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水族館で新種の甲殻類発見 その名は“ランマアプセウデス” 特徴は雌雄(男女)同体→「らんま1/2」から命名 高橋留美子さんも公認

ITmedia NEWS 2024年8月1日 12時5分

 北海道大学大学院理学院修士課程の松島吉伸さんと同大学大学院理学研究院の角井敬知講師の研究チームが発表した論文「Apseudes ranma sp. nov.(Tanaidacea: Apseudidae) found in a public aquarium, with notes on phylogeny and a presumptive stridulatory organ」は、水族館の水槽から新種の甲殻類を発見した研究報告である。

 水族館の水槽から思いがけない新種の発見があった。研究チームが、名古屋港水族館の水槽内に生息していたタナイス目甲殻類が、これまで知られていなかった新種であることを明らかにしたのである。この新種は「Apseudes ranma」(ランマアプセウデス)と命名された。

 この生物は2009年に角井講師が発見した。水族館の水槽には、ライブロックや底砂などとともに意図せず持ち込まれる小さな生物がしばしば存在する。ランマアプセウデスもそのような「故郷知れず」の種の一つであった。発見以来、研究室で継代飼育され、さまざまな研究に用いられてきたが、分類が非常に難しいグループであったため、これまで種名が確定されずにいた。

 今回の研究では、詳細な形態観察とDNA配列の解析が行われ、この生物が既知の種とは異なる特徴を持つことが明らかになった。特筆すべき特徴として、同時的雌雄同体であること、つまり1個体が雌雄の生殖器官を同時に持つことが挙げられる。

 この特徴にちなんで新種名は、高橋留美子さんの漫画「らんま1/2」の主人公・早乙女乱馬から取られた。男性でありながら女性にもなりうるキャラクターの特性が、この生物の特徴と重なったのである。ちなみに、高橋留美子さんからは許可を得ている。

 さらに興味深いのは、この新種のハサミ型の脚(鋏脚、きょうきゃく)の内側に発見された特殊な構造である。基節という部分に、先端がコブ状になった筒型突起と多数の隆起列からなる領域が見つかった。この構造は左右の鋏脚に存在し、互いに向かい合っている。研究チームは、この構造が摩擦音器、つまりすり合わせて音を出す器官である可能性があると考察している。

 軟甲綱(なんこうこう)という4万種以上を含む大きなグループにおいて、同時的雌雄同体の種は非常に限られている。ランマアプセウデスの発見により、軟甲綱における性表現の進化史研究に新たな視点がもたらされる可能性がある。また、摩擦音器様構造の機能に関する研究も進展が期待される。

 Source and Image Credits: Matsushima Yoshinobu, Kakui Keiichi.Apseudes ranma sp. nov.(Tanaidacea: Apseudidae)found in a public aquarium, with notes on phylogeny and a presumptive stridulatory organ.

 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2

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