オウガ・ジャパン(OPPO)は11月29日、ハイエンドスマートフォン「OPPO Find X8」を発表した。約3年ぶりとなるFindシリーズ最新作は、ハッセルブラッドとの共同開発カメラやAI機能を搭載し、税込み13万9800円で12月12日に発売する。グループインタビューにて、オウガ・ジャパン専務取締役の河野謙三氏を中心に、営業推進部プロダクトマネージャーの中川裕也氏、プロダクト部部長代理の丹下紘彰氏に話を聞いた。
●3年の空白を経て、なぜ今なのか
「お客さまの声がこの3年間途切れることがなかったというのが非常に大きい」と河野専務は語る。SNSやコミュニティーでは次のFindシリーズを待望する声が絶えなかったという。
一方で、これまでFindシリーズを投入できなかった背景として、X3以降は日本市場での価値訴求が弱いという判断があったと説明。今回の投入については、OPPOメーカーとしての今後3年、5年の方向性が定まったことを理由として挙げた。
今回の日本展開では、上位モデルのFind X8 Proではなく、スタンダードモデルのFind X8を選択した。この理由について河野専務は「薄さを非常に重視している端末」と説明。何でもかんでも機能を詰め込むのではなく、薄型軽量な筐体デザインを重視したモデルとして、日本市場により適していると判断したという。
プロダクトマネージャーの中川氏は、幅広い層に使ってほしいとしながらも、「メインターゲットはガジェット好きで最先端のものを使いたい人、ハッセルブラッドなどの写真好き」と説明する。
●キャリア販売なしでハイエンド機を投入する理由
Find X8は、キャリアでの取り扱いがないSIMフリー専売モデルだ。KDDIがアクセサリーブランド「au +1 collection」から発売はするが、キャリアがカスタマイズしたモデルとしては販売しない。ハイエンド機をSIMフリーのみで展開することについて河野専務は「このタイミングでは逆だと思っています」と話す。
関係者が増えれば増えるほど日本での要求が上がり、望む製品が出しづらくなるという。そのため、OPPOがメーカーとしての方向性を一番強く押し出したい製品であったことから、あえてしがらみのないSIMフリー市場への投入を選んだと説明した。
Find X8は中国での発表(10月24日)から約1カ月後の11月21日にグローバル展開が発表され、そのわずか1週間後となる11月29日に日本での展開が発表された。「OPPO Japanの歴史の中で初めて。1週間のローンチは非常にきつかった」と河野専務は振り返る。
通常、グローバルモデルの日本展開では各種認証取得や日本市場向けのカスタマイズに時間を要するが、今回は日本独自の仕様を最小限に抑えることでグローバルとのリリースサイクルを合わせる戦略をとった形だ。その代わり、ドコモの5Gネットワークで使用されているBand n79には非対応となるなど、一部の日本向け対応は見送られている。
●おサイフケータイ非対応の理由
今回のFind X8では、同時発表された低価格帯の「OPPO A3 5G」と異なりFeliCa(おサイフケータイ)には対応していない。この点について河野専務は「プロダクトアウトとマーケットインのいいところ取りをしている。常にどの製品に何を入れるか、どこまで対応するかを検討している」と説明する。
「今回はX8がOPPOのAIフォンとしてグローバルで大々的にアピールする製品。その中でまずはリリース時期を優先した」として、機能の取捨選択があったことを示唆した。
Find X8は防水性能については、スマートフォンとしては珍しいIPX9の認証を取得。80度の熱水噴流試験にも耐える高い防水性を実現している。7.9mmという薄型のボディーを実現していることを考えると、基板レベルでのカスタマイズは難しかったものと推察される。
●ハッセルブラッドとの協業で高めた光学系
カメラシステムはハッセルブラッドと共同開発した3つの5000万画素カメラを搭載する。
特に望遠カメラには世界初となるW型プリズム構造のレンズを採用した。一般的な望遠カメラでは薄型化と高画質の両立が難しかったが、このW型構造により、本体の薄さを保ちながら大型センサーの搭載を実現。一般的なハイエンドスマホの3倍望遠カメラと比べて約2.5倍の大きさとなる1/1.95インチセンサーを採用している。
ハッセルブラッドとの協業は「カメラフォンを打ち出してきたメーカーとして非常に大切なところです」と河野専務。自社のカラーサイエンスや色味を180度曲げてまで著名なカメラブランドと協業することはないとしつつ、ハッセルブラッドについては色表現の忠実度を重視する点でOPPOの方向性と一致したという。1969年に世界で初めて月面からの写真撮影に成功するなど、写真史に大きな足跡を残してきたハッセルブラッドは、特に色彩の忠実な再現性に定評がある。
この協業では、ハッセルブラッドの中判カメラX2Dをモチーフにした専用の撮影モードを実装。ポートレートモードではハッセルブラッドのレンズを再現した画角を実現し、被写体と背景の境界をより正確に表現するボケ効果を実現している。さらに、ハッセルブラッドマスターモードではオートモードとプロモードの2種類を用意。オートモードではX2Dのトーンや色彩をそのまま再現し、プロモードではそれをベースに撮影者自身のスタイルでアレンジすることが可能だ。
●MediaTek製チップのポテンシャルを引き出す
Find X8は日本初となるMediaTek Dimensity 9400を採用した。プロセッサの選択について河野専務は「その時点で最適なものを選ぶという方針」と説明する。
同社独自のチップ性能最適化技術「トリニティエンジン」とMediaTekとの技術協力により、チップ性能をさらに引き出しながらエネルギー消費を抑制することに成功。その結果、ゲームプレイ時の消費電力を8.2%抑制し、動画視聴では最大4.5%の省電力を実現した。ゲーム体験においても、プレイ時間が経過しても性能が低下しにくい安定性を特徴としている。
●充電機能の拡充とマグネット式対応
Find X8は80WのSuperVOOC急速充電に対応し、5630mAhの大容量バッテリーを搭載する。
急速ワイヤレス式充電については、本体自体には磁石を内蔵していないため、専用のマグネット対応ケースを装着することで利用が可能となる。このケースを使用することで最大50Wのマグネット式ワイヤレス充電に対応する。プロダクト部の丹下氏は「薄さを重視したデザインのため本体への内蔵は見送った」と説明する。
このマグネット式充電への対応に合わせ、同社初となるマグネット式アクセサリーの展開も開始。専用の充電器「OPPO Air VOOC 50W」や、ミラーとディスクの2種類のスマホリングなどを用意する。今後はアクセサリーのラインアップをさらに充実させる意向だ。
●AI機能は一部日本語未対応でいち早くリリース
Find X8では複数のAI機能を搭載。写真の不要な被写体を自動で削除する「AI消しゴム」は複数人の一括削除に対応し、写真編集では反射除去や画像の高解像度化なども可能だ。また、画面上のテキストに対して要約や翻訳を行うAIツールボックス、複数の文章をAIが整理してまとめる文書アシスタントなども搭載している。
ただし、これらAI機能の一部は発売時点では日本語に対応していない。AIツールボックスや文書アシスタントといったライティング関連の機能は2024年3月以降のアップデートで順次対応予定だという。
●ソフトウェアサポートは6年間実施
ソフトウェアサポートについては、OSバージョンアップを4回、セキュリティアップデートを6年間保証する。スマートフォンメーカー各社がアップデート期間の延長を進めるなか、特にセキュリティアップデートの6年間という期間は比較的長めの設定だ。「フラグシップモデルということで4回、6年。他社の回数も確認しながら、Googleとの協議も含めて判断した」と河野専務は説明する。ただしこの保証期間はFindシリーズとしてのもので、他シリーズについては別途検討するとした。
●日本市場での勝負の1台
3年の空白を経て投入されたFind X8は、グローバルとの発売サイクルを合わせることを優先し、一部の日本向けカスタマイズは見送られた。その一方で、カメラ性能やAI機能の充実、長期的なソフトウェアサポートなど、グローバルモデルならではの特徴を全面に押し出している。SIMフリー市場という限られた土俵ではあるが、ハイエンド市場での存在感を示そうというOPPOの意気込みが感じられる製品となった。