とうとう、iOS18.1の「写真」アプリに“あの機能”が付いた。世間的には「消しゴムマジック」と言った方が通りが良さそうなアレである(新しい機能ってキャッチーな名前をつけたもの勝ちなところあるよね)。
AIを利用し、写真から指定したものを消してしまう機能だ。写真は2次元なので、不要なものを指定してそのまま消すと単にまっ白くヌケてしまう(画を描いて消しゴムで消したら、その下にある背景が出てくるわけがない)。そうならないように、周辺の情報からそこに写っていただろうものを作り出していい感じに仕上げる技だ。
Appleがその機能につけた名前は「クリーンアップ」。不要なものを取り除いてきれいにするというニュアンスだ。
単に消すのみならず、「これ、多くの人が待っていたんじゃね?」という機能もさりげなく搭載しているので、昔撮った写真をひっぱりだしてあれこれいじってみたい。
●クリーンアップは「Apple Intelligence」対応モデルで使える
クリーンアップはiOS18.1の写真アプリで搭載された新機能だが、実は使える機種が限られている。簡単にいえばApple Intelligence対応モデルでのみ使える。iPhoneなら「iPhone 15 Pro/Pro Max」と「iPhone 16」シリーズだ。
現在、Apple Intelligenceは米国英語のみでβ提供中だが、クリーンアップは対応機種なら言語を問わず使える。ある意味で、一足先に先行搭載されたということかも。
では使ってみたい。
ベーシックなところでこれから。背景に他の観光客が写り込んでしまったというシチュエーションだ。
写真アプリから編集を実行すると、メニューの一番右に「クリーンアップ」という項目が増えている。
それを実行すると、自動的に「消したいであろう被写体」を見つけ、それを虹色でほわんと表示してくれるの。ここの演出はAppleらしい。
分かりやすいように拡大してみる。
ここで順番にタップしてやると、色の付いた部分を消去して、代わりにそれっぽい背景を作ってくれるのである。
でもよく見ると、まだ誰かの足先が残っている。さすがにこれの自動検出はできなかったようだが、そんなときは手動で指で大まかになぞってやると、消せる。ざっくり指定してもちゃんとエッジを認識してくれるし、その精度はかなり高い。
そして完成したのがこちらだ。
ユニークなのは、ちゃんとメインの被写体とそうじゃない人たちを判別してくれるところ。
例えばこれ。「ジュン・マキ堂」というチンドンのユニットの写真なのだが、他のお客さんが写り込んでいる。でも、クリーンアップをかけると、チンドンの6人組以外をけすべきものと判断してくれるのだ。
えらいもんである。
●顔にモザイクをかけてくれる!
さらに注目したいのは「安全フィルタ」。ざっくりいうと「顔にモザイク」機能ですな。
人を丸ごと消したいわけじゃない、ただSNSにアップするとき、自分以外の顔だけモザイクをかけて分からないようにしたいってケースは多いよね。
友人らと一緒に撮ったけど、彼ら彼女らの顔は出したくないとか。
例えば、昔撮ったこんな写真がある。一緒に写っているのは、2017年にモデルをしてくれていた田中さん。懐かしいですな。
で、自分の顔にモザイクかけたいなと顔だけをこうしてざっくり指定してやると。
「安全フィルタが適用されています」と表示されて、顔にモザイクがかかるのだ。
あ、田中さんの顔にモザイクかけた方がより怪しくてよかったか。まあいいや。
例えば、集合写真なんかで顔が小さいときも、拡大してから顔を指定してやればよい。
実はこれ、とある美術展の出演者5人で撮った記念写真。自分以外のそれぞれにモザイクをかけてみた。
SNSなどを見ていると、自分以外の顔をぼかしたりモザイクをかけたりしている写真をよく見るじゃないですか。あれができるのである。
以前から、今の時代、不要な人を消す機能より、偶然写り込んでしまった人の顔だけにモザイクをかける機能の方が求められているんじゃないか、と思っていたけど、iOSがこんな形で実装するとは、ですよ。
●人以外も消せます
人以外はどうか。
例えば料理。お店などでぱっと料理を撮ったあとで、奥に余計なもの(水の入ったコップとか)が写っていた……ってのはよくある。
これも「クリーンアップ」にかけてみると、自動的にトレイの後ろにあるそれらが邪魔者として認識されたのだ。
だから苦も無く削除。実に簡単。
さらに、歩道橋の上から撮ったポートレートを「クリーンアップ」にかけてみると、背景に写っている自動車が何台か消去の対象になった。
クルマが3台だけ光っているけど、SF映画なんかで宇宙人に消される、あるいは転送される直前の画って感じでいい。
さらに面白かったのがホース。
猫が3匹転がっていたので撮った写真、何げなく「クリーンアップ」にかけてみたら、猫の横に置かれていたホースが消去対象に。
どれも手動で「これを消してね」って指でなぞってやればいい話ではあるんだが、人や電線のみならず、その都度不要そうなものを自動的に判断してくれるってのがAIっぽい。
●「Shimokitazawa Nobody」をやってみる
2000年頃、「Tokyo Nobody」という写真集が話題になった(わたしも持っている)。早朝などを使い、人がまったく写ってない東京の姿を描いた写真集だ。
では、普通に撮った下北沢駅前の写真にクリーンアップを使って、誰もいない下北沢駅を描けるか――やってみよう。
自動での被写体認識プラス、手動で細かいところをチェックして人をマメに消してみた結果が、これだ。
部分拡大してみると、明らかにおかしなところは多々ある……のだが、何となく常に人が多い下北沢の駅前が無人になったって雰囲気は出る。
まあ、ちょっと意地悪といっていいシチュエーションだったしな。
●顔モザイク機能が独自性かな
なお、クリーンアップであまりに大きなものを消そうとすると、ダメ出しされる。
と、あれこれ遊んでみたのだが、各社共にGoogleの「消しゴムマジック」を採用したり、独自のAIで同様の機能を実装したり、iOSの世界にも既に「TouchRetouch」などのアプリがある。
その中でどう独自性を出してくるかなと思ったが、そこはオブジェクトをセレクトしたときの演出や人物や電線に限らず、自動的に撮った人が不要と判断しそうなオブジェクトをセレクトしてくれるなどiOSらしさはある。
精度については、まあもちろん完璧ではないけど、これは今のところどこもそうだからことさらどうとはいえず、他社の同等の機能に比べて特に優秀とか不出来ってことはなさそうだが、機会があったら「消しゴム性能比較」とかやってみても面白いかも。ただ、まあ背景によって自然な出来になったり不自然になったりするのは今のところしょうがない。
注目は、顔だけをセレクトすると自動的にモザイクをかけてくれる機能かな。
この際、AIを使って背景にいる人の顔に自動的にモザイクをかける(あるいはぼかす)、車のナンバープレートを見つけたらモザイクをかける(あるいはぼかす)機能が標準でついていると喜ばれると思うのだけど、どう?