも多かったが、これまでdカードの新システム移行に取り組んでおり、それが完了して新カード発行が可能になったこのタイミングでの投入になったと前田氏は説明する。
「年間の利用額が200万円を超えるようだとdカード PLATINUMがお得になる」というのがドコモの試算だが、100万円以上でもさまざまな特典の組み合わせでdカード PLATINUMのターゲットに入ると前田氏。目標会員数については、「だいたいこの手のサービスでは2桁万(数十万)ぐらいだと思うが、われわれは3桁万(数百万)のレベルにしていきたい」と意気込んでいる。
●ネットワーク改善は“重層的に”取り組む ブランドスローガンの刷新も
懸案の通信品質について、前田氏は「われわれの全ての事業の根幹となるネットワーク」と強調する。5GのSub6エリアを都市部中心に拡大しているドコモは、全国のエリアは4キャリアでナンバー1だとアピール。このSub6エリアの拡大に対して、4Gを転用した5Gエリアも活用して、「さらに厚みのあるネットワークとして、お客さまの期待する体感品質を提供する」と前田氏は話す。
特に1都3県を中心とした人口密集エリアに対して、Sub6と転用5Gの基地局数はともに2024年3月から9月にかけて10%増。これを2025年3月までにそれぞれ30%、40%の増加を図る。東名阪、福岡などの主要都市中心部のSub6基地局数はさらに拡大。鉄道の主要同線でも数を増やす。結果として、主要都市中心部の3分の2以上で100Mbps以上のスループットを達成し、渋谷駅や大阪駅、名古屋駅、山手線といった場所でスループットが向上しているという。
さらにイベントでの対策も強化。こうした取り組みはドコモのサイトでも公表していく。全国的な取り組みだけでなく地域ごとの取り組みも掲載していくという。
結果として、Opensignalによるネットワーク調査を指標の1つとして、前田氏は年度末までに1位を取ると宣言しているが、「急ピッチに取り組みをしている」という。Opensignalとのやりとりで「どこが悪いのか、データで確認している」ということで、順次問題を解消していく意気込み。「年度末までの間にかなり向上していることを見込んでいる」(前田氏)。
急ピッチでの拡大であるために、基地局の場所の確保や工事でも苦労をしている面はあるとしつつ、継続して取り組みを進める。他にも基地局のチューニングやd払いアプリを使って店舗での通信品質を調査してレピーターを設置するなど、細かな取り組みも進めて「重層的に幅広くやっていく」と前田氏は話す。
また、同社ではブランドスローガンを刷新する。既に発表しているグループビジョン「テクノロジーと人間力で新しいつながりを生み、心躍る価値創造で、世界を豊かに、幸せに」にも関連する「つなごう。驚きを。幸せを。」というもので、「特にこだわったのはビジョンの中心にある『つなぐ』という言葉と『驚き』という言葉」と前田氏は言う。
「ドコモグループが提供する価値に触れたときに、お客さまがイノベーション、つまり新しいものに触れたときに感じるとうれしい驚き、これを生み出して、それが定着していくことで世の中が幸せになる。そんな未来をグループ一丸となって生み出していきたいという合言葉」と前田氏は説明した。