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絡まったケーブルを解くために“最適な振る速度”は? 米国の物理学者が発見

ITmedia NEWS 2024年7月25日 8時5分

 米ジョージア工科大学と米スタンフォード大学、米MITに所属する研究者らが発表したプロジェクト「How to Extract a Fiber from a Tangle?」は、複数の糸が絡まった塊から1本の糸を解きほぐす最適な方法を提案した研究報告である。

 この研究は、複数本が絡まったネックレスや机の引き出しに眠る古いケーブルの束から特定のネックレスやケーブルを取り出す最適な方法を探るものである。研究チームは、多くの人が直感的に行う、1本のケーブルをつかんで振るという方法を最適化することを目指した。

 実験では、糸の塊を使用し、その中の1本だけを上下に振動するロボットに取り付けてさまざまな振動数で実験を行った。

 実験の結果、糸を最も速く引き抜く方法は、糸が上方に引っ張られる間に絡まりの重心が重力で下降する時間を最大化することだと判明した。これは、振動数が適切な場合に実現される。

 振動が遅すぎると、上昇時に糸に十分な張力がかからず、糸と絡まりが一体となって上昇してしまう。逆に速すぎると、糸の上方への動きが絡まり全体に伝わる前に方向が変わってしまい、絡まりの重心がほとんど動かなくなる。

 具体的には、低周波(毎秒数回程度の振動)では、ピストンに取り付けられた糸が塊と一緒に動くため、絡まりは解けなかった。一方、高周波(毎秒37回以上の振動)でも塊は絡まったままだった。この場合、振動のエネルギーが塊全体の減衰振動に分散され、特定の糸を引き出す力が弱まったためである。

 しかし、毎秒約17回の振動では、塊がより不規則に跳ね動き、それぞれの動きが糸を少しずつ引っ張る効果をもたらした。これらの小さな力が蓄積されることで、最終的に糸が塊から解き放たれた。

 この研究は、米国で開催されたアメリカ物理学会(APS)における「ソフトマター・ギャラリー」コンペティションで受賞を果たした。

 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2

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