昔の特急券などは窓口や旅行代理店に行かないと買えなかったが、今やネット予約も加わり、買いやすい環境が整備された。首都圏の鉄道事業者を対象に、旅行代理店以外での特急券などの購入方法をまとめてみた。
●JR東日本:指定席、グリーン車、グランクラスを選べる
指定席券売機は多くの駅に設置され、新幹線や在来線特急(一部を除く)の特急券が購入できる。特に新幹線はJR他社管轄の東海道・山陽・九州・北海道新幹線、北陸新幹線上越妙高―敦賀間の指定券なども購入できる。基本的にみどりの窓口と同様、乗車日の1カ月前の10時から販売している。
市販の時刻表などで調べない客を想定しているのか、例えば新幹線の方面を選択した後は、新幹線の乗車駅、新幹線の降車駅、乗車日、乗車時間帯、利用人数も選択しなければならない。操作の手間がかかるものの、指定席、グリーン車、グランクラスとも、空いている席を選ぶことができる。また、指定席で空席が少ない場合、最も空いている車両が表示され、買いやすい環境を整えている。
乗車券については、新幹線特急券とセットで購入、後日別途購入の選択ができる。
支払いについては、現金の他、クレジットカード、Suicaの購入も可能。クレジットカードを所持していない人にとって、Suicaの残高(最大2万円までチャージ可)がしっかりあれば、それで支払えるのが心強い。
なお、2024年4月1日(月曜日)から、クレジットカードで購入したきっぷも払い戻しができるようになった。
えきねっとについては別稿の記事を御参照いただきたい。
●東武鉄道:「東武時刻表」を参考に眺望のいい席を選ぼう
特急券は乗車日1カ月前の9時から発売され、ほとんどの有人駅の券売機や、ホームの特急券売機で購入できる。乗車エリア、乗車駅、降車エリア、降車駅を選択すると、当該の特急列車が表示され、発車15分前までは座席の選択もできる。意外なことに、東武本線(伊勢崎線、日光線など)と線路がつながっていない東上線の駅(一部を除く)でも購入できる。
特急の多くは側窓がヨコナガ(長方形)で、眺望のいい席を選択したいところ。それを手助けするのが「東武時刻表」で、「特急列車座席番号案内図」のページに窓位置が表示されている(西武鉄道や小田急電鉄の時刻表も同様)。100系スペーシアの座席車を例に挙げると、下り列車は偶数席、上り列車は奇数席が眺望のよい席だ(注:1号車11番席は側窓が正方形)。さらに鉄道車両の中央は台車から遠い位置にあるので、乗り心地もよい。
なお、N100系スペーシア Xは1号車の一部席、6号車のコックピットスイートを除き、1窓1脚もしくは1ボックス(5号車の2人用ボックスシート)であること、JR東日本253系1000番台は座席と側窓の位置が合わないところがあるので、窓位置の案内を省略している。
特急ではないが、座席指定列車の〈THライナー〉〈TJライナー〉も上記の券売機で購入できる。ただし、臨時特急〈スカイツリートレイン〉、SL列車は券売機の購入対象外で、窓口で発売される。
支払いについては、現金と交通系ICカードで購入できる。
Webの東武ネット会員サービスでもクレジットカードを事前登録すれば、当該列車の発車3分前まで、座席の選択も含めた特急券の購入が可能。急用などで当該列車に間に合わない場合、発車前までログインすれば、乗車変更や払い戻しができる。2025年3月15日(土曜日)のダイヤ改正で、特急料金に繁忙期、閑散期の設定(注:伊勢崎線特急は閑散期の設定なし)を行い、SL及びDL座席指定料金を改定する。
●西武鉄道:西武線アプリからでも購入できる
特急券、〈拝島ライナー〉の座席指定券は乗車日1カ月前の7時から、〈S-TRAIN〉は10時から販売している。44駅の窓口の他、特急券売機などで購入できる。窓口、券売機とも交通系ICカードが使えるので便利ながら、座席の選択はできない。
WebのSmoozでは会員登録をすると、西武線アプリからでも購入できる他、座席の選択も可能だ。支払いもクレジットカード、SEIBU Smile POINT、PayPayから選択できる。会員登録なしでも購入ができるものの、使える機能は制限されている。
●小田急電鉄:Webによるチケットレスサービスは4種類
特急券は乗車日1カ月前の10時から販売している。一部の駅の窓口、多くの駅の券売機で購入できる。新宿駅はホーム上で特急券を購入する乗客が多く、需要が高い。
Webによるチケットレスサービスは4種類もある。1つ目のe-Romancecarは会員登録不要、決済はクレジットカードのみ、特典なしというシンプルなもの。
2つ目のロマンスカー@クラブは会員登録が必要になる。支払いは現金、クレジットカード、小田急ポイントのいずれかを選択でき、利用実績に応じて小田急ポイントが付与する特典がある。
3つ目はEMot(エモット)というアプリで、利用登録が必要になる。支払いはクレジットカード、PayPay、Alipay+から選択でき、特典はない。4つ目はEMotオンラインチケットで、基本的なことは先ほどのEMotと同じである。
いずれも座席が選択できる他、予約は発車時刻の45分前まで、購入は発車時刻の3分前まで可能。早朝4時から翌日2時まで操作できる。ただし、展望席の予約はできず、購入のみとなる。
今や展望席は70000形GSEのみという“貴重な存在”となっただけに、駅、Webの購入に関係なく、乗車日1カ月前の10時にはGETしておきたい。
●京成電鉄:チケットレスなら2回まで乗車変更が可能、豊富な支払い方法も特徴
京成電鉄では、特急の上をゆく“チャンピオン列車”として、〈スカイライナー〉〈モーニングライナー〉〈イブニングライナー〉などが全車指定席で運転され、いずれも乗車日の1カ月前より販売している。列車や駅にもよるが、券売機やスカイライナーカウンター、チケットレスサービス(会員登録が必要)などで取り扱っている。基本的に座席も選択できる他、券売機だと交通系ICカードの支払いも可能だ。
チケットレスサービスのメリットが2つあり、1つ目は乗車変更が2回まで可能なこと。駅などで購入した紙のライナー券は1回までである。ただし、当該列車が発車した後は乗車変更や払い戻しができない。
2つ目はクレジットカード、楽天ペイ、リクルートかんたん支払い、Yahoo! ウォレットで決済できること。鉄道で各種ID決済サービスが利用できるのは珍しいものと思われる。
現代では珍しい電話による予約(TEL:0570-081-160、9時から18時まで)も可能。乗車日の10日前まで予約した場合は予約日から8日以内、乗車日の2~9日前に予約した場合は乗車日の2日前までに、京成上野駅ライナー券発売窓口にて、9時から18時まで引き替える。
近年は回数券の廃止が相次いでいるが、京成電鉄は健在で〈スカイライナー〉用のライナー回数券を大人1万3000円で発売。11枚つづりで、発売日から3カ月間有効である。なお、子供用はない。
“定期券感覚”の1カ月券、モーニングPASS、イブニングPASSは、〈モーニングライナー〉〈イブニングライナー〉の指定された座席を利用するもので、毎月25日(3月乗車分の場合は2月23日)から月末まで、翌月乗車分を発売する。大人料金は京成上野―八千代台間8150円、京成上野―京成佐倉以遠間は1万円で、子供用はない。
京成電鉄のライナーで番外編といえる列車が2つある。
1つ目は、印旛日本医大7時00分発、京成上野行きの〈臨時ライナー〉(平日のみ運転)で、1・2号車のみ客扱いをする定員制列車と位置付けている。京成電鉄は「ライナー券」ではなく、「特急券」と称しており、車内で支払う。
2つ目は年末年始に京成上野―京成成田間で運転される臨時〈シティライナー〉。この時期しか運転されないので、「京成時刻表」にも掲載されていない。
●京浜急行電鉄:平日の通勤ライナーは2種類 現金かオンラインで購入
快特の上をゆく“チャンピオン列車”として、平日の通勤ライナー〈モーニング・ウィング〉(上りのみ運転)、〈イブニング・ウィング〉(下りのみ運転)は全車指定席で運転。土休の快特(一部列車)は2号車を指定席としており、ウィング・シートの名称で営業している。いずれも現金購入とWebのKQuickで購入できる。
〈モーニング・ウィング〉〈イブニング・ウィング〉の座席指定券300円は「Wing Ticket」と称し、発売の方法がややこしい。
〈モーニング・ウィング〉を乗車駅の券売機で購入する場合、前売りは乗車6日前の5時30分から前日の21時59分まで、当日は5時30分から発車1分前までで、座席の選択はできない。
KQuickは乗車6日前の4時30分から、当日の発車1分前まで発売され、座席の選択ができる。ただし、0時00分から4時29分までは購入ができない。
“定期券感覚”の1カ月券、Wing Pass(5500円)は、券売機、KQuickのどちらでも購入でき、乗車駅により発売枚数が異なる。KQuickは座席が選択できるのに対し、券売機はできない。
〈イブニング・ウィング〉を乗車駅の券売機で購入する場合、乗車当日の5時30分から発車2分前まで、KQuickは乗車当日の4時30分から発車1分前まで。Wing Passは扱っていない。
快特(一部列車)のウィング・シートは現金購入だと車内で500円、座席の選択もできない。一方、KQuickは乗車8日前の4時30分から当日の発車1分前まで発売(0時00分から4時29分まで発売不可)。料金は300円で、座席の選択もできる。
KQuickのメリットは、急用などで当該列車に乗車できない場合、発車5分前までの1回に限り、変更できること。デメリットは払い戻す場合、発車5分前までに済ませなければならない。券売機の場合、払い戻しは「発車時刻前に限り」と明言しており、“発車1分前まででよい”と解釈できる。
●京王電鉄:京王チケットレスサービスが便利 PayPayでも購入できる
特急の上をゆく“チャンピオン列車”として、〈京王ライナー〉〈Mt.TAKAO号〉があり、座席指定券は券売機とWebの両方で発売されており、差をつけている。
まずは券売機。基本的に当日乗車分のみ、下りは発車1~5分前、上りは発車3分前(京王八王子駅西口のみ1分前)まで発売しており、現金もしくは交通系ICカードで購入できる。ただし、座席の選択はできず、回転式クロスシート(車両によってはリクライニングシート)、ロングシートのどちらになるのかは、乗ってみないことには分からない。
一方、Webだと京王チケットレスサービスに会員登録すると購入できる。クレジットカードの他、PayPayでの決済も可能だ。座席指定券は乗車7日前の7時から発売、座席も選択できる。
さらにクレジット機能がついた京王パスポートカードに登録すると、座席指定券は乗車7日前の6時から発売、ポイントの決済や加算ができる特典もある(PayPayでの決済は対象外)。
意外なことに車端部のロングシートを選択する乗客がおり、多少足を伸ばせること、着座幅が505ミリという広さがポイントのようだ。
●東急電鉄:オンライン予約を推進
大井町線、東横線の急行に有料座席指定サービス、Qシートが連結されており、急行停車駅の窓口(大井町線は改札窓口)で発売されている。支払いは現金のみ。また、指定席用の券売機もない。
WebではQシートチケットレスサービスがあり、会員登録すれば購入できる。支払いはクレジットカードのみ。座席の選択は任意となっている。
京王電鉄と同様、着座幅505ミリのロングシートを選択する乗客もおり、“ハズレ席”や“穴場の席”でもないようだ。
(岸田法眼)