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「動画より静止画を撮りたいんだー」という人に富士フイルム「X-T50」は超オススメかも 

ITmedia NEWS 2024年6月16日 7時20分

 「最近の小型軽量カメラは動画ユーザーを意識しすぎ。私は動画よりも静止画を撮りたいんだー」という人に超おススメのカメラが登場したかも。

 富士フイルムの「X-T50」である。

 「X-T30」の後継機なのだけど(ちなみに、X-T40はなくて、X-T30 Mark IIというマイナーチェンジモデルがあった)、むしろ、「X-T5」の弟分と思った方がいい。

 富士フイルムの小型軽量カメラとしては、旅行向けと称して登場した「X-S20」があり、それとかぶる? と思う人がいるかもしれないけど、かぶりません。

 X-S20は動画メイン、あるいは動画と写真が半々くらいの人に、X-T50は写真がメインの人に向けたカメラだからだ。

●X-T5をいい感じに小さくした写真のためのカメラだ

 X-T50はX-T5の高性能やテイストをコンパクトにまとめたモデルが基本。

 イメージセンサーは4020万画素の「X-TRANS CMOS 5 HR」センサーで画像処理プロセッサは「X-Processor 5」。つまり、X-T5と同じものだ。

 ボディ内手ブレ補正は約7段。これは良い。

 前面がほぼフラットでのっぺりしていたX-T30/IIに比べるとグリップが少ししっかりして精悍な顔になっている。前ダイヤル部分が少しカットされているのもミソだ。

 背面を見ると、X-T30/IIとはちょっと違う。ボタンの位置や種類が一部変更された。

 背面モニターは従来通りチルト式。最近、ミドルクラスの小型軽量機がバリアングルモニターばかりになって残念、とお嘆きの方(わたしだ)に朗報である。

 上から見ると、撮影モードダイヤルがないというX-Tシリーズならではの操作系がよく分かる。シャッタースピードと露出補正。絞りは基本的に絞りリングで行うが、絞りリングがないレンズ(XCシリーズなど)ときは前後のダイヤルで。ISO感度も電子ダイヤルで行う。

 分かってしまうと「撮影モードダイヤルなんて不要じゃん」って感じになるんだけど、慣れてない人はとまどうかも。そんなときは「AUTO」レバーを「AUTO」ポジションにするとフルオート(露出補正などは可能)になる。それが実に良いアイデアかと思う。

 X-T50が従来のX-Tシリーズと大きく違うのは、左肩にあったドライブモードダイヤルがボタンになり、代わりに「フィルムシミュレーションダイヤル」が付いたこと。

 最近の富士フイルムは、X Summitなどでやたら「フィルムシミュレーション」の話をするなあと思っていたけど、それがここに結実してるのか、って感じだ。

 これだけでX-T50からのメッセージが分かるよね。これは、「いろんなフィルムシミュレーションを使って、いろんなテイストの写真を楽しもう」なのだ。

 面白いことに、このダイヤルが付いてるだけで、フィルムシミュレーションをあれこれ切り替えて使いたくなるのだ。

●フィルムシミュレーションしまくろう

 X-T50のフィルムシミュレーションは細かなバリエーションを含むと全部で20個だが、ダイヤルに直接刻印されているのは8つ。

 最初のSTD(Provia)、V(Vivid/Velbia)、S(Soft/Astia)の3つは初期からの基本フィルムシミュレーション。

 その後は、人気の高いCC(クラシックChrome)、一番新しフィルムシミュレーションで常用してもOkなRA(REALA ACE)、続いてレトロ系のNC(クラシックネガ)、NN(ノスタルジックネガ)、そして、白黒のA(アクロス)だ。

 FS1からFS3はカスタマイズできる。

 そしてそれぞれのフィルムシミュレーションには詳細な解説がついているので参考にすべし。

 ただ、ダイヤル1つでさっと選べるとなると、つい「こっちでも撮っておこう」と思って撮影枚数増えちゃうよね。

 実際にどう違うのか、ダイヤルに用意されている8つで撮り比べてthumbnailを並べてみた。

 青空や緑があると差がよくわかる。

 渋くて古い感じを出したいときはクラシックネガがいい。

 肌の感じも見たいよねってことで、次は人物を。

曇天下だったこともあり分かりづらい面もあるけど。

 ではスタンダードなPROVIAで1枚。

 このレンズはキットレンズの「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」。これは電動ズーム仕様の廉価な沈胴レンズ。電動ズームのレスポンスがやや鈍いことや、絞りリングがないことからX-T50にはちょっと似合わない感じがするのだけど、レンズキットを廉価に抑えたかったのだろう。

 実は、海外ではもう1つ、新レンズとのキットも用意されている。「XF 16-50mm F2.8-4.8 R LM WR」だ。

 初代Xシリーズと同時に登場した「XF 18-55mm F2.8-4 R LM OIS」の後継モデルのような、標準ズームレンズとしての位置付けだ。

 広角側が現在のトレンドである16mm(24mm相当)になり、望遠側がちょっと短く暗くなり、手ブレ補正もなくなったけど(今はボディ側が手ブレ補正持ってるから問題はない)、310gから240gと、とても軽くコンパクトになった。特に軽いのがいい。

 しかも、ズーミングしてもレンズ長が変わらないので非常に使い勝手がいい。

 個人的には、こちらのレンズと合わせて使いたいと思う。X-T50につけたときのバランスもいいしね。

 しかも望遠端でけっこう寄れるのだ。

 この辺でガスタンクをば。

 レンズは16-50mmで撮影。キットレンズのXC 15-45mmよりディテールの描写力は高い。そういう意味でもこっちがおすすめだ。

 携帯時のサイズやコスト優先ならXC-15-45mmのレンズキットが、画質や性能、使い勝手優先ならXF 16-50mmかな。

●見逃せないAFの進化

 X-T30/IIからX-T50になって進化した点として見逃せないのがAF周り。他のXやGFXで搭載された被写体検出AFがのっかってきたからだ。

 人物かそれ以外かで排他的なのがちょっと気になるけど、被写体検出をオンにすると動物・飛行機など6種類。AUTOモードの時は被写体自動検出がある。

 まずは動物からいこう。

 たまたま神社で知人のカメラマンと談議してたら犬の散歩人が現れたので撮らせてもらった。

 鳥や飛行機を撮るなら望遠レンズが必要だよねということで、「XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR」の登場だ。これは比較的軽くてコンパクトなのでX-T50にも似合うし、レンズを付けて持ち歩いても負担じゃない。しかもけっこう寄れる。

 この望遠ズームをつけて公園を歩いていたら、地中の幼虫を求めて歩くムクドリを発見。鳥検出AFを駆使して撮影。

 動きがすばやいとたまに外すことはあるが概ね実用的だ。

 動きものを撮るとき、撮影モードを変えなくてもさっとシャッタースピードダイヤルを回して最適な速度にセットできるのもX-T50のいいところだ。

 続いて人物。望遠でのポートレートってのも望遠の圧縮効果を出せて面白いのだ。

 ボディの話に戻る。

 ISO感度は最高でISO12800。拡張ISO感度でISO51200まで上げられるが、画素数が多い分高感度に超強いってことはない。

 シャッタースピードはメカシャッターで1/4000秒、電子シャッターだと1/180000秒まで上げられる。この辺はX-T5と同じだ。

 連写速度は電子シャッターなら秒20コマとX-T5と同じだがメカシャッターだと秒8コマ。こちらはX-T5より遅い。

 また、EVFの見え具合や大きさもさすがに上位機には及ばないので、EVF性能を重視する人や本格的な連写撮影をする人は、X-T5かX-H2Sを選ぶべきかな。

 そして動画。

 ボディの写真を見ても「動画用録画ボタン」はない。撮影モードダイヤルもない。

 動画は「DRIVE」メニューの中、一番下にあるのだ。

 動画性能自体はX-T5などと同じ画像処理プロセッサを採用していることもあって6.2Kに対応するなど高性能だが、カメラとしては動画より写真メインでデザインされているのだ。

●撮影枚数がつい増えてしまうスナップ向きミラーレス一眼だった

 正直なところ、このカメラ、めちゃ気に入りました。

 何しろ携帯性が高いし、撮影性能は上位モデルをうまく受け継いでいるし、操作系もカメラに慣れてる人にはすごく分かりやすい。メカニカルなダイヤルを回して設定して撮る、という一連の動作は理にかなっていて快適だ。

 そしてフィルムシミュレーションダイヤルがあると、その都度考えたり思いつきだったり気まぐれを起こしたりでついカチャカチャと変えちゃうのだ。同じシーンを違うフィルムシミュレーションで撮ってしまうので撮影枚数が増え、その分バッテリーが早く消耗しちゃうほど(なので旅行時などはモバイルバッテリー必須かも)。

 難点は電子ダイヤルが軽く、それがISO感度に割り当てられてたりするので気がつくと感度設定が変わってたことがあるくらいか。

 動画より写真という人には超お勧めできる。レンズはXF 16-50mmがいい。

 コンパクトで気軽に持ち歩けるデジタル一眼が欲しくて、なおかつ動画メインでVlogも積極的に撮りたい人はX-S20を、写真メインの人はX-T50を、だ。

 ただ、円安もあいまって日本円での価格が前モデルよりぐんと上がってしまったのでそこはお覚悟を。

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