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耳をふさがないイヤフォン、NTT子会社「nwm」も5000円以下で挑戦 密閉型のデメリット解消を目指す

ITmedia Mobile 2024年11月20日 21時50分

 NTT子会社で音響関連事業を行うNTTソノリティは11月20日に、オープンイヤータイプのイヤフォンとして、スマートフォンなどとのBluetooth接続が可能な「nwm DOTS(ヌーム ドッツ)」、有線接続タイプの「nwm WIRED(ヌーム ワイヤード)」を発表した。公式ストア、直営店、Amazon、楽天市場、家電量販店で同日から順次販売する。市場想定価格はnwm DOTSが2万4200円(税込み、以下同)で、nwm WIREDが4950円となっている。

 nwmは没入ではなく“共存(Co-being)”をコンセプトとするNTTグループ初の音響ブランド。オープンイヤー型ながらも音漏れを抑制する技術を活用し、耳をふさがずに音楽を視聴したり、オンライン会議で相手の声を聴いたりできるのが大きな売りだ。2モデルの特徴や市場に投入する狙いは何か。NTTソノリティの坂井博社長と、クリエイティブディレクターの竹内慎太郎氏が語った。

●nwm DOTSとnwm WIREDの違いは

 nwm DOTSはある音波(正相)に対し、180度位相を反転させた波形(逆位相)を重ねることで、音が消える原理を応用した「パーソナライズドサウンドゾーン(PSZ)」技術に加え、音が2つのマイクに到達する時間差から音響空間を認識して話者を特定するビームフォーミング、雑音を除去して音声だけを抽出するスペクトルフィルターを応用した「Magic Focus Voice」という技術を搭載したイヤフォンだ。

 PSZにより耳元に音を閉じ込めて音漏れを最小限に抑え、Magic Focus Voiceにより雑音が多い環境でも、自分の声をクリアに音を仕分け、聞く人のストレスを軽減するようなイメージだ。PSZとMagic Focus Voiceという技術をダブル搭載したイヤフォンタイプの製品は今回が初めてとなる。

 カラーはストーンホワイト、チャコールブラック、マスタードイエロー、バーガンディレッド、モスグリーンの5色から選べる。nwm DOTSというネーミングはカラーだけでなく、「点と点がつながり、人々が共存していけるというようなメッセージを込めている」(竹内氏)そうだ。

 同社がnwm DOTSの開発時に最も追求したのは「音質と音漏れ抑制の向上」(竹内氏)だ。「スピーカーのサイズそのものは旧モデル(nwm MBE001)と同じ12mm径だが、新規設計のドライバーにより、特に低中域の厚みが増し、音質が向上しつつも、PSZにより音漏れの抑制性能を保持した」(竹内氏)という。

 連続再生時間(音楽再生時)はイヤフォン本体のみで最大8時間、充電ケースを併用すれば最大で32時間となっている。充電ケースはUSB Type-Cケーブルで充電し、イヤフォンは充電ケースにしまうだけで充電できる。イヤフォンを充電ケースに収納し、5分充電すれば約1時間、音楽を再生できる。

 重量は「片耳8gと旧モデル比で12%軽量化」(竹内氏)しており、装着感の向上を目指し、「耳の後ろにかけられるシリコンフックと、耳の厚みや形状に合わせて装着位置を固定できるテールチップを新たに開発した」という。テールチップはS/M/Lの3サイズがある。紛失した場合の単品販売については検討中とのことだ。

 nwm WIREDは「バッテリー切れや遅延の心配がなく、PCなどの3.5mmイヤフォンジャックに挿すだけで、すぐに音声を聞き取れる」(竹内氏)有線イヤフォンで、「全ての人が手に取りやすいよう、コストパフォーマンスを追求したエントリーモデル」でもある。

 耳元に音を閉じ込めて音漏れを最小限に抑えるPSZ技術のみの搭載とはなるが、「旧モデル(nwm MWE001)と比べて音漏れしづらくなり、両耳約7.2gと20%の軽量化を果たした」(竹内氏)という。

 イヤフォンのカラーは「老若男女を問わず持てるよう、ベーシックなパステルカラーを採用」し、ダークブラウン、ホワイトベージュ、ネイビーブルー、ミントグリーン、コーラルピンクの5色を用意した。「書類とじ器を一切使用しないパッケージはあえてガジェットらしくない見た目とし、ギフトで送りたくなるような製品に仕上げた」としている。

●「耳をふさぐイヤフォン」が生む弊害とは? NTTソノリティのnwm、2025年春には「ネックバンド型の防水イヤフォン」

 イヤフォンやヘッドフォンと聞いて、音楽を聴いたり、動画を視聴したり……といったシーンを想起する人は多いのではないだろうか? ところが、コロナ禍にオンライン会議が普及し、家事や仕事の合間に会議にオンライン会議に参加する、いわゆる“ながら需要”が広まり、イヤフォンやヘッドフォンの利用場面は多様化した。

 そんな中、ソニーが耳をふさがないイヤフォンとして、ドーナツのように穴のある「LinkBuds(リンクバッズ)」を2022年2月25日に発売。JVCケンウッドも同年6月にVictor(ビクター)ブランドからnearphonesシリーズ第1弾として、イヤーフックを耳にかけて使う「HA‐NP35T」を発売。オープンイヤー型はBoseやファーウェイも手を出したが、どちらもイヤーカフ型で勝負している。

 NTTソノリティのnwm新製品も、いわば耳をふさがないイヤフォンの波に乗ったような製品といえるが、イヤーカフ型でもドーナツ型でもなく、イヤーフック型に近い。NTTソノリティは2024年1月にnwmの製品と、スマートフォン/タブレット向けのアプリ「BONX WORK」を組み合わせた、次世代トランシーバーサービスを発表し、法人に売り込んでいた他、7月18日には耳をふさがないヘッドフォン「nwm ONE(ヌーム ワン)」を発売した。

 今回発売のnwm DOTSとnwm WIREDは個人の利用場面にフォーカス。NTTソノリティは法人用途での利用シーンやサービスの組み込みを一切示さなかった。特にイヤフォンのワイヤレス化にあえて逆行し、税込みでも5000円を切るnwm WIREDを打ち出したところは興味深い。2モデルの市場への投入理由は何だろうか。

 坂井氏は「リモートワークや移動中にイヤフォン、ヘッドフォンの利用が増える一方で、新しい課題が見えてきた」と明かし、密閉型のイヤフォンにより「家庭やレストランなど、屋内外を問わず、コミュニケーションに弊害が出ている」と指摘する。

 NTTソノリティが10月、ヘッドフォンを利用する500人を対象に実施したイヤフォン/ヘッドフォンの課題に関する調査では全体のうちの約半数以上がイヤフォン/ヘッドフォンにより耳がふさがれて困った経験があると回答した。

 イヤフォンやヘッドフォンの着用時に周囲からの呼びかけに気付かなかった経験はあるか? という問いに対し、全体のうちの60.6%が「よくある」「たまにある」と回答。イヤフォンやヘッドフォンの着用により呼びかけた人に無視された経験はあるか? という問いには50.4%が「よくある」「たまにある」と回答。

 イヤフォンやヘッドフォンの着用により、歩行中に車両の接近やクラクションに気付かず危険を感じた経験はあるか? という問には30.8%が「よくある」「たまにある」と回答した。

 ヤフー・データソリューション「DS.INSIGHT」によると、オープンイヤーの検索数は「2020年から徐々に高まり、2024年は飛躍的に伸びた」(坂井氏)そうだ。2019年と2024年を比較すると、「検索数は約7倍も増加」(坂井氏)している。

 BCNのランキングデータサービスのヘッドセットカテゴリーをもとにNTTソノリティが集計したデータによると、オープンイヤー型のワイヤレスイヤフォンは2022年から2023年にかけて+10%成長、2024年にかけては+50%成長する見込みだ。

 IDCの調査によると、中国で2024年上半期に出荷されたオープンイヤー製品の台数は2023年上半期と比較して303%増加した。なお、タイプ別に見ると、耳に掛けるタイプが前年比で1015%、耳を挟むタイプが522%増加した。

 坂井氏はこれらのデータを踏まえ、「オープンイヤーの数字は非オープンイヤーの数字と比較すると、まだ10分の1程度にとどまるが、今後、個々のユーザーのライフスタイルやライフステージに合わせたさまざまな機能や価格帯の製品が拡充することで、大きな市場拡大が期待できる」とした。さらに、密閉型のイヤフォンが生む弊害の解決に向け、nwmでオープンイヤーの間口を広げたいとの考えを示す。

 NTTソノリティは今後、成長が見込まれるオープンイヤー型のワイヤレスイヤフォンに「さらなる投資を行う」(坂井氏)考えで、2025年春には雨や蒸れを気にせずに使用できる防水性能を持つ、ネックバンドかつオープンイヤータイプのワイヤレスイヤフォンを発売する予定だ。

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