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「お酒のエナジードリンク割り」を飲むと脳に特有の悪影響? 若者は大人になっても影響 イタリアの研究者らが発表

ITmedia NEWS 2024年10月1日 8時5分

 イタリアのカリアリ大学などに所属する研究者らが発表した論文「Mixing energy drinks and alcohol during adolescence impairs brain function: A study of rat hippocampal plasticity」は、青年期におけるアルコールとエナジードリンクの混合物の摂取が脳機能に及ぼす長期的影響を調査した研究報告である。

 青年期のラット(生後28~37日)を4つのグループに分け、水とエタノール、エナジードリンク(レッドブルを使用)、エタノールとエナジードリンクの混合物(AMED)を2日間連続で投与し、2日休み、という形で計6回与えた。

 1回分の投与を70kgの人に置き換えると、約1.5~2杯分のエタノール12gと、エナジードリンク2缶分に相当する。これらの飲み物は、人間の若者がビンジ飲酒(短時間で大量に飲むこと)をするのと似たやり方で与えた。

 実験の結果、エナジードリンク単独投与群では、投与直後(生後40日)に自発的運動量が有意に増加。この効果は成体期(生後90日)まで持続した。また、同群では物体認識記憶の低下も見られた。

 興味深いことに、AMED群ではこれらの変化は観察されなかった。これは、エタノールがエナジードリンクの刺激効果を相殺した可能性を示唆している。空間記憶に関しては、エタノール単独投与群でのみ障害が認められた。

 次に、ラットの脳、特に記憶に重要な海馬を詳しく調べた。通常、脳細胞同士のつながりは経験によって強くなる(長期増強:LTP)が、投与を受けたラットではこの仕組みが乱れた。生後40日では、エナジードリンクとAMED群でLTPが有意に増強されていた。しかし、生後60日と90日では、全ての投与群(エタノール、エナジードリンク、AMED)でLTPの顕著な低下を観察できた。

 さらに、脳を活性化する脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質の量も変化していた。生後40日のエナジードリンクとAMED群では、BDNFタンパク質レベルの増加を観察できたが、生後60日では状況が逆転し、全ての投与群でこれらのタンパク質レベルが有意に低下した。

 これらの結果から、青年期にアルコールとエナジードリンクを一緒に摂取すると、脳に特有の長期的な変化が起こることを示唆した。特に記憶に関わる部分が影響を受け、その影響は成体期になっても続くことを示した。

 Source and Image Credits: Francesca Biggio, Giuseppe Talani, Gino Paolo Asuni, Valentina Bassareo, Marianna Boi, Laura Dazzi, Maria Giuseppina Pisu, Patrizia Porcu, Enrico Sanna, Fabrizio Sanna, Mariangela Serra, Maria Pina Serra, Carlotta Siddi, Elio Acquas, Paolo Follesa, Marina Quartu, Mixing energy drinks and alcohol during adolescence impairs brain function: A study of rat hippocampal plasticity, Neuropharmacology, Volume 254, 2024, 109993, ISSN 0028-3908, https://doi.org/10.1016/j.neuropharm.2024.109993.

 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2

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