スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」(FGO)で、12月12日午前1時20分から緊急メンテナンスが行われている。午後4時時点でもゲームは遊べない状態で、運営企業のラセングルは午後6時ごろに続報を発表する想定だ。原因はゲームの不具合という。現状について詳しい情報が出ているわけではないが、プレイヤー側として把握できる状況だけでも、事態は大ごとそうに見える。
FGO公式Webサイトによれば、メンテナンスの原因はゲームの不具合。条件をクリアするとアイテムを入手できる仕組みにおいて、すでに達成した条件でも報酬が受け取れる不具合があったという。
FGOには「○○属性の敵を○○体倒す」といったミッションをクリアすると、ガチャ用のゲーム内通貨、いわゆる“石”(「聖晶石」という)を獲得できる仕組みがある。ここに不具合があり、過去に受け取った聖晶石を含むアイテムが受け取れるようになっていた。
アイテムもそうだが、問題は有料販売もしている聖晶石を受け取れてしまった点と、その規模にある。一部ユーザーの投稿によれば、今回の不具合で最大1500個近くの聖晶石を受け取れる状態だったという。
販売プラットフォームにもよるが、アプリストアを介する場合、FGOは聖晶石168個を9800円で販売しているので、だいたい9万円分くらいの聖晶石がタダで手に入ってしまう状態だったことになる。
アプリ調査会社の米SensorTowerによれば、2021年8月から24年7月にかけての日本の月間アクティブユーザーは100万人以上。仮に現在も100万人がFGOを遊んでいるとしたら、プレイヤーの100分の1が不具合に乗じて石を得ただけで9億円の損失になる。
ちなみにFGOは、ミッション達成で獲得可能になったアイテムを一括で受け取れる機能も搭載している。またSNSでは不具合により1500個より多くの聖晶石を入手できたとの声もあり、事実だとすると1人当たりの損失はより大きい可能性もある。
●新キャラ実装直後、タイミングも悪かった
そしてタイミングも悪かった。FGOは11日午後1時から6時にメンテナンスを実施した後、新しいイベントを開始。ガチャの目玉となる新キャラクターもリリースした。レアリティはもちろん最高で、収入源としてある程度期待もしていただろう。しかし、石を大量に配ってしまったことで、このキャラクターも容易に獲得されてしまった可能性がある。
FGOでは石30個で11回ガチャを回せる。仮に今回の不具合で1500個の石が手に入ったとすると、500回以上抽選のチャンスがあったことになる。329回抽選してもその期間中の目玉キャラクターが手に入らなかった場合には、330回目に確定でそのキャラが手に入る措置があるので、実質無料で入手できてしまった可能性もある。
さらにFGOは同じキャラを何体も集めると、その性能を強化できる仕組みもある。ガチャを何回も回し、すでに新キャラを強化したプレイヤーもいたかもしれない。
もう一つ厄介なのが、今回のイベントには「ボックスガチャ」という別のガチャも存在したことだ。ボックスガチャは上述のガチャと異なり、ゲームを遊んでためたアイテムを使うことで、キャラを成長させるためのアイテムをガチャ形式で手に入れられるもの。
一部アイテムは入手数に制限がかかっている場合があるが、それ以外は上限なく入手できるのが特徴だ。普段入手しにくいアイテムを手に入れたり、大量に消費するアイテムを集めておいたりできる。そうした性質があることから、頻繁には開催されないレアイベントとなっている。実際、前回は2023年冬の開催だったため、1年ぶりのイベントだ。
コアなプレイヤーの中にはこの機にとんでもない量のアイテムを集めている人もいる。もしかするとイベント開始に伴うメンテナンスが終わった11日18時から、緊急メンテナンスが始まった12日午前1時20分までの7時間強、アイテムを集め続けていた人もいるかもしれない。
SNSでは、石を配りすぎたとして「『ロールバック』が起こるのではないか」、と懸念する声もある。ロールバックはデータベース更新の際にエラーがある変更を取り消す操作のことで、ロールバックとなれば誤配布の聖晶石によるキャラの獲得も含め、特定期間のプレイングが全てなかったことになる可能性もある。
しかしボックスガチャに労力をかけた人をはじめとしたコアユーザーのモチベーション低下や離脱リスクを考えると、簡単にはGOサインは出せないだろう。現実に、願いをかなえる聖杯はない。果たしてラセングルはどんな選択をするだろうか。