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「auマネ活プラン+」が好調のKDDI、UQ mobile/povoも回復に貢献 高橋社長から最後のメッセージも

ITmedia Mobile 2025年2月6日 16時44分

 KDDIは2月5日、2025年3月期第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比2.3%増の4兆3641億9500万円、営業利益は同2.0%増の8645億6600万円で増収増益。四半期利益は同1.7%減の5365億3100万円だったが、前期の子会社・関連会社の組織再編に関わる一過性影響などがあったためで、それを除けば同0.6%増になったという。

 4月1日に代表取締役社長CEOを退任して代表取締役会長へ異動することが決まり、最後の決算説明会となった高橋誠氏は、「通期予想に対して順調に進捗(しんちょく)」と話した。

●通信のモメンタムは回復 UQ mobileやpovoも勢いをけん引

 営業利益の増減要因としては、マルチブランド通信ARPU収入が35億円、金融エネルギー事業が126億円、DX事業が123億円、そしてローソンが好調で182億円とそれぞれ増加。それに対してグループMVNO収入や楽天ローミング収入が122億円のマイナスとなり、その他の減収要因を加えて、169億円の増加となった。

 主力のパーソナル事業は、通信・付加価値ARPU収入を合計した総合ARPU収入が1兆4882億円となり、通信ARPU収入は35億円、付加価値ARPU収入は279億円の増加。通信ARPU収入は第4四半期にトータルで増収となる見込み。

 スマートフォンの稼働数は3270万契約となり、順調に拡大。全体での解約率は「競争激化で流動が活発化した」(高橋氏)ことで、マルチブランドでは1.30%と上昇したが、auブランドは低水準を維持したという。

 料金プランで新たな施策を投入したこともあり、2024年11月以降、契約は上昇基調となった。auブランドでauマネ活プラン+を投入した狙いについて高橋氏は「使い放題利用の比率増加と付加価値ARPU向上を狙った」と話す。金融連携によって、auフィナンシャルグループの顧客基盤を拡大して、グループの成長を加速させたい考えだ。

 UQ mobileはコミコミプラン+などの新プランを提供し、競争力のあるプランとした。povoも30日間30GBでは業界最安というトッピングを用意した。これらによってマルチブランドでは11月から純増数がプラスに転じた。

 総合ARPUは5340円で上昇基調にあり、特にauじぶん銀行、au PAYといった金融・決済サービスが15.6%増となって好調。UQ mobileからauへの移行も1.5倍に拡大しており、ARPU増に貢献した。

 auマネ活プラン+が好調で金融・決済サービスとのシナジーを発揮。同プラン利用者は、au PAYゴールドカードの保有比率は6.4倍に、au PAY決済単価は1.2倍に、auじぶん銀行預金残高は1.4倍と、顧客基盤拡大につながった。

●5G Sub6の基地局全局が5G SAに対応、Starlinkとの直接通信も今春開始へ

 2024年10月にスタートした「Pontaパス」では、ローソンの特典を強化した。新規獲得数が前四半期から約20%増加し、他キャリアのユーザーの獲得も増えるなど順調。ローソン店舗でpovoのデータ容量が獲得できるpovo Data Oasisは、11月のスタート以来、延べ10万人が利用し、9割超のローソンで利用されているとのことで、高橋氏は順調な利用だと話す。3月までにローソン全店でeSIMの販売も開始する予定だ。

 こうした取り組みによって、ローソンの平均日販は対前年比で3.4%増、Pontaパスからの送客数は約2倍になるなど、成長に貢献しているという。

 通信品質の取り組みでは、国内最大という5G Sub6の基地局全局で5G SAの提供を2024年11月末に開始。対応端末とプランであれば、さらに快適な通信の利用が可能になった。さらに衛星通信のStarlinkとの直接通信の開始に向けて、商用免許の認可を取得。今春からサービスを提供する。対応機種も拡大し、開始時には「200万人規模へのサービス提供を目指している」という。

 さらに、これまで衛星とスマートフォンの直接通信ではメッセージサービスの提供を想定していたが、「いろいろと検討していくと、(Googleの生成AIである)Geminiが使えるということが分かって、AIサービスの連携を含めて検討している」と高橋氏。「メッセージだけのサービスではちょっと寂しいので、楽しいサービスを提供できるよう考えている」としている。

 金融事業では、顧客基盤は順調に拡大していることから、さらなる成長に向けてAI活用を推進するため、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)との協業を強化し、金融特化のLLMの開発、次世代リモート接客プラットフォームのコンビニ活用などの取り組みを進めていく。

 法人部門も好調で、通信・AI基盤の運用・セキュリティといったサービスを提供するWAKONX、その通信基盤であるConnectIN、セキュリティ事業のLACの子会社化といった事業を進め、さらなる成長につなげたい考えだ。

●高橋氏が社長としての最後のメッセージ 新社長にバトンを渡す

 高橋氏は会見の最後の説明に「高付加価値型の経済好循環が必要」というスライドを紹介。その上で日本の通信環境は、「各種政策によって、世界の先進国の中でも低廉な料金水準」と指摘し、米国の通信料金の半分以下だと話す。

 そうした中、通信事業者のネットワーク品質向上の取り組みも続けられており、今後はAIによるトラフィック増や災害・セキュリティ対策のコストも増える。インフレ傾向もあって基地局などの設備の建設をするパートナー企業への委託コストや運用コストも増加し、適正な取引価格への転嫁が求められている。

 高橋氏は、「価値あるサービスを提供し、それに伴う対価をいただき、それを糧に投資を進めるという経済の好循環が非常に重要」と強調。これ以上の値下げが難しいというメッセージにも取れるし、政策に振り回される現状への不満とも取れるが、社長として最後のメッセージを発した形だ。

 高橋氏は4月1日で退任し、新社長には、技術畑出身で取締役執行役員常務CDO(Chief Digital Officer)、先端技術統括本部長兼先端技術企画本部長の松田浩路氏が就任する。高橋氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOが39歳と若く、こうした最近のAI業界の若い経営者と渡り合うには若返りが必要と判断。前職の田中孝司会長が54歳、高橋氏が56歳で社長に就任したことから、さらに若い53歳の松田氏を選んだ。

 技術に明るいだけでなく、Google、Apple、Qualcommといった大きなパートナーとの協業に関与してきて、さらに最近ではStarlinkとの提携をほぼまとめ上げた実績もあり、「グローバルの語学力とセンス」(高橋氏)を備えた松田氏が、次期社長として最適だとした。

 KDDIは、2025年度を最終年とする中期経営計画のさなかだが、高橋氏が田中会長から社長職を引き継いだときと同様、次の中期経営計画を松田氏が社長として主導できるよう、1年を残しての退任となった。

 高橋氏は、7年間の社長職の中で最も印象に残っていることとして長時間の通信障害(2022年7月)を挙げる。それから通信品質で一番になることを技術陣とともに目指してきて、Opensignalの評価で1位を獲得したことが「非常にうれしかった」と高橋氏は振り返った。

 松田新社長は、4月に「所信表明演説をやる」と高橋氏。新社長として、改めて方針を示すとしている。

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