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ガチ動画カメラの静止画性能は? パナソニック「GH7」を試す

ITmedia NEWS 2024年9月29日 16時35分

 LUMIX Gシリーズ(マイクロフォーサーズマウント)のフラッグシップ機GHの新モデルが「GH7」である。ただ、いわゆるデジタルカメラのフラッグシップ機と違うのは「動画メイン」の設計になっていること。

 そもそも2009年に発売された初代GHである「DMC-GH1」が、静止画のみだったG1に対し、ハイビジョン動画撮影を可能にしたモデルで、制限はあるもののフルHDにも対応。初代GHから動画がウリのモデルだったのである。ちなみにわたしが最初に買ったミラーレス一眼はその「GH1」だった。

 その後GHシリーズは動画撮影を機能をどんどん強化していき、動画も撮れるミラーレス一眼から、動画撮影がメインのミラーレス一眼となっていき、特にGH6からその傾向が強化され、一見さんが使うカメラではなくなった(という言い方はあれだけど、使いこなすにはそれなりに映像関係の知識は必要だ)という感がある。

●ガチの動画カメラならではの操作系が重要

 ボディを見ただけで、あ、これはガチ動画カメラだなと分かるのが2点。

 一つは放熱スリット。GH7は「LUMIX G9 Mark II」より分厚いのは、背面モニターがチルトフリーアングル式でやや厚いのに加え、モニターと本体の間にスリットがあるからだ。

 スリットの中にはファンが仕込まれており、右のスリットから吸気、左のスリットから排気する。長時間の動画撮影で問題となる熱対策だ。

 もう一つは前面にあるサブ動画記録ボタン。これがなかなか使い勝手がいい場所にある。手持ちであれこれ動画を撮ってみたのだが、上面の動画記録ボタンよりこっちの方をよく使ったくらい。

 センサーはマイクロフォーサーズで2520万画素。像面位相差AFを採用しつつ、読み出し速度を高速化し、ローリングシャッター歪みの低減や高速連写を可能にした。

 G9 IIと同じセンサーか、そのマイナーチェンジ版と思われる。面白いのは、G9 IIの仕様では「Live MOSセンサー」、GH7では「裏面照射型(BSI)CMOSイメージセンサー」になっていること。「Live MOSセンサー」という呼称はもう使わなくなったのかも。

 ともあれ、積層型センサー機ほどではないが、歪みはあまり気にならなくなった。

 被写体検出AFもG9 IIやS5 IIと同等に進化しており、人間や動物の他、列車やバイク、飛行機なども検出する。

 被写体検出AFを使い、AF-Cで撮影した電車。招き猫ラッピングだったけど、車体の目や鼻には目もくれず、ちゃんと列車のフロント部分を捕まえてくれた。

 動画がメインのモデルだが、基本的にはデジタルカメラであり、上から見ると動画に特化してるわけじゃないのが分かる。深いグリップの上面にはドライブモードや撮影モードダイヤルがあり、そこは普通のハイエンドミラーレス一眼だ。

 ただ、赤い動画撮影ボタンと、その上にオーディオ情報表示ボタンがある。動画撮影ボタンは押しづらい位置だと感じたが、撮影モードを動画にするとシャッターボタンでも録画できる。これはよい。

 オーディオ情報表示ボタンを押すと、画面にオーディオ関連の設定とレベルが表示され、撮影前にオーディオのチェックを行うことができる仕様だ。

 背面はフォーカスモードレバーとAFモードボタンが一体化したLUMIXならではのデザイン。

 ボディのデザインや操作系はGH6と同じと思っていい。

●まずは写真を撮ってみる

 と、プロ仕様の動画撮影機能を強化した本格的なカメラであるが、ここではいつものようにデジタルカメラとしての側面をチェック。

 基本ISO感度はISO100で、最高でISO25600。

 とりあえずいつものガスタンク。レンズは標準ズームの12-60mm F2.8-4.0。

 ディテール描写もすぐれている。iダイナミックレンジをオフで撮影したからかコントラストは高め。

 では感度を上げてみる。

 ISO3200で夜景。F8まで絞り、1/8秒で撮影した。

 さらに高感度に。ISO12800まで上げて、室内の猫を。

 レンズは35-100mm F2.8。35-100mmというのは35mmフルサイズでいう70-200mmm相当の画角になる。

 被写体検出は動物で。マイクロフォーサーズ機としては高感度ながらディテールまでしっかり出ていてよい。

 マイクロフォーサーズ機はセンサーサイズが小さいので高感度に弱いと思われがちだが、昔に比べるとかなり性能は向上している。GH7はボディこそ大きめだが、レンズがコンパクトに収まる分、非常に使い勝手がいいのだ。特に35-100mmでF2.8のレンズがこのサイズに収まったのは良い。

 100mmでF2.8なのでボケもそれなりに楽しめる。

 超広角レンズの8-18mmF2.8-4.0はコンパクトな超広角レンズ。

 チルトフリーアングル式のメリットを生かしてこんな真上から超広角写真を撮ってみた。

 広角で動画を撮りたいとき、手ブレ補正を強にすると画角が約1.25倍と少し狭くなるので、超広角ズームは動画時もメリットが大きい。

 連写は像面位相差AFが使えるようになったことと、センサーからの読み出し速度が高速になったことで、AF追従で秒60コマを達成(AF固定なら秒75コマ)。プリ連写も使える。

 障害馬術競技を撮ってみたが、障害を越える瞬間を完璧に捉えてくれた。

 被写体検出AFやAF-C時の追従性能はいち早く像面位相差AFを取り入れた他社のハイエンド機に比べるとやや不安定なところもあるが(特に暗所で感じた)、かなり快適だ。

 昨今のパナソニックのカメラといえば、画作り。

 特にモノクロ関係が充実しているので「LEICAモノクローム」で1枚。

 もちろんリアルタイムLUTにも対応。

 LUMIX S9のレビュー時に作成したLUTをスマホ経由で転送し、撮ってみたのがこちらだ。

 様々なLUTを当てられるのはいいけれども、もうちょっとシンプルな操作で(S9ほど簡単に、とはいわないけど)実行できるとうれしかったかも。

●最後に動画にも挑戦

 少しは、動画の話も。動画は最高で5.7K/30pに対応。Apple ProResRAWでの内部記録もできる(CFexpressカード時)。

 4Kなら120fpsまで。

 出力先がCFexpressカードかSDカードか外付けのSSDかでも使えるビットレートが変わってくるので、できるだけ高速なメディアを使いたい。

 手ブレ補正には「手ブレ補正ブースト」モードも搭載。

 三脚なしで手持ちでカメラを固定した撮影をしたいときようだ。カメラ固定ようなので撮影中にパンするとちょっと動き出しが不自然になるので、通常の手ブレ補正と使い分けたい。

 リアルタイムLUT、手ブレ補正ブースト、人物・動物・列車・花火といろいろと取りそろえて約1分半の短い作例動画を作ってみた。カメラはすべて手持ちである。

 こんな感じ。

 当方、プロの映像作家ではないので細かく言及できないが、特にGH6からガチの映像作品用に拡張性やフォーマットに幅広く対応し、業務用動画撮影向きのカメラに進化しているというのは分かる。

 でも静止画用としても非常に優れているので、写真も動画もガチで撮りたいという人向けだ。

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