11月8日、M4シリーズのチップセットを搭載したiMac、Mac mini、MacBook Proが発売される。ボディーを14年ぶりに刷新したMac miniが話題だが、筆者の注目は無印のM4チップを搭載したMacBook Pro。
いつも不遇なこの“最下層MacBook Pro”だが、今回はワケが違うようだ。とりわけ、MacBook Air M1や、MacBook Pro M1 Proからの乗り換えにおすすめと感じた。M1 ProのMacBook Proユーザーの筆者から見た、最も安いMacBook Proの実力を紹介する。
●大きく立ち位置を変えた「最下層MacBook Pro」
最下位モデルのMacBook Proといえば、いつも微妙なスペックでお勧めできないモデルだったことをご存じの方は多いと思う。
M2チップを搭載の前々世代までのモデルは、多くの場合MacBook Proのボディーに、MacBook Airのアーキテクチャを詰め込んだ製品で、「Pro」の名にふさわしからぬことが多かった。
前モデルは、MacBook Airと同じM3チップを搭載しつつも、14インチのLiquid Retina XDRディスプレイ、フォースキャンセリングウーファーを備えた6スピーカー、HDMIコネクターやSDカードスロットという多彩な接続性を備えたモデルにステップアップしたが、それでもThunderbolt 4は2ポートに制限されており、接続できる外部ディスプレイも1枚だけと、M3 Pro以上のチップセットを積むモデルとは差をつけられた製品だった。
しかし、今回のMacBook Pro M4は違う。
Thunderbolt 4は3ポート、外部接続ディスプレイも6K以下を2枚まで接続可能で、上位モデルに遜色ない。
詳細は後述するが、M4チップセットの性能向上は著しく、M3からの買い替えはもちろん、M1 Proなど、従来の上位モデルからの買い替えにもフィットするだけのパフォーマンスを持っている。
2024年の“最下層MacBook Pro”は、Apple Intelligence対応の底上げのおかげで、非常にお買い得なモデルに成長しているのだ。
●M1 Proから“クラスダウン”でも乗り換えに最適
実は筆者はM1 Pro搭載のMacBook Pro 14インチモデルを使っている。
基本的にはテキスト作業が中心で、写真も2Dのみ、動画を編集することもあるが、YouTube用なのでそれほど高解像度のものではない……という筆者の場合、現状のモノサシでいえば、さほど高い性能は必要としていない。
しかし、資料をたくさん広げて原稿を書くので「2枚以上の外部ディスプレイ接続」は譲れない。そんなわけで、M1 Pro搭載のMacBook Pro 14インチモデルをチョイスした。M2 Pro、M3 Proが登場したが、そもそも処理能力的にはM1 Proで十分だったので、買い替えずに今に至っている。
しかし、M1 Pro搭載のMacBook Pro 14インチも発売から3年。Apple Care+も切れたし、バッテリーも劣化して少し持続時間も短くなってきた。今、設定から「バッテリーの状態」の「大容量」を見たら85%になっていた。「最大11時間のワイヤレスインターネット」という性能だったから、それが9時間あまりになっている勘定だ。
筆者が、今回のM4 MacBook Proで一番注目してるのは、Thunderbolt 4が3ポートになり、外部接続ディスプレイも6K以下を2枚まで接続可能になったというポイントだ。これなら筆者のニーズに合う。ディスプレイの最大輝度が上がったLiquid Retina XDRディスプレイ、フォースキャンセリングウーファーを備えた6スピーカーという、ディスプレイとオーディオの性能の高さもそのままだ。
HDMIポートやSDカードスロットも利用できる。デジタルカメラで取った映像を取り込むのにSDカードスロットは欲しいし、人前でプレゼンテーションする時に、アダプターを介してしかHDMIを接続できないと万が一接続にトラブルがあった時に困る。これらのポートがあることは筆者にとっては地味に重要なのだ。
さらに、ベンチマークを取ってみるとご覧の通り。M4無印の性能は、あらゆる面においてM1 Proの性能を超えているのだ。
筆者も使ってるM1 Proに対して、CPUシングルコアで約65%、CPUマルチコアで約69%、GPUメタルで8%の性能アップしている。隔世の感があるといってもいい。
ちなみにこれは単にチップ性能だけでなくコア数の違いも影響している。筆者のM1 Proは高性能コア6、高効率コア2の8コアモデル(高性能8コア、高効率2コアの上位モデルもある)だったのだが、M4は高性能コア4、高効率コア6の10コア。
無印のM3と同じく高性能コアは4コアだが、電力効率の高い高効率コアを増やして、電力消費を抑えたままより多くの処理を行えるようになっているのだ。
また、M1 ProのGPUは14コア、M4は10コアと、GPUのコア数は大きく減っているのだが、それでも処理能力において上回るほど性能が向上しているのだ。
●Geekbench AIでの性能は驚異的
25年以降、日本語でも使える予定の「Apple Intelligence」に欠かせないのがAI処理に特化した「Neural Engine」だ。この性能を計測できるGeekbench AIによると、M4はM1 Proと比べて「Single Precision」(単精度)において130%、「Half Precision」(半精度)において224%となっており、「Quantized」(量子化)に至っては316%、つまり3倍以上の性能向上を果たしているのだ。
おそらく、M1 Proの時にはまだ具体化していなかったApple Intelligenceが、M4開発の時には話が進み、Neural Engineの開発にリソースが割かれたのだとは思うが、これだけ性能が向上すると、Apple Intelligenceの利用がかなり快適になると考えられる。ここの性能が足りないと、Apple Intelligenceがバックグラウンドで動いている時などもパフォーマンスに影響する可能性がある。M4はそういう場面でも快適に使えそうだ。
●欠点を埋め、美点を伸ばしたモデルチェンジ
MacBook Pro M4はあらゆる面で、MacBook Pro M1 Proを上回っており、リプレースとして購入しても後悔のない製品だ。使い始める時にTouch IDの認証をするだけで感じる処理の速さがある上、それだけではない、実際に触ってみるとわずかだが重量も軽く(スペック上50g軽い)なっている。
さらに、iPad Proでも使われているほどのM4の省電力性能と、MacBook Proのサイズを生かした巨大バッテリーのおかげで、バッテリー持続時間は24時間(ビデオストリーミング)である。若干劣化してしまった筆者のMacBook Pro M1 Proとは大きな差がある。
ここのところの円安で、M3 ProやM4 Proモデルはかなり高くなってしまっているが、このMacBook Pro M4は16GBメモリ、512GBストレージで24万8800円と、クラスダウンすることで価格を抑えられる。
特に、Apple Intelligence向けに、価格そのままで最小メモリ容量が8GBから16GBに増量していることもあり、最安モデルでもスペックは十分だ。
また、2万2000円プラスすることで、Nano-textureガラスのモデルも選択できる。ちょうど試用機がこれを搭載していたのだが、ガラス表面に微細な加工を施すことで、写り込みを大幅に抑制できるようになっている。(例えば、背後に窓や電灯があるなど)利用シーンよっては2万2000円の価値のある仕様だ。
●M4になったMacBook Airが出るのでは?
一方で、MacBook AirのM4モデルを待てばいのではないかという議論はあると思う。Airの方が軽く、そして安いからだ。
しかし今回、新型MacBook Proと併せて、最低メモリを16GBにアップしたM3モデルが出たということは、すぐにM4モデルが出る可能性は低いと考えられる。Appleの商品サイクルからすると、12~2月に出るとはちょっと考えにくい。となると3月か6月あたりだろうか。ある程度引っ張るとなると、今度はM5チップの姿も見えてくる。もしいま必要なのであれば、M4のMacBook Proを買った方が良いのでは、と筆者は考える。
再び円安傾向が強くなってきている中、「Proが欲しいけどだいぶ高くなった」という声もあるだろう。手頃かつ十分に性能アップしたM4 MacBook Proは、幅広いモデルからの乗り換えにおすすめできる製品だ。