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「Xiaomi 14T/14T Pro」開発の舞台裏 深化したライカとの協業、スマホの中身も強化して「ギアが2段上がった」

ITmedia Mobile 2024年11月19日 12時9分

 Xiaomi Japanは、廉価ハイエンドモデルの「Xiaomi 14T」「Xiaomi 14T Pro」を発売する。前者は12月中旬にau、UQ mobileが、後者は11月下旬にソフトバンクが販売を開始する予定だ。また、Xiaomi 14T ProはXiaomi自身もオープンマーケットモデルを投入する。2機種ともカメラ機能をライカと共同開発しており、日本で販売されるXiaomi Tシリーズとしては初めて同ブランドを冠しているのが特徴。いずれも日本向けのカスタマイズが施されており、おサイフケータイにも対応する。

 Xiaomi 14Tシリーズは、9月に独ベルリンで発表された端末で、その約2週間後に日本でもお披露目された。2023年に登場した「Xiaomi 13T」「Xiaomi 13T Pro」よりもタイムラグを短くした格好だ。グローバルイベントから間髪入れずに日本での導入を発表したところからも、Xiaomi Japanがこの2モデルにかける気合いがうかがえる。Xiaomi Tシリーズとして初のライカブランドを冠したモデルなだけに、ユーザーからの注目度も高まっている。

 ライカだけに注目しがちだが、Xiaomi 14T/14T ProはAI機能も強化。ボイスレコーダーの文字起こしや翻訳機能などにも対応している。また、Googleとの連携も深め、サムスン電子に続き「かこって検索」を搭載。Geminiアプリもプリインストールする。では、Xiaomi Japanはどのような戦略でこの2モデルを販売していくのか。取締役社長の大沼彰氏と、プロダクトプランニング部 本部長の安達晃彦氏に話を聞いた。

●「何でライカが付いていないの」という声があった

―― まずは2機種を日本に投入する狙いを教えてください。

大沼氏 昨年(2023年)はグローバルでライカが入っていて、われわれも付加価値として検討していましたが、日本ではそれができませんでした。キャリアとのビジネスの中で発表はしましたが、やはり皆さまからのご意見として「何でライカが付いていないの」という声もありました。

 今年(2024年)は、Xiaomi 14 Ultraをライカ共同開発モデルとして発売できましたが、あの機種は(広く)ユーザーに届けるには少しお値段も高めです。それもあって、(Xiaomi 14T/14T Proには)期待を持たれていたのではないでしょうか。Xiaomi 14T Proは昨年から価格も据え置きで、なおかついろいろなアプリケーションも含めて進化をしています。

―― ライカの画質が入ったことで、商品性も高まったと思います。

大沼氏 Xiaomiのブランドを上げる価値もあります。単にライカの名前を使っただけではなく、ソフトウェア、ハードウェアともにコラボレーションしながら取り組んできました。アプリの改善も含めてやってきましたが、これからそれをどうお伝えしていくかというところです。

―― 一方で、今回はGoogleとの協業も目立っていました。

大沼氏 ご存じの通り、GoogleとはXiaomi設立時からずっと一緒にやってきていますが、最近はそういった取り組みを全面に押し出せるような内容のものが増えてきました。根底ではずっとやっていましたが、ユーザーに見えやすい形で特徴が出てきたのだと思います。

安達氏 Xiaomi 14T/14T Proはこれまでになかったシリーズではなく、日本市場では11、12、13に続く4世代目の端末です。下期には、フラグシップ級の機能をお手頃な価格でという思想に基づいた端末を投入し続けています。大沼からお話ししたように、今回はそのギアが変わり、カメラにライカがついて、AI機能もより分かりやすい形で追加されました。また、お客さまの声をうかがった上で、Proは非接触充電にも対応しています。チップセットもシンクロする形で、MediaTekのAIに強いものを採用しました。

 スマホが停滞しているという空気もありますが、同じシリーズの中で、ギアが2段ぐらい上がったような形でローンチできたと考えています。お客さまのフィードバックを見てもそれを感じていますし、実際に商品の仕上がりもよくなっています。

 Googleとの協業というところでいうと、Androidをどうプレミアム化していくかを戦略的に取り組んでいるところです。その結果として、今年はXiaomi 14 Ultraという形として市場に出すことができましたし、Xiaomi 14T/14T Proも積極的なサポートをいただいています。これは、先頭グループとしてGeminiアプリやかこって検索を搭載できたことや、いくつかのサービス特典にも表れています。

●AIはロールアウトの時点から日本語に対応 カメラの画作りにも活用

―― AIに関しては、独自実装されたところも進化していますが、文字起こしなどがいきなり日本語対応したのには驚きました。

安達氏 規模が大きくない国や地域は後回しになっていますが、日本語にはロールアウトのタイミングから対応できました。試していただければ分かりますが、精度もそこそこあります。ここまで本格的に生成AI的なものを取り入れてから、まだ日は浅いですが、業界での動向も含めて注視しています。

大沼氏 AIについてはわれわれも注目しています。独自AIで進化していくところでは、競争も始まりました。当たり前にできるものと、われわれ独自のとがったところのバランスは見極めていきたいですね。

―― とがったところというと、今回はどのような機能になりますか。

安達氏 AIポートレート(写真を元に、ポートレート画像を生成できる機能)ですね。

―― 確かに、発表会で安達さんのポートレートが大写しになったところは面白かったです(笑)。

安達氏 他にもグラフィック系は分かりやすく、消しゴムも「消しゴムプロ」という名前になり、精度が上がってにじみが出にくくなりました。AI画像拡張もそうですが、あの辺は日常的に使えるので分かりやすいですね。

 あとは黒子としてのAIで、カメラの画作りにもめちゃくちゃAIを使っています。生成AI的なものが注目を集めがちですが、昔からある機械学習もいろいろなところで使っています。アプリケーションとして表に出ていないところにも、AIは使われています。

●名前だけのライカではない より深い協業で画作りの完成度も向上

―― SNSを見ていても昨年以上に大きな反響があったように見えました。一段、ジャンプできたような印象です。

安達氏 ライカとのコラボは非常に期待が高かったですね。Xiaomi 14 Ultraでお客さまに対して「カメラの最高画質」をお届けでき、最高のスマホカメラという形でさまざまな形で取り上げていただけました。その一定の評価をいただいた余韻というか、レピュテーション(評判)というかを、うまく引っ張った形でXiaomi 14T/14T Proを発表できました。

 もちろん名前だけのライカではなく、色作り、画作りや技術的なバックグラウンドも作品という形のエビデンスも出してきました。Xiaomi 14T/14T Proの発表もマーケティングチームが頑張って体験会という形まで落とし込んでくれたので、その場で画質をお示しすることができました。その反響が大きかったですね。

 ライカとの協業も去年と比べて深まっていて、「AISP」というスマホならではの処理の完成度が上がったところで、ちょうど日本に入ってくることができました。昨年のXiaomi 13T Proを買われた方には申し訳ないのですが、今年は完成度がより高い形でご提供できます。

―― ソフトバンクのXiaomi 13T Proなら、1年で買い替えられるように売っていたので、このぐらいアップグレードしてくれた方がいいような気もします(笑)。

安達氏 実際の評価は発売してみないと分かりませんが、Xiaomi 14 Ultraはいわゆるギーク層以外にも「面白い」ということで広がりました。とはいえ、Xiaomi 14 Ultraはやはり高い。これがXiaomi 14T/14T Proになると、お値段もお手頃になります。10万円を超えた端末をお手頃と言っていいのかどうかはさておき、この面白さがより一般層まで広がってくれればいいなと思っています。

※Xiaomi 14T Proのオープンマーケット向けモデルの価格(税込み)は、メモリ+ストレージ構成別に12GB+256GBが10万9800円、12GB+512GBが11万9800円の予定。

●Xiaomi 14T/14T Proはスマホとしての完成度にもこだわった

―― Xiaomi 14 Ultraもカメラが注目されましたが、そことの違いはどう打ち出していくのでしょうか。

安達氏 Xiaomi 14 Ultraはやはりカメラ性能がいい。センサーも違いますし、OIS(光学式手ブレ補正)も2つあって、絞りも調整できます。一方で、Xiaomi 14T/14T ProはOIS対応や一部の方が気にするFeliCaも搭載でき、全体のバランスとしていいパッケージングに収められていると思います。他社比較はしづらいですが、最上位クラスの商品とフェアに比較しても伍していける内容になっています。スマホとしての完成度に関しては、こちらの方を評価していただけるのではないでしょうか。

―― 確かに、スマホとして使うならXiaomi 14T/14T Proの方が普通に使えそうですね。

安達氏 ベストはこれとXiaomi 14 Ultraの2台持ちです(真顔)。

―― えっ(笑)。

安達氏 X(旧Twitter)で、うちのチームがUltraをどういうふうに使っているかの簡単なアンケートを取りました。結構な数の意見が集まりましたが、その中の45%ぐらいの方が1台持ちだった一方で、55%ぐらいの方は2台持ちで利用されていました。Xiaomi 14 Ultraが2台持ちの中のサブなのか、メインなのかは分かりませんが、狙い通り、カメラに特化した形でサブ的に使われています。中には、スマホ付きカメラとして使っている方もいます。

 もし、大きさだったり、機能的に足りないところがあったりするのであれば、このXiaomi 14T/14T Proはそこに対する1つの回答になっていると思います。

●グローバルの発表会は長い? 日本では凝縮して情報を届ける

―― Xiaomi 13T Proはソフトバンクが取り扱い、いきなり1年利用での実質価格を下げてきたことが話題になりました。やはりその影響は大きかったでしょうか。

大沼氏 昨年は年末に法制度がいきなり変わったりもしたので、なかなか分析しづらいですね。

―― 今年はいかがですか。

安達氏 最終的な価格はまだ分かりませんが、ソフトバンクさんも何かしらお得な手段を用意されていると思うので、ぜひ使っていただきたいですね。

大沼氏 本当は(価格も出せる)発売直前に発表した方がよかったのかもしれませんが、今回はグローバルでの温度感があるうちに早く日本でもお披露目したいという部分を優先しました。日本のお客さまには、ぜひお届けしたいと考えています。

―― 発表会という意味だと、“ライカ感”を出すのがすごくうまかったと思います。

大沼氏 何が搭載されているかではなく、それによって何が撮れるのか。そこにフォーカスしました。お客さまがそれを買うことでどうなるのかという部分をアピールする活動は、引き続き続けていきたいと思います。

安達氏 グローバルの発表会は長かった(笑)。日本では、そこを凝縮してお届けするということで構成を調整して、意図的に海外での作例紹介は絞り込みました。海外の街角を撮ったようなものだと、「そりゃキレイだろ」となってしまうからです。

―― 確かに。別にライカコラボじゃなくても、キレイな写真になってしまいそうです。

安達氏 説得感がないというか、腹落ちしづらいのではないでしょうか。保井さん(発表会にゲストで登壇したフォトグラファーの保井崇志氏)にもお願いして、顔が見える方がちゃんと撮ったことが見えるようにしました。そこで紹介したのも、「Xiaomi U30 Photo Contest」で受賞した大学生の方の写真です。写真の勉強をしているが、写真をなりわいにしていない方が撮った作品です(ユーザーにとってリアリティーがあるという意味合い)。

 まだ日時までは具体的になっていませんが、ライカと共同でワークショップもやっていく予定です(※取材後、12月7日に表参道で開催することが決定)。ライカさんのサポートもいただきつつ、日本でのコラボレーションをよりリアルにしていきます。撮ったらちゃんと発信できる場も用意し、地に足のついた活動を今後も継続していきます。

●今回も価格は頑張った MVNOへの販路拡大はこれから?

―― 冒頭で大沼さんがサラッとお値段据え置きとおっしゃっていましたが、円安傾向を考えるとなかなかできないですよね。そこはXiaomi Japanとして頑張ったところでしょうか。むしろ、大丈夫かどうかちょっと心配になってしまいますが。

大沼氏 はい。そこは頑張っています。当然、赤字でつぶれてしまったら意味がないので、そこのご心配は不要です(笑)。本社も含め、日本は大きな市場という認識で一致しています。

―― 今年は、Proとノーマルモデルの機能差が大きくなったようにも見えます。これで売れ行きなどは変わりそうでしょうか。

安達氏 確かに去年はセンサーなどのデバイスやデザインが同じでしたが、今年は差分が出ています。メインセンサーはProの方が大きいですし、ズームの倍率もProとノーマルモデルでは異なっています。海外で、あそこまで同じだと売り分けづらいというフィードバックがあったのかもしれませんが、今年はカラーや素材感でも差をつけています。

―― ちなみに、今回もノーマルモデルはKDDI、Proはソフトバンクです。結果として今年も前回を踏襲したということでしょうか。

大沼氏 昨年から1年がたち、話し合いの中で今回もそうしていこうという流れになりました。もちろん、未来永劫(えいごう)そうというわけではなく、来年(2025年)になったら違ったことを言っているかもしれません。事業者側がユーザー層や価格とのバランスを考えた上での決定になるので、こちらから詳しいことはいえませんが、いろいろな話し合いはしています。その代わりというわけではありませんが、auからは回線とひも付かない形でXiaomi 14 Ultraを出していただいています。

―― Xiaomi 14 Proのオープンマーケット版は、MVNOでも販売していくのでしょうか。

大沼氏 それはこれから頑張らなければいけないところです。現時点では販路は未定です。グローバルで発表してからすぐにお披露目したので、交渉はこれからになります(※11月19日にIIJがXiaomi 14T Proの取り扱いを発表した)。

●家電製品も積極投入 100型のチューナーレステレビも「結構な売れ行き」

―― 今回も、スマホと一緒に家電やライフスタイル製品を発表しました。このスタイルが定番になりつつありますね。

大沼氏 この部分はグローバルの方が先に進んでいて、生活家電からIoT製品までそろっています。日本においても、そういったことはやっていきたい。ただし、何でもかんでもすぐに持ってくるというわけにはいきません。法令での規定もあるので、1つ1つ間違えないよう、慎重にやっています。

―― ラインアップが増えると、ショップも必要になりそうです。

大沼氏 そういったところも拡大しなければなりません。ポップアップストアでの経験や課題を精査しながらですね。中国、香港、台湾ではしっかりショップが立ち上がっていますが、日本も同じようにしていかなければなりません。流通や価格の考え方は異なりますが、目指しているのはそういったところです。

安達氏 通常のスマホメーカーだと年2回ぐらい大きなローンチがあります。一方で、昨年ぐらいから、家電製品だったり、スマホとは関係のない商品を出したりしたことで、ユーザーやメディアとの接点が増えたと思っています。確かにスマホの新製品は大きな区切りにはなりますが、そういった製品で常にXiaomiのニュースやブランドに触れていただければ、面白そうと思ってご購入いただけるものも増えてきます。日本で少しずつ認知が広がり、受け入れられてくれればと考えています。

―― スマホやタブレット以外だと、どんな製品が売れ筋ですか。

安達氏 結構ありますが、Buds(ワイヤレスイヤフォン)は実際に伸びています。安いのもそうですし、1万円以下でノイズキャンセリングが付いている「Redmi Buds 5 Pro」はコスパがいいと好評でした。他にも、スマートバンドは定番商品です。スマートウォッチも、3980円で出した「Redmi Watch 5 Active」は動きがいいですね。安いものだとノーブランドに近いものも多いですが、Xiaomiの製品はアプリもご用意して、サポートもしっかりしているブランドのお手頃な製品として評判になっています。

―― スマホと連携しないような製品だといかがですか。

安達氏 チューナーレステレビも、結構な数が出ました。100型は誰が買うんだという声もありましたが、あれも結構な売れ行きです。

大沼氏 それが今後も続くのか、点としての現象なのかは分かりませんが、正直数には私も驚きました。広い家って結構あるんだなと(笑)。商品や品ぞろえが豊富にご提供できる力強さを見せたかったというのが投入の狙いです。

●取材を終えて:“もう1社のライカスマホ”がある日本市場でどう存在感を示すか

 シャープとのバッティングもあり、これまで日本市場でライカブランドを冠することができなかったXiaomiだが、Xiaomi 14 Ultra投入時にその問題も解決された。結果として、コストパフォーマンスに優れたXiaomi 14T/14T Proの魅力も大きく高まることになった。これまでは充電速度にフォーカスした訴求をしていたが、2024年はいよいよその本領を発揮できるようになったといえる。反響を見ると、大沼氏がコメントしていたように、Xiaomi 14 Ultraの余韻がある中での発表も正解だったことが分かる。

 日本市場で順調に存在感を高めているXiaomiだが、取り扱いキャリアの拡大は今後の課題といえるかもしれない。規模を追い求めるのであれば、中国ブランドの製品発売に二の足を踏んでいるように見えるドコモの“攻略”も必須になる。また、本インタビュー後にシャープもフラグシップモデルの「AQUOS R9 pro」を発表し、Xiaomi 14 Ultraに真っ向から対抗してきた。“もう1社のライカスマホ”がある日本市場では、他国以上にユーザーへのアピールも必要になりそうだ。

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