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6年ぶり登場、光学60倍ズーム「LUMIX FZ85D」でスマホでは難しい写真を撮ってみよう

ITmedia NEWS 2024年8月3日 13時52分

 懐かしいスタイルのコンパクトデジカメが復活した。デジタル一眼っぽいデザインの超高倍率ズーム機。とにかく超望遠、という分かりやすいスタイルは、一時期当たり前のように各社のラインアップにあったものだが、コンパクトデジカメ市場の衰退に伴い姿を見なくなっていた。

 もはや、レンズが「うにーっ」と伸びてくる超高倍率ズームカメラを見たことがない人もいるんじゃないかという時代にパナソニックの「FZ85D」がふいに出てきたのである。

 末尾にDがついているのは「FZ85」のマイナーチェンジモデルだから。FZ85の発売は2017年……6年前だ。

 なので最新の技術を使ってイチから設計したバリバリの最新カメラというわけじゃない。使って見ると、昔を知ってる人ほど懐かしさを覚えるというか、ちょっと古いなって感じるところもあるんだけど、じゃあ今の時代にFZ85をFZ85Dとして復活させた意味はないのか、というとそんなことはない……と思う。

●20-1200mm相当の60倍ズームとは

 FZ85Dの特徴はなんといっても60倍光学ズーム。しかも広角端が20mm相当とかなりの超広角なのだ。なので望遠に強いだけじゃないのである。

 面白いので最初に両極端なヤツを。20mmから1200mm相当ってこのくらいの差があるのである。

 レンズは20-1200mm相当でF2.8-5.9。1200mm相当でF5.9に抑えてる。もちろん手ブレ補正はあり。

 実焦点距離は3.58-215mmとなる。

 センサーは1810万画素で1/2.3型。センサーサイズとしては大きくはない。昔ながらのコンパクトデジカメのセンサーだ。

 像面位相差センサーではないのでAF速度はそこまで速くない。こっちへ走ってくる被写体を捉えつつけるとかそういうガチな撮影にはちょっとつらい。

 超望遠仕様なのでグリップはしっかりしており、シャッターボタンのところにズームレバーがある。

 撮影モードダイヤルの脇に電源ボタン。

 上面のFn1とFn2の割当はFZ85からちょっと変えてある。

 Fn1はズームバック機能に割り当てられた。これはちょっと新しい点。

 1200mmともなると慣れてないと被写体をぴしっと捕まえるのは難しいけど、そのときはこのボタンを押すと、押している間だけズームアウトしてくれるのでそこで構図を撮りたいものを真ん中に捉えてボタンを放せばいいのだ。

 背面は親指の所に後ろダイヤルがあるくらいであとはシンプル。あと、電子ダイヤルはプッシュ式になっており、デフォルトでは一度プッシュすると露出補正に切り替わるので慣れるとすごく使いやすい。

 前モデルから進化したのは、簡単にいってしまえば部材。背面の液晶モニターは、FZ85の約104万ピクセルから約184万ピクセルになった。

 さらにEVFは約117万ピクセルから約236万ピクセルに進化し、大きく見やすくなった。

 FZ85Dはもともとハイエンドモデルではないので、背面モニターは固定式だし、EVFと背面モニターは手動切換(ボタンを押して切り替える)式。

 「ファインダーを覗いて撮るのが一番快適」な仕様と思っていい。だからEVFが見やすくなったのはデカいのだ。

 そうそう、もう1つ新しくなったのは、USB端子。FZ85は2017年ものなのでUSB micro-B端子だったけど、FZ85Dは2024年仕様なのでUSB Type-Cだ。

●望遠でいろんな被写体を撮りまくってみた

 では普通に撮ってみるべし。

 いつものガスタンクから。

 望遠重視の高倍率ズーム機ながら、ワイド端は超広角20mm相当。これは広い。

 そしてめいっぱい望遠にした1200mm相当。

 ちょっともやっとしてるのは、たぶん暑さのせい。で、普段はここに避雷針や何やらの部材があるのだが、なにもない。ちょうどメンテナンスの時期にあたったせいだ。

 いきなり20mmと1200mmでは差がありすぎるよねってことで、150mm相当のも。

 続いて人物。

 FZ85Dはカメラに詳しくない人でも気軽に超高倍率を楽しめるカメラなので、今回は基本的に「iA」モード、つまりカメラおまかせのフルオートで撮っている。

 せっかくなので1200mmも。先ほどの広角端と望遠端の比較で使った、望遠端の方の写真だ。

 1200mmあればあれだけ遠い人もここまで寄れるわけである。

 ただ、イマドキのハイエンドスマホは画質もいいので、こういう高倍率ズーム機が活躍するのはどうしても望遠系になる。

 なので望遠ものをいってみよう。

 まずは望遠向きの被写体といえば、鳥。カルガモ。

 最短撮影距離は望遠端で1.5mだが、超望遠パワーでここまで寄れる。セミである。

 夏なのでヒマワリである。これは183mm相当。

 料理はさすがに超望遠で撮るものじゃないので66mm相当で。iAモードでちゃんと料理と認識されていい感じに撮ってくれた。トマトとベーコンのパスタ。

 そして、超望遠カメラを持ったら誰でも撮りたくなるのが月。

 たまたまカメラを借りている期間にそこそこ晴れた夜の満月と出会えたので狙ってみた。iAズームを使い、2400mm相当までひっぱっている。手持ちでさくっと月のアップを撮れるってそれだけでいい。冬ならもうちょっとキリッと撮れるはず。

 なお、ISO感度は最高でISO3200(拡張ISO感度でISO6400)だが、高感度には強くない。ISO1600くらいに上げるとディテールがざらついてくる。

●今だから楽しい4Kフォト

 コンパクトデジカメを幅広くラインアップに組み入れていた時代のLUMIXは、豊富なデジタルフィルターや24個もあるシーンモードなど、誰でもシーンに応じた写真を楽しめる機能を多く持っていた。

 そしてLUMIXならではの機能として、けっこう有用なのにいまひとつメジャーになりきれなかった4Kフォトも忘れてはならない。

 この4Kフォトは「1コマ1コマをあとから写真として切り出すための4K動画を撮影する」機能だ。

 動きがあるものを撮るためにシャッタースピードを速くして4:3で音声のない動画を撮る。そしてカメラ上でそれを1コマずつ見ながら、いいタイミングのコマを書き出して写真として使おう(あるいは全コマを書き出すこともできる)というもの。

 これ、830万画素サイズ(3328×2496ピクセル)になるけれども、秒30コマで連写したものが「1つの動画ファイル」になるので扱いやすいことと、そこから切り出したコマにちゃんと撮影情報が付くのがいい。

 暑い夏の日、公園の水場でムクドリたちが入れ替わり立ち替わり水浴びをしていたので、4Kフォトモードで撮影してみた。

 プリ連写モードにすると、鳥が水場に飛び込んでからシャッターを切っても間に合う。

 通常の連写機能の場合、AF追従で約秒6コマ、AF固定で約10コマの速度となる。

 FZ85DのベースとなったFZ85自体が、手軽に超高倍率ズームを楽しめるスタンダードモデルという位置付けだったので、EVFとLCDの自動切り替えがないとか、背面モニターが固定式だとか、高感度に弱いとか、AF速度はイマドキのカメラに比べると速くない、などがあるけれども、パナソニック公式通販サイトで6万4500円とイマドキのデジタルカメラとしてはすごく廉価で買いやすい価格だ。

 昔みたいに超高倍率ズーム機を各社が廉価モデルからハイエンドモデルまで複数そろえるって時代はもうこないだろうから、スマホでは無理な超高倍率ズーム機という面白さや便利さを味わうにはいいし、写真や動画も撮れるデジタル望遠鏡的に遊んでもいい。

 広角系の写真は手持ちのスマートフォンで、望遠系が欲しい時はFZ85Dで、って使い分けるのはありだと思うし、超望遠の楽しさを味わうのにもいいのだ。

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