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物理キーボード搭載のiPhoneケース「Clicks」発売 実機を試して驚いた“完成度の高さ”

ITmedia Mobile 2024年12月3日 21時31分

 英Clicks Technologyは12月3日、iPhoneに物理キーボードを搭載できるケース「Clicks」の日本展開を発表した。ティーガイアと提携し、同社初となるAmazonストア内の公式ストアをオープンした。

 まずはiPhone 16 Pro/16 Pro Max向けモデルを展開する。iPhone 16 Pro向けは2万3870円、16 Pro Max向けは2万7280円(いずれも税込み)で販売する。iPhone 16とiPhone 16 Plus向けは12月下旬の発売を予定している。

●BlackBerryの DNA を受け継ぐドリームチーム

 Clicks Technologyは、Android向けのキーボード付きスマートフォンを手掛けたF(x) Technologyの創業者であるAdrian Li Mow Ching氏がCEOを務める。

 BlackBerryでグローバルプロダクトマーケティングを担当していたJeff Gadway氏がCMOを務め、「CrackBerry Kevin」の愛称で知られるKevin Michaluk氏も参画するなど、物理キーボードへの造詣が深いメンバーで構成されている。

 「モダンなスマートフォンは素晴らしい機能を持っていますが、ボタンがなくなったことで何かを失ったのではないか」とGadway氏。PCやタブレットでは当たり前に使われているキーボードを、iPhoneでも使えるようにしたいという思いから開発をスタートした。

●100回の改良を重ねた“完璧な”キーボード

 Clicksの特徴は、ソフトウェアキーボードが画面の約50%を占めるという課題を解決できる点だ。USB Type-C接続のため、バッテリーやBluetoothは不要。ケースに装着するだけで即座に利用できる。

 キーボードは4段構成のQWERTY配列を採用。数字は専用キーを省略し、左下の「123」キーと最上段のQWERTYキーの同時押しで入力する仕組みだ。日本語入力にも対応しており、音引き(ー)は数字キーとAキーの組み合わせで入力可能。右下には音声入力キーも配置されている。

 プロトタイプから製品化まで100回以上の改良を重ねたという入念な作り込みも特徴だ。キーの傾斜角度や押し心地、フィードバックなど、2024年における“完璧なタイピング体験”を目指して開発された。各iPhoneモデルに最適化された精密な設計も特徴で、iPhone 16とiPhone 16 Proでは別製品となっている。

●2種類のショートカット機能

 Clicksのショートカット機能は2つのタイプが用意されている。1つは、CommandキーやOptionキーを使用するiOS標準のキーボードショートカットだ。例えば「Command + H」でホーム画面に戻るなど、iPadやMacで使い慣れたショートカットがiPhoneでも使えるようになる。

 もう1つが、Clicksキーと組み合わせて使用するClicks独自のショートカット機能だ。これはiOSの「ショートカット」アプリと連携しており、ユーザーが自由にアクションを割り当てることができる。例えば、特定の相手へのメッセージ作成画面を開く、スマートホームデバイスを操作する、特定のアプリを起動するなど、さまざまなアクションを設定可能だ。

 発表会のデモでは、Clicksキーと特定のキーの組み合わせでスマートライトの点灯/消灯を操作したり、モーニングプレイリストを再生したりするデモンストレーションが行われた。「アクションボタンが1つしかないiPhoneに、カスタマイズ可能なアクションボタンを追加できる」というのが開発チームの狙いだという。

●日本は世界のトップ5に入る重要な市場

 2024年1月の発売以来、わずか10カ月で世界140カ国に展開し、累計販売台数は8万台を突破。興味深いことに、ユーザーの約40%が物理キーボードを初めて使用するという。

 これまでは日本市場向けは個人輸入に頼っていたものの、「日本市場は世界のトップ5に入る重要な市場です」とCEOのLi Mow Ching氏は語る。「日本のお客さまは細部まで製品を見てくださる。そんな日本の方々に、私たちの考えるデザインと機能をお届けできることを誇りに思います」

 日本ではAmazon.co.jpでiPhone 16 Pro/16 Pro Max向けモデルを先行して販売。他のiPhoneモデル向けは本国サイトでの購入となる。2025年に向けた新機能のロードマップも用意されており、独自の日本語入力ソフトウェアの開発も検討されているという。

●実機を試してみた ケースとしての完成度が高い

 発表会では実機に触れる機会があった。まず目を引くのは、ケースとしての完成度の高さだ。各iPhoneモデルに合わせて精密に設計されており、装着時のガタつきは一切ない。カラーバリエーションは3色用意されているが、手に取ったSurf(サーフ)カラーは落ち着いたパステルブルーで、見た目以上に高級感がある。

 最大の課題は重量バランスだろう。物理キーボードを下部に配置した結果、特に片手での入力時に不安定さを感じる。両手持ちであれば問題ないが、立ったままでの操作などでは少し気を使う場面もありそうだ。

 一方で、画面全体が見えることの良さは短い試用でも実感できた。従来のソフトウェアキーボードでは画面の半分を占めていた入力エリアが完全に解放され、長文作成時でもコンテンツを見ながらの入力が快適になりそうだ。

 ソフトウェアキーボードの出し入れは専用のキーが割り当てられており、素早く出し入れできる。例えば日本語はフリック入力で使い、英語の時はClicksのキーを使うという使い方も柔軟にできる。

●キーボードの使い勝手はどうか 小型化実現のための工夫も

 キーボードの打鍵感は、かつてのBlackBerryを知るユーザーには懐かしさを感じさせるかもしれない。カチカチとしっかりとしたフィードバックがあり、目視せずとも入力できる確かな手応えがある。キートップは若干の凹面加工が施されており、指を置いたときの安定感も良好だ。

 iPhone 16向けの小型モデルであっても、各キーは明確に独立している。キーピッチは物理的な制約から確かに狭めだが、キーの形状や配置が工夫されており、実際の入力では予想以上に押し間違えが少ない。特に親指でのタイピングを意識した設計になっているようで、慣れれば素早い入力も可能だろう。

 入力方式で特徴的なのは、数字入力に専用キーを設けず、左下の「123キー」との同時押しで対応している点だ。確かに手間ではあるが、これによってキーボードのコンパクト化を実現している。

 日本語入力では頻繁に使用する「ー(音引き)」や「、(読点)」も同様に123キーとの同時押しでの入力となる。かな入力にも対応しており、iPhone標準の日本語キーボードで使い慣れた入力方式を踏襲できる点は好印象だ。

 USB Type-C接続は給電のパススルーに対応しているが、他の周辺機器は接続できない。一方で、iPhone 16向けモデルではMagSafeに対応しており、充電以外の選択肢も確保されている。

●高い完成度と割り切りの選択

 Clicksの最大の特徴は、その仕上げのよさとiPhoneとの一体感だ。ケースに装着したときの精度は目を見張るものがあり、サードパーティー製品とは思えないほどの完成度の高さを感じさせる。

 しかし、この装着感の高さは、ある種の割り切りの上に成り立っている。完璧な装着感を実現するため、わずかな筐体の違いでも別製品として設計されている。iPhone 16とiPhone 16 Proですら別のケースが必要なほどで、この徹底ぶりは汎用(はんよう)性との兼ね合いでもろ刃の剣といえる。本体の買い替え時には新しいClicksも必要になるため、決して安くない買い物となるだろう。

 とはいえ、物理キーボードを求めるユーザーにとって、これはのどから手が出るほど欲しい製品かもしれない。CMOのGadway氏は「1000人に1人に売れればビジネスとして成り立つ」と説明するように、確かにニッチな製品だ。しかし、刺さるユーザーには間違いなく刺さる製品であるだけに、実機を試せる場所の拡大が望まれる。

 現時点では日本でのデモ機設置場所は未定だが、ティーガイアとの提携により、今後実機展示の機会が増えることに期待したい。

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