連日の猛暑と熱帯夜。体調を崩している方もいるかもしれません。夜間でも熱中症になる場合もあるため、エアコンは朝までつけっぱなしがおすすめ。でも、涼しくて電気代が安い手段があるとしたら?(あるとは言ってない)。今回は、そんな可能性を模索するお話です。
サンコーが発売した「冷感ひんやりマット」は、マットの中に冷水を循環させ、表面をクールに保つアイテム。価格は2万1000円と、この手のアイテムとしては安価です。今回はこれを試用しました。
モノが寝具ですから慎重さも必要です。例えば駆動音がうるさければ寝られませんし、万が一ベッドの上で水漏れでも起きたら大変。というわけで、家人に寝室を追われ、仕事部屋に別途テスト環境を構築することにしました。布団です。
セットアップは、さほど複雑ではありません。マットから伸びる2本のパイプを「水冷機」と呼ばれる本体(以下、本体)の背面に接続したら、後は電源と水の確保くらいです。
本体はUSB給電ですが、付属のケーブルが短いので、手持ちのモバイルバッテリーを使いました。Ankerの「PowerCore Slim 10000」という製品です。
先ほど本体のことを「水冷機」と書きましたが、ヒートポンプやペルチェ素子といった冷やす機構を持っているわけではありません。水を循環させるポンプを動かすだけなので、消費電力はわずか6W。電気代は1時間あたり約0.2円です。
ただ、本体で冷却しない代わり、付属の「保冷パック」に水を入れて凍らせ、それをタンク内に入れておかなければなりません。電気代を正確に出すなら、冷凍庫で使用した分も加える必要があります。
水槽に入れる水は1.5L程度で、水が入っていないと本体の電源が入らない仕組みになっています。次に保冷パックを入れたかったのですが、製品が届いたばかりでまだ凍っていません。そこで、冷凍庫にあった保冷剤をいくつか水槽に投入しました。
これが間違いでした。
電源投入後、最初は25℃を示していた水温計の数字はみるみる下がり、3分後には12℃、5分後には6℃になりました。
マットはもう冷え冷え。中に氷水が通っているようなものなので、当然といえば当然ですが、これでは冷たすぎて寝られません。呆然として眺めていると、マットの表面に結露が……。どうしてこうなった。
ただ、この失敗を通じていくつかの知見を得ました。まずマットのかなり端に近い部分まで、ちゃんと冷えることが確認できました。ポンプの駆動音もほぼ聞こえません。その点では安心して寝られそうです。
結局、保冷剤をいくつか取り出し、水を足して水温を15℃程度まで上げ、さらにマットの上にタオルを2重に敷いて就寝しました。この日は熱帯夜でしたが、普段は冷房27℃設定のエアコンを、除湿(28℃)に変えても問題なく就寝できました。
起床後にモバイルバッテリーを確認したところ、残量表示はまだ1つ光っています。1万mAhあれば一晩は問題なく使えるでしょう。
もっとも、水冷マットが朝まで冷えていたかというと、それは違うようです。ポンプは動いていて、水は流れ続けているものの、水槽内の保冷剤はふにゃふにゃ。水温は26℃まで上がっていました。
暑さで起きたわけではないので、水が巡る分はちゃんと涼しかったのでしょう。それでも、冷えた状態がどれだけ続くのかは気になるところ。次は冷たさの持続時間を調べてみます。
●保冷パックは3つくらいでちょうど良い
今度は、付属の保冷パックで試してみます。水槽に保冷パックを3個入れて動かしたところ、人が寝ている状態でも水温22~23℃で安定しました。このくらいの温度でも十分涼しいです。
外気温は30℃。背中がひんやりして心地よいので、エアコンはオフにして、扇風機を動かします。子どもの頃、涼を求めて体育館の床に寝転がったことはありませんか? そんなイメージです。
水温は、1時間30分を過ぎたあたりで24℃、25℃と上がり、冷たさを感じなくなりました。水槽を確認すると、保冷パックの中身は完全に水。3パック&真夏日&エアコンなしの環境では、90分程度が冷えている時間の目安といえそうです。昼寝にはちょうどいいかもしれません。
保冷パックは11個(同時に使えるのは10個まで。1個は予備)付属しているので、交換して使用時間は延ばせます。ただ、就寝中は自分で保冷パックを交換できないため、冷えるのは入眠時のみということに。エアコンの代替にはならないことが分かりました。
最後に全体を通じて、この製品の難点を2つほど。まず、付属の保冷パックです。“ふた”がネジ式ではなく、力を入れてはめ込む形のようですが、固すぎてはまりません。何かコツがあるのでしょうか。
もう1つは、水冷式なので仕方ない面もありますが、メンテナンスの煩雑さです。水は放置するとくさるので、毎日のように入れ替えなければなりません。電源ケーブルを外し、本体を斜めにしてバケツや大きな洗面器に水を移す方法が楽だと思います。
また長期保管する場合は、本体とマットをつなぐチューブを外し、マット内の水も排出する必要があります。水抜きポンプは付属しています。
少し面倒な点もあるサンコーの「冷感ひんやりマット」ですが、マット全体がしっかり冷えて、駆動音はほぼ聞こえず、モバイルバッテリーでも動く(=設置場所を選ばない)など、かなり使い勝手は良いと思います。水温調節さえ間違えなければ、エアコンの風とはひと味違った心地よさを提供してくれるでしょう。個人的には、エアコンをオフにして、扇風機と水冷マットで涼む時間を作りたいと思っています。