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「扇風機」+「日傘」はどのくらい冷却効果があるの? 中国の研究者らが実験

ITmedia NEWS 2024年8月9日 8時5分

 中国の西安交通大学などに所属する研究者らが発表した論文「Cooling effect of fanned parasol for mitigating outdoor heat stress」は、日傘と扇風機を組みわせた扇風機付き日傘(ファン付きパラソル)の冷却効果を調べた研究報告である。扇風機付き日傘は、傘の内側に小型ファンと安全用ネットが取り付けられており、使用時は頭上のファンが風を送る。

 先日、暑い夏を少しでも快適にするために、スポーツドリンクより効果的に水分補給が行える飲料水に関する研究を取り上げた。研究では意外な飲み物が提案されている。

 今回も猛暑を乗り切るためのアプローチとして、外出中の多くの人が活用している日傘と小型ファンの両方を導入した扇風機付き日傘に注目した研究を取り上げる。従来の日傘が直射日光を遮ることで冷却効果を生み出していたのに対し、扇風機付き日傘は日光遮断に加えて空気の動きを増加させることで、さらなる冷却効果が期待できる。

 研究者たちは、この扇風機付き日傘と通常の日傘の冷却効果を比較する実験を行った。測定地点は、立っている人の頭の高さ(地上約1.7m)で、測定項目は気温、風速、相対湿度、グローブ温度、日傘の内側表面温度。これらの測定を110分間継続して行い、評価基準として人間の熱ストレスを評価するための統合的な指標「Universal Thermal Climate Index」(UTCI)を用いた。

 実験の結果、両タイプの日傘とも2つの段階(ステージIとII)で異なる冷却効果を示すことが分かった。ステージIは使用開始から最初の10分間で、日傘の表面材料に蓄えられた冷却エネルギーが機能する。ステージIIはそれ以降の期間である。

 ステージIでは、通常の日傘は基準ケースと比較して6.7℃低下した一方、扇風機付き日傘は8.9℃下がった。ステージIIでは、通常の日傘は3.6℃低下し、扇風機付き日傘は5.5℃低下した。つまり、扇風機付き日傘は通常の日傘よりも、ステージIで約1.3倍、ステージIIで約1.5倍の冷却効果があると判明した。

 これらの結果は、扇風機付き日傘の冷却効果が通常の日傘よりも優れていることを示した。研究チームは、この冷却効果を「直接的効果」と「間接的効果」に分類した。

 直接的効果は、扇風機によって生み出される気流が直接的に体感温度を下げる効果である。この効果は、ステージIで4.3%、ステージIIで18.9%の冷却効果を高めた。一方、間接的効果は、扇風機が日傘内部の空気循環を促進し、日傘内部の温度上昇を抑制する効果である。この効果は、ステージIで28.0%、ステージIIで34.8%の冷却効果を高めた。

 つまり、扇風機付き日傘の優れた冷却効果の大部分(ステージIで86.7%、ステージIIで64.8%)は、この間接的効果だと分かった。

 研究チームは、扇風機付き日傘が通常の日傘の2つの欠点を克服していることを発見した。1つ目は「風遮断効果」で、通常の日傘が周囲の風を遮ってしまう問題で、2つ目は「熱滞留効果」で、日傘の下に暖かい空気がこもって滞留してしまう問題だ。扇風機付き日傘はこれらの空気循環を促進し、日傘内部の気温上昇を抑制していると分かった。

 Source and Image Credits: Sheng Zhang, Dun Niu, Doosam Song, Yongjun Sun, Chao Huan, Zhang Lin. Cooling effect of fanned parasol for mitigating outdoor heat stress. Solar Energy, Volume 259, 2023, Pages 338-347

 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2

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