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独断と偏見で選ぶ2024年のベストスマホ5選 「最強カメラスマホ」を上回った「世界初機構」の衝撃

ITmedia Mobile 2024年12月30日 10時14分

 2024年も多くのスマートフォンが販売された。海外発売のスマートフォンを含め、筆者の独断と偏見で選ぶ「印象に残ったスマートフォン」をランキング形式で5つ紹介したい。

●第5位:思わぬところから登場! 音質特化スマホ「MOONDROP MIAD 01」

 第5位には中国で2024年4月に発売された「MOONDROP MIAD 01」を選出した。MIAD 01はONKYO GRANBEATなどと同じ「音質特化スマホ」というジャンルを令和の時代に再現したニッチな商品と評価したい。

 MIAD 01を製造するMOONDROP(水月雨)は中国でイヤフォンやヘッドフォンの設計、製造を主に行うメーカー。スマートフォンはおろか、音楽プレーヤーすら出さなかったメーカーから「スマホ」が出てきたのだから驚きだ。

 本機種は高音質化のため、イヤフォンジャック向けの回路を別設計で配置。DACにはシーラス・ロジック製のCS43010を採用しており、3.5mm端子に加え、4.4mmバランス端子を備えるなど、スマートフォンにしては高音質な仕様。音響基板をシールドで覆うことでノイズ対策も行った。

 スマートフォンとしても6.8型 フルHD+解像度の有機ELディスプレイを採用し、120Hzのリフレッシュレートに対応。プロセッサはMediaTek 製のDimensity 7050を採用し、メモリ12GB、ストレージ容量は256GB。microSDによる容量の拡張も可能としている。

 メインカメラは6400万画素、超広角カメラは800万画素、インカメラは3200万画素とカメラ性能も十分。5000mAhのバッテリーに33Wの急速充電、NFCにも対応する。

 ざっとスペックを並べても、音楽プレーヤーとしては高性能であり、ミッドレンジのスマートフォンとしても「普通に使える」仕上がり。価格も399ドル(約6万2000円前後)と比較的良心的な設定だ。

 実際に聴いてみると、スマートフォンとは思えない高品質サウンドに驚く。特に4.4mmバランスに対応する機種であれば、大きな効果を得られるはずだ。同等価格帯の音楽プレーヤーに音質は劣るものの、動作レスポンスはスマートフォンに準拠する。

 ストリーミング配信サービスはもちろん、SNSやブラウジングも満足に行える。スマートフォンとして現実的な重量感、性能にしてきたことで「こだわりがない」のであれば音楽プレーヤーとスマートフォンを1台にまとめられるのではないかと感じた。

 日本でも販売が予定されているMIAD 01。日本向けの代理店に確認したところ、既に国内向けの認証は取得済み。早期の販売に向けて価格や販路を調整しているとのこと。

●4位:よくぞここまで進化した シャープの隠し玉「AQUOS R9 pro」

 第4位には、12月に発売されたばかりのシャープ AQUOS R9 proを挙げる。筆者にとって、2024年に日本で販売されたスマートフォンでは最も衝撃的な商品であり、過去の商品を使ってきた身として「よくぞここまで進化した」と評価したい。

 メインカメラは5030万画素。新型の1型センサーと光学式手ブレ補正を備えており、画角は一般的な23mm相当へ変更された。この他、1200万画素の超広角カメラと1/1.56型の大型イメージセンサーを採用した5000万画素の3倍望遠カメラを備える。

 特に望遠カメラの採用、メインカメラへの光学式手ブレ補正の採用はAQUOSにとって大きな進化点だ。カメラ性能をアピールする中国メーカーの機種に近づき、トレンドの先端をしっかりと押さえた。好評のライカ監修カメラチューニングも継続されている。

 物理的なシャッターキーを搭載したことで、従来よりも優れた撮影体験を可能にした。オプションのアクセサリーを使えば、62mm径のフィルターを装着できる。今まで以上に撮影の幅が広がる「カメラ」を意識したスマートフォンなのだ。

 実際に使ってみても、シャープのスマートフォンで「ここまで撮れるのか」と圧倒された。ソフトウェアは先行する中国メーカーの機種に届かない部分もあるが、FeliCa対応やシャッターキーによる撮影体験は他の機種にないポイント。カメラスマホとしてはもちろん、衝撃という意味と今後の期待も込めて4位としたい。

●3位:Huaweiが放つ「最強のカメラスマホ」Pura 70 Ultra

 3位にはHuaweiの最強カメラスマホ「Pura 70 Ultra」がランクイン。米国の制裁をものともせず、収縮式レンズ、1型センサーに可変絞り、最短撮影距離5センチの望遠カメラを備えた驚異的なカメラスマホには驚きを隠せなかった。

 Huaweiのスマートフォンは制裁の関係から「ソフトウェアが強くても、ハードウェアで劣る」と指摘されたが、1型センサーと可変絞りの採用で他社に並べてきた。最強のソフトウェアに最強クラスのハードウェア。まさに「鬼に金棒」といった状態なのだ。

 本機種は収縮式のレンズ、極めて高いマクロ性能を持つ望遠カメラはもちろん、プロセッサは自社設計のKirin 9010の搭載が判明しており、中国大陸向けは5G通信に対応している可能性も極めて高い。

 制裁後の独自チップ搭載スマホでは初のグローバル展開も行われ、5G通信を封じながらも東南アジア、中東、欧州地域で販売された。同社初の「Ultra」を冠した機種はあらゆる意味でウルトラなスマートフォンだ。

●2位:日本でも堂々登場! Xiaomiのフラグシップ「Xiaomi 14 Ultra」

 第2位は日本でも話題をかっさらったXiaomi 14 Ultraだ。このスマートフォンはライカと共同開発した4眼カメラシステムを採用。メインカメラには1型センサーに加えて、可変絞り機構を採用。光芒を演出する新しい表現を可能にした。最短撮影距離が10センチまで寄れる3.2倍望遠カメラ、5倍望遠カメラも備える。

 また、撮影体験向上を目的として「Photographer Kit」という専用のカメラグリップも用意。シャッターキー、ズームレバー、ファンクションキー、ダイヤルが備わっている他、1500mAhの拡張バッテリーを備える。ダイヤルは露出や絞り制御などに利用でき、撮影体験を大幅に高めることができる。

 本機種の選出理由は卓越したカメラ性能はもちろんのこと、「日本でも発売された」ということが大きい。同社のフラグシップとしては初の日本投入であり、IT系メディアだけでなくライフスタイルメディアなどをはじめ、各所から高い注目度を示した。日本向け価格は税込み19万9800円で2万円相当のカメラグリップが付属する豪華仕様だった点も評価したい。

●1位:世界初の実用3つ折りスマホに感じた可能性 「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」

 2024年に最も印象的だったスマートフォンは、世界初の3つ折り、トライフォールド端末の「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」だ。3つ折りスマートフォンは展示会などでコンセプトモデルが出展されていたことから、近いうちに実用化すると思われていた。これが思ったよりも早く現実のものとなった。

 筆者はこの機種をいち早く体験するために発売直後の中国 深センへ飛んだ。価格が高価であること、現地でも入手困難な機種のため購入することはかなわなかったが、それでも実機を通常よりも長い時間体験することができた。

 驚くことに、世界初の3つ折りスマートフォンながら、極めて高い完成度に仕上げてきた。特に端末のサイズは現時点で薄型軽量化できる最高レベルと考える。重量298g、最薄部を3.6mmという厚さに仕上げており、手にしてみると「驚異的」という言葉しか出てこない。300g切りの10型タブレットと考えたらライバル不在の独壇場である。

 Mate XT ULTIMATE DESIGNは、ただ折りたためるスマホではない。注目されるカメラ性能はHuaweiのフラグシップらしく、3眼構成。メインカメラには可変絞り、ペリスコープ方式の5倍望遠カメラも備えた。

 プロセッサは非公表だが、3位にランクインしたPura70 Ultraと同じKirin 9010の採用が判明している。このため、本機種も5G通信に対応している可能性が極めて高い。また北斗、天通2つの衛星通信のサポートし、衛星通信を用いた通話やメッセージの送信にも対応する。

 バッテリー容量は5600mAh。折りたたみ、スマートフォンとしては大容量だが、10型クラスの画面を持つタブレット端末として考えたときには少々心もとない。それでも、66Wの有線充電、50Wのワイヤレス充電に対応するなど、運用次第である程度カバーできる。また、スライタスペンのM-Penにも対応している。

 ここまでされてしまうと「薄型、軽量化したので機能を省きました」という機種が、まるで言い訳のように聞こえてくる。この高い完成度に驚く他ない。

 そんなMate XTには先進的な機能が多く詰め込まれているだけあって、価格は1万9999元からと日本円で約40万円を超える。それでもなお、中国国内では多くの予約が殺到し、発売日当日に購入することができない状態。発売当初は、本体価格の2倍以上の価格で転売される活況な状況だった。

●3つ折りの衝撃に驚いた2024年のスマートフォン 次のトレンドは大容量バッテリーとAIスマホか

 さて、ここまで振り返ってみたが、2024年は順当に進化を遂げる「カメラスマホ」の衝撃を上回る出来事が多くあった。特に1位のMate XTは世界初の3つ折りスマートフォンということもあり、他の折りたたみスマホの体験を超えてくる存在だった。

 折りたたみスマートフォン自体はかなり豊作だった2024年。2023年よりも薄型軽量化したGalaxy Z Fold6、待望の大画面化を果たしたGalaxy Z Fold Special Editionは記憶に新しい。

 中国勢では、驚異的な軽量化と高性能を両立したvivo X Fold3シリーズ、HONOR Magic V3、Xiaomi MIX Fold 4をはじめ、改めて折りたたみスマートフォンの進化には驚かされた。

 フリップタイプではZTE、Xiaomi、HONORが新たに参入。中でもZTEのnubia Flipは日本でも販売され、本機種をベースにしたY!mobile向けのLibero Flipは税込み6万3000円という衝撃的な安さで展開したことは記憶に新しい。

 それでも、3つ折りという全く新しいジャンルのスマホが放った衝撃を超えてくるものはなかった。筆者としてはこれを1位以外に選出する理由がなかった。また、HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGNは発表会と発売日をiPhone 16シリーズと同日にぶつけるなど、AppleよりもHuaweiが優れているという構図を演出したことも印象的だった。

 2位~4位はカメラスマホを選出。今回選出の機種はカメラ性能に加え、個人的に「衝撃的」だった機種を選出した。そのような意味ではXiaomi 14 Ultra、Huawei Pura70 Ultra、AQUOS R9 proはインパクトが強く、印象に残った。もちろん、OPPO Find X7 Ultra、vivo X100 Ultraといったカメラ性能が極めて高い機種も同時に使っていたため、ここは非常に悩ましい部分だった。

 5位のMOONDROP MIAD 01は「異端」という言葉以外が思い浮かばない。ワイヤレスイヤフォンが活況な中、あえて有線イヤフォンを楽しむ構成に全振りした。ニッチなコンセプトであること、筐体の材質がかなりチープなことから、製計者が自己目的達成のために作った同人誌ならぬ「同人スマホ」といった仕上がりで、さまざまな面で他の機種との違いを感じ取れた。

 この他、無難ながら完成度の高い「Galaxy S24 Ultra」、ディスプレイや本体サイズに大きな変化のあったソニー「Xperia 1 VI」やASUS「ROG Phone 8」も印象に残ったスマートフォンだった。

 最後に2025年の端末動向を占うと、「高密度化」が著しいバッテリーのさらなる進化が進むと考える。ここが進化すれば、大容量のバッテリーでより長くスマホが使えるようになる。高密度になって省スペースとなれば、大型パーツによるカメラ性能向上も考えられる。同時に本体の軽量化も達成することができる。マイナス要素のない大きな進化だ。

 2024年に入って中国メーカーのスマートフォンを中心に新世代のバッテリー搭載機が世に出始めた。例えば6.3型クラスではXiaomi 15が5400mAh、vivo X200 Pro miniが5700mAhをはじめ、標準的なサイズでも5000mAhをゆうに超える大容量のバッテリーを採用している。

 6.8型クラスでは6000mAhクラスのバッテリー容量が標準になりつつあり、従来の5000mAhで大容量という基準が変わり始めている。日本でも6.6型で5680mAhのバッテリーを採用した「OPPO Find X8」が発売されたが、このクラスが基準になってくると考える。

 これらの機種はさらなる大容量を達成しながら、高密度バッテリーを採用したことで本体重量の軽量化、カメラ性能の向上を果たした。

 折りたたみスマートフォンはより顕著で、vivo X Fold 3 Proが5700mAh、HONOR Magic V3が5150mAh、Xiaomi MIX Fold 4が5400mAhといずれも大容量。高密度バッテリーの採用によって、薄型化と軽量化を同時に達成できた。

 もう1つ「AIスマホ」も気になるところだが、日本ではAppleの「Apple Intelligence」がカギを握りそうだ。

 現時点のAIサービスはあくまで端末内の機能に生成AIを加えたもの。Google GeminiのようなGoogleが提供するサービス間で動作する「自社サービス完結型」がほとんど。会社やプラットフォームをまたいださまざまなサービスから情報を集めたり、SNSへの投稿やオンラインストアで商品を購入したりするアクションを起こせる「真のAIスマホ」には至っていない。

 この点は中国向けの各社AIサービスが一歩リードしており、さまざまなサービスと接続して便利に利用できる。Apple Intelligenceはこれに続く形で、開発者がアプリにコードを組み込めばAIが情報を参照したり、アクションを起こしたりできるとした。自社サービス完結型ではない真の意味のAIスマホが一般的になるかもしれない。

 ここに挙げた以外にも多くの「進化」や「変化」が起こった2024年。今回例に挙げた端末のみならず、欧米、欧州のソフトウェアアップデート提供の期間を定める流れをはじめ、スマートフォンを取り巻く情勢も変わりつつある。

 日本でもミリ波端末の値引き緩和など、規制に再度メスが入ったことで市場動向も変化することが予測される。2025年以降もスマートフォンにまつわる「進化」と「変化」の動向を、筆者も注視して追っていきたい。

●著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

・X:https://twitter.com/Hayaponlog

・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/

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