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風呂キャンセル界隈も納得? LIXILの“布製”浴槽がマンション浴室を自由にする理由、企画した本人に聞いた

ITmedia NEWS 2024年12月15日 7時0分

 2024年の「新語・流行語大賞」のトップテンに「界隈」がランクインした。5月ごろには、風呂に入るのを面倒でやめてしまう人たちを指す「風呂キャンセル界隈」という言葉も話題になった。

 住宅機器メーカーのLIXILが2022年に行った調査によると、浴槽に毎日入る人は47.4%と半数を割っており、浴槽に週1、2回に入る人は11.5%、シャワーのみに毎日入る人は22.7%。風呂をキャンセルしないまでも、浴槽に入らずシャワーをメインとするライフスタイルが広がっている。

 このライフスタイルの変化に合わせてLIXILが11月26日に発売したのが、布製で折りたたんで取り外し可能な浴槽を備えた浴室「bathtope(バストープ)」だ。浴槽を折りたたむことでシャワールームを広く使え、さらに浴槽にも入れる。そこでbathtopeを企画開発した担当者に開発の経緯と、製品ターゲットや展望について話を聞いた。

●シャワー派の増加にコロナ禍が後押し

 bathtopeは、取り外せる布製の浴槽「fabric bath」を採用したシステムバスで、水回り・タイル国内事業で100周年を迎えたLIXILが、次の100年に向けて創設した新ブランドだ。「お風呂はもっと、自由でいい。」をコンセプトに開発された製品で、浴槽を折りたたんで収納できるため、浴室を広く使える。湯船に浸かりたいときは、浴槽を広げて壁に取り付け、お湯を張れば入浴できる。

 bathtopeの発案者の長瀬さんは、長く浴室や水回りを担当しており、さまざまなアイデアがあったと語る。

 「LIXILには、さまざまなイノベーション創発の取り組みがあります。その中で、2021年に『ミライBOX』という新しいコンセプトの公募があり、そこにbathtopeを応募しました。それ以前からライフスタイルの多様化により、シャワーだけで済ます人が増えてきていると感じていました。しかし日本人である以上、浴槽はなくせない。そんなニーズに対応できるプロダクトはつくれないかと考え、応募しました」(長瀬さん)

 2021年は、コロナ禍により在宅時間が増えたことでDIYやプチリフォームをするなど、住んでいる家をより快適にしたい人が増えてきたタイミングだった。そこで長瀬さんが生み出したのが、シャワールームと使いたいときだけ設置できる浴槽の組み合わせだった。そしてこのbathtopeは、コンセプトが評価され、ブランド創設と製品化につながった。

●スペース活用以外にもメリット

 bathtopeの製品化にあたって最も時間がかかったのは、fabric bathの素材や構造の開発だった。公募の時点で基本コンセプトは固まっていたが、実際に浴室で使うとなると手軽に折りたためる軽さと耐久性が求められる。

 「形状については、最初は夢が広がり、いろんなことができると考えていました。しかし軽さや使いやすさを突き詰めた結果、シンプルな構造になりました。また水漏れ対策や肌触りなどは、実際に試して紆余曲折しながら完成までもってきました。この布の浴槽づくりは、楽しかった半面、苦しかったところですね」(長瀬さん)

 fabric bathには、ポリエステルを中心とした柔らかい繊維と防水性のあるポリウレタンフィルムの二重構造を持つ1枚の布を採用した。これを浴室の左右の壁に引っ掛けて使う仕組みだ。

 bathtopeの浴槽は、取り外せること以外にもさまざまなメリットがある。1つは一般的な浴槽よりも広いことだ。マンションなどで採用されることが多い1200×1600mmサイズのユニットバスの場合、1200mmの短辺に浴槽が設置されるため、脚を伸ばして入浴できない。しかしbathtopeの場合、1600mmの長辺に浴槽を設置するため、脚を伸ばしてゆったりと入浴できるのだ。

 さらに節水効果もある。布製のfabric bathが体を包み込むようにフィットするため、バスタブに貯める水の量を減らすことができる。同じ1600mmサイズのFRP浴槽と比較すると、約26%の節水が可能だ。

 また戸建て住宅などに多い1坪の1600×1600mmサイズの浴室を1200×1600mmサイズのbathtopeにリフォームすると、浴室の面積を減らして洗面室側を400mm広くできる。そのスペースは、広いランドリーとして使ったり、クローゼットスペースにするなど、住宅空間の有効利用ができるというわけだ。

●bathtopeを通して「改めて浴室を考える」

 bathtopeをいまある住宅に設置するにはリフォーム工事が必要なこともあり、12月上旬時点では見積もりを行っている段階だという。残念ながら目標とする販売台数やシェアなどは非公開とのこと。

 「bathtopeは基本的に、中古マンションのリノベーション市場で、シングルやディンクス向けと考えています。そして現段階で導入してくださるのは情報感度が高いイノベーター層と考えると、対象は年間7000戸ぐらいで、その何割に使っていただけるかということですね。とはいえ、販売台数を追っている商品ではありません。

 というのもbathtopeの導入を検討した結果、他の商品が売れるという『宣伝役』のような効果も期待しているんです。ですので社内では、宣伝効果などを含めてbathtopeの目標を設定しています。さらにbathtopeをきっかけに、マンションのリフォーム市場全体を活性化できないかとも考えています」(長瀬さん)

 「LIXILには、bathtopeのような革新的な浴室製品がある」と周知されれば、LIXILブランドの認知が高まる。さらにはbathtopeを入り口として、他の浴室製品の販売につながることも期待しているというわけだ。

 長瀬氏によると、シャワーしか浴びないライフスタイルが広がったものの、浴室をシャワーだけにする例は少ないという。住宅を建てて10年、20年と住んでいく間にライフスタイルが変化するためだ。今は面倒であまり使わなくても、いつか毎日浴槽に入る日が来るかもしれないと考える。そしてbathtopeなら、普段はシャワーをメインにしながら、浴槽も利用できるというわけだ。また住宅専用の製品ではないので、ホテルなどへの導入も可能だ。法人向け需要についても「話が来たら対応する」という。

 bathtopeは、住宅空間の有効活用や節水などのメリットもあるが、「シャワーをメインにしつつ、浴槽にも入れる」という、LIXILからの新しい浴室の提案だ。そしてマンションなどをリフォームするとき、この「新しい浴室」を通して、自分がどのような浴室を求めているのか、改めて考えさせてくれる製品なのだ。

(コヤマタカヒロ)

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