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熊本県で新鉱物「不知火鉱」を発見 産地は“日本唯一のプラチナ系砂白金鉱床” 東大物性研らが発表

ITmedia NEWS 2024年7月1日 13時30分

 東京大学物性研究所などの研究チームは7月1日、熊本県美里町の山中から新種の鉱物「不知火鉱」(しらぬいこう、学名:Shiranuiite)を発見したと発表した。新鉱石の名前は、熊本県の古称「火の国」の伝承にちなんで命名。国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名委員会が正式名称として承認した。

 熊本県美里町山中にある釈迦院川の支流で見つけた砂白金を調べたところ、既知の鉱物である「硫銅ロジウム鉱」と同じ見た目をしていながら、組成が異なる不知火鉱を発見した。不知火鉱の主成分は、銅とロジウム、硫黄の3つ。不知火鉱は、砂白金粒子になかば抱きかかえられるような形で産出するという。

 研究チームは2019年、本県美里町山中の河川から砂白金を発見。それを調べたところ、ほとんどの粒子の主成分がプラチナの一種「イソフェロプラチナ鉱」であることが分かった。これは、この場所がプラチナ系砂白金の鉱床であることを意味し、美里町の砂白金鉱床は、日本で初めてかつ唯一のプラチナ系砂白金鉱床として認識されているという。

 プラチナ系白金族元素はマグマに凝集しやすいという特性がある。このため、プラチナ系砂白金の産地には「輝石」という鉱物の塊が多く見られるという。美里町の山中も、マントルのマグマ溜まりで生成される輝石の塊が広がっており、日本国内では美里町ほどこれが分布する地は他にないとしている。

 このことから、研究チームは「熊本県でプラチナ系砂白金鉱床の発見に至ったのには、地質の裏付けがあった」と説明。過去には、この鉱床から「皆川鉱」(みなかわこう、学名:Minakawaite)」と「三千年鉱」(みちとしこう、学名:Michitoshiite-(Cu))」の2つの新鉱物を見つけており、さらなる新鉱物の発見が期待されていた中で、今回の不知火鉱の発見となった。

 「当地は日本で唯一のプラチナ系砂白金の鉱床であるだけでなく、3種類もの新鉱物が見つかっているように、世界的にも特異な鉱床と見なせる。一方、鉱床規模は小さく、現時点では資源利用は難しいと考えている。しかしながらプラチナ系白金族元素の希少な国内資源という重要性から、埋蔵量や成因についてさらに詳しく調査する予定」(研究チーム)

 この研究成果は、学術雑誌「Journal of Mineralogical and Petrological Sciences」のオンライン版にて7月1日早期公開された。

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