「iPhone 16 Pro」「Google Pixel 9 Pro」は、日本で「コンパクトなカメラスマートフォン」として注目される。横幅が70mm台前半と片手で握りやすく、5倍以上の望遠カメラを搭載して遠くの被写体も美しく撮影できる点が評価されている。このコンセプトに似たスマートフォン「vivo X200 Pro mini」が中国で登場した。
その実機を入手したのでレビューする。なお、vivo X200 Pro miniは技適を取得していないため、電波法第103条の6の解釈のもと「海外で開通した携帯電話」を日本に持ち込んで確認を行った。
●vivoのコンパクトなカメラスマホ まずはスペックをチェック
vivo X200 Pro miniは同社のX200シリーズ初のコンパクトモデルで、カメラ性能を重視した設計だ。まずは、主なスペックを見ていこう。
・プロセッサ:MediaTek Dimensity 9400
・メモリ:12GB/16GB
・ストレージ:256GB/512GB/1TB
・ディスプレイ:6.31型 フルHD+
・アウトカメラ
・標準:5000万画素 F1.6(ソニー製 LYTIA LYT-818センサー)
・超広角:5000万画素 F2.2
・望遠:5000万画素 F2.57
インカメラ:3200万画素
バッテリー:5700mAh(90W充電 30W無接点充電対応)
vivo X200 Pro miniの製品名には「mini」と付いているものの、高さ150.8mm、幅71.8mmであり、そのサイズ感は日本国内でも販売されているハイエンドかつスタンダードモデルであるiPhone 16やGalaxy S24に近い。ただし、6.6型クラスのディスプレイサイズが主流となっている中国市場では、小型モデルに分類される。
有機ELを採用したディスプレイは、ピーク時の輝度が4500ニトと高く、屋外でも視認しやすい。1920HzのPWM調光にも対応し、ちらつきを抑えて目の負担を軽減する。幅広い色表現に加え、撮影プレビューから表示、編集までにおいて統一した色表現が可能な「ZEISSマスターカラースクリーン」も特徴だ。
プロセッサには、MediaTek Dimensity 9400を採用。MediaTekのAndroid端末向けプロセッサとしては最上位で、高い基本性能はもちろん、ISPやAIの性能向上がカメラ性能の底上げにつながる。高度なAIアクセラレータ「MediaTek AI」の搭載により、“消しゴムマジックのvivo版”といえる「AI Eraser」で生成AIを利用できる。人物を高精度に検出でき、高速に処理できる。
メモリは、12GBか16GBと必要十分な容量を確保した。ストレージもUFS4.0規格の高速なものを採用する。省電力かつ高速に伝送でき、仮想メモリなどを利用しても、パフォーマンスの低下を抑制するという。冷却機構には、ベイパーチャンバーを採用し、冷却性能を向上させた。最新プロセッサとの組み合わせで、ゲームを長時間プレイできるそうだ。
●高負荷のゲームも快適に動作 バッテリーは丸1日使っても十分持つ
いざ、vivo X200 Pro miniを利用すると、ストレスなく動作すると感じる。vivo独自のチューニングとベイパーチャンバーにより、本体の発熱も抑えられているようだ。試しに、高い負荷のかかる「原神」を1時間ほど連続でプレイしたところ、背面が徐々に温かくなることが分かったが、極端に「熱くなる」と感じることは少なかった。優秀なプロセッサと冷却設計による結果といえる。
サウンド面では、ステレオスピーカーとソフトウェア処理の進化で、クリアな音質を楽しめる。このサイズのスマートフォンとしては、内蔵スピーカーの音が良好だ。音量が出るというより「高音質での再生」に注力している、そんな印象を受けた。
このサイズのスマートフォンの中でも特にいい、と感じたのはバッテリーだ。先にレビューした「Xiaomi 15」もかなりよかったが、vivo X200 Pro miniはそのさらに上を行くレベルで、丸1日使用しても30%ほど残っていた。
なぜ、これほどまでにバッテリーが持続するのかというと、エネルギー密度の高いバッテリーを採用しているからだ。vivoは近年、バッテリー技術に注力しており、サプライヤーと共同開発した「BlueOcean Battery」を、2024年発売の機種において価格帯を問わず採用している。このバッテリーは、従来よりもエネルギー密度を向上させることで、薄型軽量化と大容量化の両立を実現した。
その結果、コンパクトなvivo X200 Pro miniにも5700mAhという大容量バッテリーを搭載できるようになった。参考までに、vivo X200 Pro miniに近いサイズのGalaxy S24は4000mAh、Google Pixel 9 Proは4700mAhであることを考えると、この5700mAhがいかに大容量であるかが分かる。vivo X200 Pro miniは90Wの高速充電、30Wのワイヤレス充電にも対応している。本機種のような大容量バッテリーを採用するスマートフォンには急速充電技術が欠かせない。
●テレマクロ撮影で寄らずに接写可能 カールツァイスの力を借りたチューニングも必見
続いて、カメラ性能をチェックする。vivo Xシリーズのスマートフォンは、カメラ性能を重視するラインアップだ。vivo X200 Pro miniは、画角が35mm換算で15mmの超広角カメラ、23mmの広角カメラ、70mmの3倍望遠カメラを搭載する。画素数は全て5000万画素だ。
このうち、広角カメラのイメージセンサーには、ソニー製のLITIA LYT-818を採用し、センサーサイズは1/1.28型、レンズもF1.69と明るいものとなっている。ちなみに、vivo Xシリーズの上位モデルに位置するvivo X200 Proも、vivo X200 Pro miniと同じイメージセンサーを搭載している。
光学3倍ズームが可能な望遠カメラには、ソニー製のIMX882(1/1.95型)イメージセンサーを採用している。レンズはF2.57と比較的明るく、テレマクロ撮影にも対応している。そのため、実際に被写体に近づくことなく、望遠カメラで被写体をクローズアップすることが可能だ。
vivo X200シリーズのカメラチューニングは、vivoとドイツのCarl Zeiss(カールツァイス)の協力によって行われている。vivo X200 Pro miniでは新たに「風景モード」を追加し、従来は夜景、フード、星空モードなどで分かれていた機能を統合。この変更により、操作性が向上した。
vivo X200 Pro miniの作例を以下に掲載する。画角はデフォルトのウオーターマークに表示される。
vivo X200 Pro miniは、画像処理を担う独自チップを備えないこともあり、進化点は以前よりも控えめだが、最新のプロセッサによる高いISP性能によって着実な進化を遂げている。
コンパクトながらvivoのカメラフラグシップモデルのよさをしっかりと体験できるvivo X200 Pro mini。高性能なメインカメラはもちろん、テレマクロ対応の望遠レンズを搭載し、手軽にクローズアップフォトやテレマクロ撮影を可能にした。カメラ性能を強化するスマートフォンの中でも、明確に差別化を図っているのだ。
●iPhone風のソフトウェアも 「Dynamic Islandのvivo版」を触る
vivo X200 Pro miniは、デザインやサイズ感としてiPhone 15を意識している、と感じる。120Hzのリフレッシュレートに対応する高輝度のディスプレイ、カールツァイスとコラボした高性能カメラ、5700mAhの大容量バッテリーと90Wの急速充電機能というスペックを見ると、ポケットに収まる「iPhone超えの性能」と評価できそうだ。
ソフトウェアの面でも、iPhoneを意識したと思われる機能が多く見られる。特に、ホーム画面やロック画面のカスタマイズ機能は、細部に至るまでiPhoneを強く意識しているように感じられる。また、通知やバックグラウンド処理をディスプレイ上部で可視化するiPhoneの「Dynamic Island(以下、ダイナミックアイランド)」に対し、vivo X200 Pro miniでは「Atomic Island(原子島)」という名で類似した機能を搭載する。
これらの機能は、AndroidをベースとしたOrigin OS5に備わるもので、vivo X200 Pro miniに限らず既存の機種もアップデートで対応する。直近では、OPPOのColorOS 15やHONORのMagic OS 9にもダイナミックアイランドに似たような機能があり、近年、中国メーカーのスマートフォンで標準的な機能になりつつある。
●iPhoneやGalaxyによく似たデザインも、価格は非常にお手頃
ハードウェアとソフトウェアの両面でiPhoneを意識したvivo X200 Pro mini。そのデザインだけでなく、iPhoneやGalaxyを思わせるカラーバリエーションにも注目したい。vivo X200 Pro miniの競合となるのは、中国メーカーの他機種ではなく、サイズ感やカラーリングの面からもiPhoneやGalaxyであることが明白だ。
vivo X200 Pro miniのカラーバリエーションは、定番のブラックやホワイトに加え、パステル調のグリーンと、今回レビューしたピンクの全4色。特に、ハイエンドモデルでパステルカラーを採用するのはvivoでは珍しく、vivoにはあまりない路線といえる。
これは、iPhoneやGalaxyを強く意識していることの表れであり、発表会の演出からもAppleに寄せている印象を受けた。どちらかといえば、vivoはX200 Pro miniを中国メーカーの他機種からシェアを奪うためではなく、iPhoneユーザーの乗り換え先としてアピールしている形だ。
このように、vivo X200 Pro miniは、iPhoneやGalaxyと同等のサイズ感やデザイン性を持ちながら、「最新プロセッサ」「大容量バッテリー」「高性能カメラ」といった特徴で差別化を図っている。露骨ともいえるほどデザインや機能を寄せてきた一方で、その完成度の高さから、いい意味で「iPhoneを超えた中国版iPhone」と評価したい。
それでいながら、価格は非常にお手頃だ。例えば、Galaxy S24が799米ドル(約12万円)、上位モデルのS24+が999米ドル(約15万円)であるのに対し、vivo X200 Pro miniは4699元(約9万7000円)から、さらに上位モデルのvivo X200 Proでも5299元(約11万1000円)と、競合機種より抑えた価格設定が魅力的だ。799米ドル(約12万6000円)からのiPhone 16と比較しても、vivo X200 Pro miniのコストパフォーマンスの高さは際立っている。
●グローバル展開にも期待したい
今回、vivo X200 Pro miniの実機に触れたら、vivoのスマートフォンの展開にいっそう目が離せなくなった。vivoが、これまでよりもコンパクトなスマートフォンを市場に投入したことで、中国市場にも新たな旋風を巻き起こせたと感じる。グローバルで展開されていない点は惜しいが、今後の展開次第ではXiaomi 15と同様に注目を集めそうだ。
なお、日本国内でも6.3型クラスのディスプレイサイズのハイエンドスマートフォンを求める声が多くあり、SNSではマニア層を中心に関心度も高い。vivoの新たな切り札であるvivo X200 Pro miniに触れたからこそ、今後のスマートフォン市場におけるvivoの展開手法にも期待が膨らむ。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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