Infoseek 楽天

ガッチリとピントが合うスマートグラス「VITURE Pro」の使いやすさはもっと知られるべき

ITmedia NEWS 2024年8月31日 14時20分

 近年、スマートグラスは急速に進化し、いよいよ日常生活でも活用シーンが想像できるようになってきました。例えば動画視聴。スマホや配信サービスがこれだけ進化したのですから、外出先でも自宅の大画面テレビと同じような体験をしたいと考えるのは自然なことです。

 ただ、実際に購入するとなると、どの製品にすればいいのか、悩むところ。そこで今回は、現在購入できるスマートグラスの中で、私が一番バランスが良いと思った「VITURE Pro XRグラス」を試用してみることにします。

 気に入った点を具体的に紹介すると、1)今時のスマートグラスらしい、やや大きめのサングラス程度の見た目、2)十分期待できるディスプレイスペック、3)ケーブル1本だけで利用可能、4)スマホ、タブレット、PC、ゲーム機での利用が可能、そして、5)限定された範囲ではあるが視度調整も可能、という点です。

 それでいて、本体価格は10万を大きく下回る7万4800円です。また、本格的に使い倒す利用シーンが決まれば、環境を拡張するオプション品も用意されています。

 パッケージを開いて関心したのはケースです。VITURE Proを保護するだけではなく、ふたの部分にケーブルを収納できるようになっています。このケーブルはこれがないとどうにもならない大事なパーツですから、とにかく本体と常にいっしょにあるように収納ケースが誘導してくれているわけです。なお、このケーブルがマグネットで脱着できるのは最高です。みんなこの方式にすべきです。

 スマートグラスのキーファクターとなるディスプレイ性能についてもご説明しておきましょう。

●VITURE Proの主なスペック

- ディスプレイ:ソニーセミコンダクタソリューションズ製OLEDパネル

- 解像度:フルHD(1920×1080ピクセル)

- 輝度:4000nit(実効輝度1000nit以上)

- リフレッシュレート:最大120Hz

- 視野角(FoV):46度

- 視度調整:0.00Dから-5.00Dまで

- 重量:約79g

 実は、この手のメガネ型ディスプレイはそこそこに歴史があります、でもこれまでのものは、こういってはなんですが、一応見えることは見えるよね、というレベルのものでした。その点、VITURE Proにおいては、うたい文句となっている「画面サイズ約135インチ相当」というのは、ちょっと盛ってるかなと思う部分がないわけではないですが、高精細な表示については、環境次第ではこれがベストチョイスになるレベルと言っていいレベルです。

 さらにそれが卵1.5個以下の重さなのですから、これは使えると思うわけです。今の世代のスマートグラスはここまできているのだなということを改めて認識しました。

 輝度の4000nitという数字だけ見てもよく分からないと思いますが、要するに屋外での使用で問題ないレベルです。さらにワンプッシュでいわゆるサングラス状態する電子調光機能(遮光率は0.5%と40%の2段階)もあるので、画面表示のためのサングラスカバーのようなものも必要ありません。VITURE Proをかけたままで、外を確認することもストレスなくできます。

 メガネ型ですから、頭に固定するのは挟み込むツルと鼻だけです。中でも重要なのが鼻当てです。なぜなら、ここが顔にマッチしていないと、画面そのものがまともに見えなくなってしまうからです。今回、同梱されていた4種類の鼻当てを全部試してみましたが、私の顔に合ったのは4つのうちの1つでした。

 そして、鼻当ての調整が終わって、同時に結局ここが一番大事なポイントだったということが分かったのが、視度調整でした。

 この視度調整、調整できる範囲は0.00Dから-5.00Dとなっており、カバーしている領域は軽度近視の範囲です。それ以上の近視の場合は、レンズフレームを追加することで対応するのですが、近視の場合と関係なく、この視度調整は大事な機能でした。

 まず、軽度近視の場合は、本体の調整機能だけで、快適なガッチリとピントが合った状態を作り出すことができます。そして、同時にこれは他の人と共有できることも意味しています。つまり、家族で1台のような運用も可能です。

 それ以上の近視の場合は、別途調整のためのレンズが必要ですが、それでも実はスマートグラスのような近い距離で見る場合、見るもの・その日の体調・朝と夜などで、レンズだけではカバーしきれないより細かい調整ができるとのに越したことはないわけです。

 つまり、高精細な画像とそれを見るための視度調整、この2つの要素がかみ合うことで、VITURE Proでの体験というのは、ここにお金をかけてもいいというレベルになっています。実際に視聴したもので、この話をすると、今時の映像作品、特にアニメでは、光の入り方やボケの移動、強弱などが演出手法として多用されています。また、高精細向けの制作が主流となり、細い線で繊細に描写されることも増えています。

 こういった細かい変化を敏感に感じ取る部分においては、家での大きな画面での視聴を上回る時もありました。この要素、Netflixでアニメ描写の名作として知られる「負けヒロインが多すぎる!」の第1話と「葬送のフリーレン」の第9話で確認したのですが、もう何回も見ているのに気づいたら両方とも最後まで見てしまっていたほどです。それほどまでに、VITURE Proでの視聴体験は高精細だからこそ分かる部分で没入感があり、新鮮だったのです。「このシーン! こんなところまで描写してたのか!」と驚くことが度々ありました。

 そして、なぜこんなことが起きるのかというと、繰り返しますが、視度調整がいい働きをしているわけです。従来の大画面テレビでは、画面サイズは大きくなりますが、視聴距離も遠くなるため、どうしても微細な変化に気づきにくくなります。私自身がそうですが、老眼が始まってくると、どうしても人の能力としてのピント調整の部分弱くなってきていますから、余計に差を感じることになった部分もあるでしょう。

 昼間にデスクで試したときと、夜ベッドで試したときも、やはり視度調整は少しいじりました。でも、そうすることで、常に鮮明な映像を楽しむことができるのであれば、このひと手間はむしろ喜んでやるというものです。まるで自分の視力に完璧にフィットした専用デバイスを使っているかのような快適さがあります。

 VITURE Proでは、「SpaceWalker」というスマートフォンアプリが用意されています。ファームウェアアップデートもこのアプリ経由になるので、インストール必須ですが、SpaceWalkerだけで全部できるというものではありません。

 SpaceWalkerは要するに仮想ディスプレイを実現するためのアプリなので、たくさんの画面を表示したり、2Dと3D表示を切り替えたりするのは楽に使うことができます。ただ、ブラウザはそのアプリ内のものを使う必要がありますし、各種ビューワーもありますが、ここに関しては普段スマホで使っているものを使う方が楽です。

 一応、フォローすると、SpaceWalkerを起動するとスマホをそのままトラックパッドのように使うことができるので、使い勝手そのものは決して悪くありません。マルチディスプレイも最初はびっくりするレベルです。また、グラスは外部を見える状態にして、ディスプレイを縮小表示にして四隅のどこかに配置することができるアンビエントモードと呼ばれる機能は、これはこれで究極のながらツールとしてニーズがあるはずです。

 ただ、日々使うとなると、スマホの外部ディスプレイとして快適に使うことができれば、それ以上のことはないわけですということです。なにしろ、いつものアプリがそのまま使えますから。そして、VITURE ProはSpaceWalkerを起動しなくても、USB-Cケーブルを差すだけで、スマホの外部ディスプレイとして、ミラーで使うことができます。

 また、これはGalaxyユーザー限定の話になってしまうのですが、Galaxyには以前からスマホに外部ディスプレイをつなぐとスマホの機能はそのままで表示だけPC画面のようになる「DeX」という機能があります。これが実にVITURE Proと相性がいいのです。

 もちろん快適に使うためには外部キーボードが必要になりますが、VITURE Proとキーボードだけで、スマホがPCのように使えてしまうのは驚異的な荷物の少なさにつながります。なお、DeXの機能でスマホの画面をトラックパッドとして使うことができるのでマウスは不要です。この快適さと荷物の軽量化への貢献については、Galaxyユーザーには真っ先に試していただきたいです。

 最後に結論的な話をしなくてはいけないわけですが、なにか1つでもスマホに外部ディスプレイがあるともっといいのに……と思える環境が自分の生活のどこかにある人であれば、これは使えるデバイスとして、勝負していいレベルの製品です。

7万4880円という価格も、性能と使用感を考えると十分な価値があります。そしてとにかく強調しておきたいのは、この手のスマートグラスで視度調整は今後必須の機能になってくるというところです。

 なにしろ、視聴環境を拡張するための製品なのですから、この視度調整があるなしでは利用者に最適化できる範囲がまったく変わってしまいます。これは視度調整がうまくできない望遠鏡を想像すれば分かることなのではないかと思います。とにかく、スマートグラスで自分の視力にガッチリとピントが合った状態、これはぜひ一度体験してほしい世界です。

この記事の関連ニュース