国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJセンターは10月22日、ハッカー集団から「データを窃取した」「データの5%を公開し、1万ドルを支払わなければ残りの95%も公開する」とする脅しをX上で受けたと発表した。しかし、肝心のデータはもともと誰でも無料でダウンロードできるもので「脅迫は無意味」(生命情報・DDBJセンター)という。
脅迫を確認したのは8日深夜。「CyberVolk」(サイバーフォルク)と名乗る国際ハッカー集団から、塩基配列のデータベース「DDBJ」の情報を窃取したと脅されたという。生命情報・DDBJセンターは事態を受け詳細を調べたが、22日時点ではシステムへの不正侵入や改ざんの形跡はなかった。
DDBJは、研究者から投稿された DNAおよびRNAの塩基配列データを収集・注釈付けし、無料で公開するプラットフォームだ。ハッカー集団が窃取したと主張するデータも、誰でも無料でダウンロードできるものだったという。
そのため、脅迫後もサービスの提供は継続していた。ただし、新規に登録されたデータの反映は一部遅れており、22日中に通常の状態に戻す予定という。
データに被害こそなかったものの、生命情報・DDBJセンターは「誰でもダウンロードできるデータであったとしても、サイバー脅迫は、科学と社会をつなぐ公共事業に対する脅威であり、この行為に対し、DDBJは断固として反対する。オープンサイエンスを掲げる学術機関に対する攻撃は、世界に対する攻撃でもある。今後こうした行為を断固として許さない社会の構築にも尽力したい」としている。