Xが表示する広告の品質が低下しているという声が、11月下旬から相次いでいる。アダルト系の広告や情報商材を宣伝するような広告が増えているとの声が上がっており、一部ユーザーからも反感が強まっている様子だ。記者のアカウントでも、同じタイミングから同様の広告が増えている体感がある。特に、以前は皆無だったアダルト系・情報商材系の広告が急増した感覚があり、正直あまり快適ではない。
一方で、同僚や知人からは「そうでもない」との声も聞かれる。そこで、記者や知人が使っているいくつかのアカウントで「おすすめ欄」に流れてくる広告が、何を宣伝しているものなのか集計。広告表示の傾向を確認してみた。もちろん個人への最適化の影響も少なからずあるだろうが、集計結果からは一定の傾向が見えてきた。
●3アカウント500件の投稿を集計
今回の検証では、パーソナライズの影響をできるだけ避けつつ広告の内訳を確認するため、3つのアカウントを使用した。1つ目は20代男性の記者が個人的に使っているアカウント、2つ目は仕事でのやりとりに使っているアカウント、3つ目は知人の20代女性が使っているアカウントだ。
2つ目まではそれぞれスマートフォンアプリ(iOS)版で流れてきた広告100件とブラウザ版(PCから閲覧)で流れてきた100件、3つ目のアカウントについてはiOS版で流れてきた広告100件の計500件を調査した。3つ目のアカウントをPCで調査しなかったのは、本人の許可が得られなかったためだ。
1つ目のアカウントは、普段趣味のゲームや作曲、その他“おもしろ系”の投稿を見たり、記事のネタを集めたりするのに使っており、フォローしているアカウントもそれに準ずる。2つ目のアカウントは、外部のライターや知り合いの広報と連絡を取るときなどに使っているもの。特定の投稿を見るためには使っておらず、フォロワーは同僚やIT関連企業の広報、過去に一緒に働いたことがある人などが多い。3つ目のアカウントは、知人の女性が同性の友人などとやりとりするためのアカウントという。
●各条件の集計結果
各アカウントに出てきた広告の内訳は以下の通りだ。情報商材やアダルト系の広告については太字で表記する。なお、件数が多く内容が膨大なため、結論だけ確認したい場合はサマリーの確認をおすすめする。
個人使用アカウント(アプリ)に出てきた広告
1つ目のアカウントをiOSアプリから見た場合では、不審なメルマガに誘導するインフルエンサーの広告や、アダルト画像・動画を添えた投稿などが目立った。太字の投稿は全体の4割超で、平和なタイムラインとは言い難い状況だった。
・インフルエンサー(不審なメールマガジンなどに誘導するもの):23件
・インフルエンサー(企業とのタイアップ投稿とみられるもの):14件
・アダルト画像・動画:10件
・Webメディア:8件
・不動産取引:7件
・漫画サイト:6件
・水商売のスカウト:5件
・アイドル:5件
・情報商材:4件
・恋愛マッチングアプリ:3件
・歌い手:2件
・カードローン:2件
・診断サービス:1件
・脱毛:1件
・名刺作成サービス:1件
・VTuber:1件
・ECサイト:1件
・暗号資産取引:1件
・ITセキュリティ製品:1件
・営業代行サービス:1件
・ビジネスイベント:1件
・個人の何気ない投稿:1件
・転職サービス:1件
個人使用アカウント(PCブラウザ)に出てきた広告
一方、1つ目のアカウントをPCブラウザから見た場合は、アダルト・情報商材系の広告はいくらかあるものの、iOSアプリから見た場合と比べると平和な結果に。太字の投稿は1割強にとどまった。
・動画配信サービス:11件
・ゲーム:8件
・Xの求人:5件
・インフルエンサー(不審なメールマガジンなどに誘導するもの):4件
・育毛:3件
・情報商材:3件
・不動産取引:3件
・水商売のスカウト:3件
・酒:3件
・アイドル:3件
・アダルト画像・動画:3件
・転職サイト:2件
・VTuber:2件
・漫画サイト:2件
・Webメディア:2件
・診断サービス:2件
・ホテル予約サービス:2件
・ECサイト:2件
・営業代行:2件
・電気自動車:2件
・靴:2件
・腕時計:2件
・技術書:2件
・外部SNS:2件
・シャンプー:1件
・入浴剤:1件
・キーボード:1件
・リュック:1件
・脱毛:1件
・ARグラス:1件
・栄養ドリンク:1件
・クレジットカード:1件
・FX:1件
・光回線:1件
・同人誌印刷:1件
・イラスト制作用ツール:1件
・デジタル作曲ツール:1件
・ノートPC:1件
・ライトノベル:1件
・経費精算サービス:1件
・保険:1件
・ゆうパック:1件
・家電のリサイクル呼び掛け:1件
・ハラスメントへの注意喚起:1件
・障害者支援:1件
・性風俗:1件
・インフルエンサー(企業とのタイアップ投稿とみられるもの):1件
・テレビドラマ:1件
・Xの有料プラン:1件
仕事用アカウント(アプリ)に出てきた広告
仕事用のアカウントをiOSアプリ版から見た場合では、同条件の個人利用アカウントに比べるとアダルト・情報商材系の広告は少なかった。太字の投稿は2割超だった。
・ゲーム:9件
・情報商材:9件
・包茎手術:9件
・インフルエンサー(企業とのタイアップ投稿とみられるもの):6件
・ECサイト:5件
・漫画サイト:4件
・動画配信サービス:4件
・育毛:3件
・恋愛マッチングアプリ:4件
・性風俗:3件
・バイク:3件
・ノートPC:3件
・外部SNS:2件
・アイドル:2件
・ライブ配信サービス:2件
・個人の何気ない投稿:2件
・スキマバイトアプリ:2件
・アクセサリー:2件
・カードローン:2件
・インフルエンサー(不審なメールマガジンなどに誘導するもの):2件
・宅食サービス:1件
・X有料プラン:1件
・水商売のスカウト:1件
・サウナ:1件
・アダルト動画サイト:1件
・ダイエット:1件
・セキュリティ製品:1件
・イラスト制作用ツール:1件
・脱毛:1件
・ピザ:1件
・キャッシュレス決済:1件
・塾:1件
・転職サイト:1件
・スマートフォン:1件
・フリマアプリ:1件
・靴:1件
・Webメディア:1件
・映画:1件
・ブランドバッグ:1件
・アダルトグッズ:1件
・宝くじ:1件
・ハラスメント注意喚起:1件
仕事用アカウント(PCブラウザ)に出てきた広告
仕事用のアカウントをPCブラウザから見た場合は、太字の投稿が1割未満の結果に。記者が持っているアカウントでは最も平和だった。
・動画配信サービス:9件
・ゲーム:9件
・酒:7件
・育毛:6件
・宅食:5件
・ノートPC:4件
・情報商材:3件
・ジュース:3件
・靴:3件
・Xの有料プラン:2件
・Xの求人:2件
・アダルト動画サイト:2件
・カードローン:2件
・ビジネスイベント:2件
・転職サイト:2件
・ホテル予約サイト:2件
・映画:2件
・クッション:2件
・ファッションブランド:2件
・スマートフォン:2件
・銀行:2件
・画像編集ツール:2件
・歯ブラシ:2件
・宝くじ:2件
・カウンセリング:1件
・カメラ:1件
・性風俗:1件
・インフルエンサー(企業とのタイアップ投稿とみられるもの):1件
・広告代理店:1件
・アクセサリー:1件
・菓子:1件
・イラスト制作用ツール:1件
・布団:1件
・個人の何気ない投稿:1件
・電気自動車:1件
・カラオケ:1件
・マーケティング代行:1件
・ピザ:1件
・スマホの通信プラン:1件
・髭剃り:1件
・経費精算ツール:1件
・VRヘッドセット:1件
・Webメディア:1件
・頭痛薬:1件
・SIerの求人:1件
●知人女性のアカウント
知人女性のアカウントは、アダルト・情報商材系の広告がほぼ表示されない結果に。仕事用アカウントをPCブラウザから見た場合以上に平和だったが、美容系の広告で不審なものは散見された。
・ゲーム:24件
・化粧品:16件
・ヘアトリートメント:4件
・掃除用品:3件
・Webブラウザ:3件
・インフルエンサー(企業とのタイアップ投稿とみられるもの):3件
・シャンプー:2件
・映画:2件
・ECサイト:2件
・菓子:2件
・タイヤ:2件
・口コミサイト:2件
・漫画サイト:2件
・転職サイト:2件
・ポイ活サービス:1件
・家電:1件
・テレビ番組:1件
・フリマアプリ:1件
・石けん:1件
・頭痛薬:1件
・ノートPC:1件
・Webメディア:1件
・VRヘッドセット:1件
・ファッションブランド:1件
・電子タバコ:1件
・ホテル予約サイト:1件
・スキマバイトアプリ:1件
・サプリメント:1件
・ボディソープ:1件
・ピザ:1件
・ジュース:1件
・衣料品:1件
・Web漫画:1件
・ビジネスホテル:1件
・マーケティング代行:1件
・旅行サイト:1件
・キャラグッズ:1件
・暗号資産取引:1件
・車:1件
・人形:1件
・画像生成AIサービス:1件
・美容皮膚科:1件
・ロボット掃除機:1件
・雑貨ブランド:1件
・ラジオ:1件
●500件の投稿から見えたきた3つの可能性
集計結果からは、(1)情報商材・アダルト系の広告の出やすさには個人差がある可能性、(2)PCブラウザはスマートフォンに比べてアダルト・情報商材系の広告が少ない可能性、(3)女性のアカウントはアダルト・情報商材系の広告が少ない可能性──がそれぞれうかがえる。
(1)については、記者本人としては妥当に思える。というのも、個人利用アカウントはプライベートなアカウントでもある都合上、同人作家や“夜の仕事”をしている知人のアカウント、アダルトな投稿を積極的に拡散する知人ともつながっている(ミュートやブロックもしていない)
当然、彼ら彼女らの投稿は少なからず目に入るわけで、それがパーソナライズに影響している可能性もある。故に、仕事用アカウントや知人女性のアカウントよりアダルト系の広告が多いことに違和感はなかった。もちろん、それと快不快は別の話だが。
(2)については少し意外な結果だった。アプリから閲覧している場合に比べて酒や育毛の広告が多いこともあり、PCから閲覧している場合は年齢層が高いと判断されているのかもしれない。
(3)については、アカウントの持ち主も「アダルト系・情報商材系の広告はほとんど見ない」と話しており、数字からもその傾向が明らかになった。ただ、こちらは「インフルエンサー(企業とのタイアップ投稿とみられるもの)」の広告が、他の環境で見ていたものと異なった。
記者のアカウントでは、ほとんどが有名YouTuberが上場企業や著名な外資企業とコラボレーションしている広告だったが、知人女性のアカウントでは美容系インフルエンサーを名乗るアカウントが素性の知れない化粧品を紹介するものが散見された。知人女性も「怪しい広告だと感じている」といい、単に不適切な広告の種類が男女間で異なるだけの可能性もある。
一連の結果を見るに、Xの広告については、男性のアカウントをスマートフォンアプリから見た場合など、一部でアダルト系・情報商材系の表示が増えているものの、全ユーザーに影響しているわけではない可能性がある。もちろん、そもそもサンプルが多くない他、今回の検証をしている最中にリアルタイムでパーソナライズの傾向が変わった可能性もあるので断言はできないが。
余談だが、記者のアカウントでは11月下旬、全裸の中年男性の写真が広告として流れてくる事態が頻発した時期があり、Xの広告にはめいっている。同時期に、広告表示を減らせる有料プランの割引キャンペーンが実施されていたこともあり「加入への誘導だ」とする声も聞かれたが、金を払わせるにしてももう少し気持ちよく払わせてくれないか、というのが正直な感想だ。