麻布大学に所属する研究者らが発表した論文「Rapid formation of picture-word association in cats」は、猫が人間の言葉を予想以上に早く学習する可能性を示す研究報告である。実験では、猫が人間の赤ちゃんよりも速く画像と単語を関連付けて学習できることを示した。
研究チームは、31匹の成猫(うち23匹は猫カフェで里親募集中)を対象に、人間の赤ちゃん向けに設計した単語テストを実施。実験では、ノートPCの画面に2種類の9秒間のアニメーション画像(ユニコーンと太陽)を表示した。
同時に、飼い主の声で「ケラル」「パルモ」という架空の単語を4回ずつ発声した。猫が画面への注目を50%以上減らすまでこれを続けた。
その後、短い休憩を挟んで再度画像を表示したが、今度は半数の画像に誤った単語音声を組み合わせた。猫たちは間違った組み合わせを提示された際、画面を見つめる時間が平均で33%増加した。中には瞳孔を開いて真剣な表情で画面を注視する猫もいた。これは、猫が元の単語と画像の組み合わせを学習し、その変化に気付くことができたことを示している。
特に注目すべきは、猫の学習速度である。大半の猫は、たった2回の9秒間の提示で単語と画像の関連付けを習得できた。これに対し、1歳2カ月の人間の乳児のほとんどは、1回のレッスンで7回単語を繰り返し、15秒間のレッスンを4回必要とする。
この結果は、猫が特別な訓練や報酬なしに非常に速く単語と画像の関連付けを学習できることを示している。この発見は、身近にいる猫が、ヒトの会話に注意を向け、単語を学習している可能性を示唆している。
Source and Image Credits: Takagi, S., Koyasu, H., Nagasawa, M. et al. Rapid formation of picture-word association in cats. Sci Rep 14, 23091(2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-74006-2
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2