Infoseek 楽天

老舗百貨店、大丸松坂屋が「高級アバター」を販売するワケ 「Ado」のイメージディレクターも参加

ITmedia NEWS 2024年7月5日 8時30分

 7月3日から5日まで東京ビッグサイトで開催している「コンテンツ東京」の一角に異彩を放つブースがあった。のれんに、砂利敷の上に置かれた岩、そして法被を羽織ったスタッフ……和を全面に押し出している。その主は老舗百貨店の大丸松坂屋百貨店で、扱うのは「高級アバター」という。

 大丸松坂屋百貨店が展示したのは、VRChatで利用できるオリジナルアバターで、2023年10月に百貨店業界初の取り組みとして販売を開始。アバターの相場はおおよそ1体3000~5000円程度とされているが、大丸松坂屋のものは一桁多い2万8000円から。複数のクリエーターが参加しており、現在12体を販売。アーティストAdoさんのイメージディレクターを務めるORIHARAさんの作品もあるという。

●なぜ百貨店が「高級アバター」販売?

 「なぜ百貨店がメタバース事業?」と疑問に思うが、大丸松坂屋百貨店の岡崎路易氏(崎はたつさき)は「メタバースで生活している人がいるから」と語る。岡崎氏は同百貨店でDX推進部部長としてデジタル事業開発を率いており、メタバース事業への進出は、盛り上がりを見せていたメタバース領域を調べて欲しいという社長の声がきっかけだったという。

 自ら試したい性格という岡崎氏はゲーミングPCを購入し、いつの間にかVRChatの世界に没頭。VRChat上で“生活”しているヘビーユーザーが多くいること知り、メタバース生活者向けの商品開発にかじを切る。企業が「メタバース事業に参入」というと、大体は箱を作りがちで“過疎バース”になることも少なくないが、大丸松坂屋はすでに存在するメタバースユーザーを対象に捉えた。アバターの販売から始めたのも、ユーザーにとって一番身近なアイテムだったから説明する。

 扱うのはいわゆる「高級アバター」と呼べる代物だが、「正装」というコンセプトをもとに、実力のある複数のクリエーターと制作した高品位なもので、オリジナルながら百貨店の名に恥じないデザインとクオリティーを目指した。

 “百貨店クオリティー”のアイテムを取り揃えるだけでなく、制作する若手クリエーターの育成も担う。百貨店として、もともと現代アートや工芸家などのキュレーションも手掛けてきたこともあり、同社が培ってきたブランドやアーティスト、デザイナーとのネットワークという資産を持つ。これを生かし、アバター以外のデジタルアセット含め、新世代のクリエーターとのコラボレーションを増やす予定だ。

 また、百貨店の域を超え、メタバースのコンサルティング事業も手掛けるという。同社は米VRChatと公式パートナーシップを締結しており、アバターの制作・販売で得られたナレッジをもとに、VRChatを使った企画立案・運用支援、アバター/デジタルアセットの制作、PR・SNS発信など、企業がメタバースを最大限活用するためのB2Bサービスにも力を入れるとしている。

この記事の関連ニュース