知的財産高等裁判所は11月7日までに、映画「シン・ゴジラ」に登場するゴジラの形状について、立体商標と認めなかった特許庁の審決を取り消した裁判例を公式Webサイトで公開した。原告である東宝は、特許庁がシン・ゴジラの商標登録を拒絶したことに対し、不服であると主張。裁判では、原告の主張を認めた。
東宝は2020年、シン・ゴジラに出てくるゴジラの第4形態の立体的形状について、特許庁に商標登録を出願。しかし特許庁は21年、これに拒絶査定を下していた。東宝はこれを不服であるとし再度審判を請求したが、24年3月にこの請求も退けられたため、5月に審決の取り消しを求めて提訴していた。
一連の登録拒絶について、被告である特許庁は「ゴジラの形状は、恐竜や想像上の動物の立体的形状の1類型にすぎない」などと主張。「テレビでゴジラの形状を使用した商品を宣伝する際、他の形状と識別できることを印象付けるように取り上げていない」「申請の際に東宝が提出したアンケートでは、ゴジラの形状と東宝の関係の認知度が分からない」としていた。
対する東宝は「ゴジラの形状は、1954年の映画『ゴジラ』に始まり、そこから派生した映画などで継続的に繰り返し、登場・使用されてきた。多くの人々の目に触れ、親しまれてきたキャラクターであり、どの作品においても共通する特徴を持っている」などと主張。商標登録を拒絶するのは誤りと指摘していた。
これらを受け、裁判所では「ゴジラに共通する形状はシン・ゴジラに登場する第4形態の立体的形状でもほぼ踏襲されている」と説明。巨大なゴジラ像が東宝の関連施設に置かれ、一般人の目に触れてきたことなども含め、10月30日付で東宝の主張を認める判決を出した。
「被告は、使用商品が掲載された雑誌の種類が少ない、書籍や展示即売会の来場者は限定されている、ゴジラ像の恒常的設置は東京都内4カ所にとどまる、アンケートにはこの商標の立体的形状と原告との関連についての質問がないなど、原告の主張立証の逐一を論難するが、ゴジラ・キャラクターの圧倒的な認知度の前ではさまつな問題にすぎない」(知的財産高等裁判所)