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“空飛ぶカメラ”ってどう? 自撮りミニドローンを試して分かったその面白さとハードルの高さ

ITmedia NEWS 2024年12月15日 12時20分

 誰が見てもドローンである。手のひらサイズのミニドローン。

 でも「使ってみてください」と言われていざ遊んでみると、ドローンというよりは「空飛ぶカメラ」なのだった。「空飛ぶ自撮りカメラ」であり「フリーハンドカメラ」であり、それが一番の面白さだなということでここでレビューしてみることにしたのである(機材提供:ZERO ZERO ROBOTICS)。

 2024年春に発売されて話題になった中国Zero Zero Roboticsが開発した「HOVER AIR X1 smart」だ。

 主目的は操縦して自在に飛ばすことではなく、フリーハンドで撮影すること。簡単にいえば、勝手に飛んで勝手に自撮りしてくれる自撮りAIドローンなのだ。

●99gなのが大事なこと

 そして重さは99gである。

 実はこれ、もともと23年に発売された「HOVERAir X1」というミニドローンがベース。当初すごく話題になったのだが、重さは125gだった。

 超軽量のカメラドローンだったのだが、実は22年に改正航空法が施行され、ドローンを含む無人航空機の登録義務が発生し、同時にそれまで「無人航空機に当てはまらないもの」……つまり、航空法の制限を受けないホビードローンの定義が「200g未満」から「100g未満」に改正されたのである。

 遊びでちょっと楽しむドローンに「100g未満」という制限が付いたのだ。これはけっこう厳しい制約で、ドローンの代表ブランドDJIのエントリーモデル「DJI Neo」は非常に小型軽量だが、それでも135gある。機体登録が必要だ。

 誰でもカジュアルに飛ばして写真や動画を撮ろうというコンセプトからすると、登録不要な重さにしたい。そこで機体を折り畳む機構などを省き、99gにまでダイエットして日本限定モデルとして投入されたのが「HOVER AIR X1 smart」なのである(以下、Hoverと略す)。

 小さくて軽くても製品コンセプト的に妥協できないのは画質。

 ではカメラレビュー恒例のガスタンクを。あ、いくらミニドローンとはいえここで飛ばしたりはしてません。HOVERAirを手に持った状態でプロペラは回さず、スマホからのリモート撮影をしております。

 ディテールの描写とかはまあしょうがないけれども、歪みもなく色もきれいで、そうだな、カメラとしてはエントリークラスのシングルカメラのスマートフォンレベルといっていいかも。画素数も1200万画素ある。

 続いて屋外で人物。自撮りドローンである、ってことでいつものモデルさんではなく自撮り。ミニドローンとはいえどこで飛ばしてもOkってわけじゃないので、私有地で試しております。

 次の2枚は「ストップモーション」モードで撮ったもの。

 ドローンを飛ばしたのち、「3秒間止まる」とそれを検知して撮影するという面白い機能で、『ポーズを付ければ自動的に撮ってくれる」のだ。これは分かりやすい。

 撮影はフルオートのみだけど、このサイズとしては十分な高画質。色も露出のバランスもいい。

 ドローンらしく上空からのも1枚。

 それを地上からみるとこうなる。

●飛ばす楽しさより簡単で安全を重視した設計

 Hoverは操縦を楽しむドローンではないのだなと感じさせるのはその作り。多少ならぶつかってもプロペラは損傷しないし、まちがって触ってしまって指を痛めることもないし、プロペラが剥き出しになってないので、持ち歩くときもすごく気軽。バッグの隙間に放り込める。

 そして操作系。

 基本の撮影モードが5つ、さらに「アドバンストモード」や「マニュアル操作」などもあるのだが、最初は基本となる「ベーシックモード」しか使えないのだ。最初にベーシックモードで慣れてからじゃないと他の操作はさせてもらえないのである。

 5つのベーシックモードは本体にアイコンで示されており、モードセレクトボタンを押すと順次切り替わる。

 そして、これらの撮影モードはどれも「自動で離陸して定められた動きをして自動的に終了する」ため、スマホがなくても操作可能だ。

 基本は「ホバリングモード」。

 手のひらにカメラを自分に向ける方向でHoverを載せ、スタートボタンをポンと押す(このとき、撮影する人を認識するので、カメラの前に顔がないとダメ出しされる)。

 ぶわっと離陸。真冬だとこのときの風が手のひらにあたって寒いのだけど、当たり前だ。

 少し上空に上がり、数秒待ってから被写体との距離や角度を取り、設定通りに撮影を始める。

 ホバリングモードだと手のひらから数10cm浮いたまま顔の方向を追うというシンプルなもの。

 残りも4つは、少し離れて上昇し、遠ざかっていく様子を撮影するズームアウトモード、歩いている後ろ姿を追ってくれるフォローモード。自分を中心に旋回しながら360度撮ってくれるオービットモード、そして上空に上がって真上から撮ってくれる俯瞰モードだ。

 飛行時間は、モードにもよるけどデフォルトで30秒。短いので気軽に試せるのだ。

 俯瞰モードで上空まで上がっても、数10秒で降りてくるので待てばいい。さすがに小型軽量だけあって、風にはあおられやすいので高く飛ばすのは向いてない。

 あとは、Hoverの下に手のひらを持ってくればそれを検知して着地してくれる。

 手のひらから離陸して手のひらに着陸するっていう流れがすごく楽しいのである。

 なお撮った写真や動画はWi-Fiでスマホに転送しても、USBケーブルでPCにつないで吸い上げてもいい。

●マニュアル操作に挑戦

 本体だけでも飛ばせるとはいえ、製品をアクティベートしたりモニタリングしながら撮ったり撮った写真や動画を見たり撮影モードを細かくセッティングするにはスマホアプリが必要で、これがホーム画面。

 Hover自体は録音機能を持たないので(もっててもファンの音がはいるだけだし)、ここで後から音声をいれることもできるのがユニーク。

 HoverにWi-Fiで接続すると、アルバムを見たり設定を行ったり、マニュアル操作をしたりできる。

 ここで各モードのカスタマイズが可能だ。

 さらに指定されたベーシックモードでの飛行を指定された回数行うと、アドバンストモードのロックが徐々に解除され、多くの機能が使えるようになっていく。

 ストップモーション撮影もアドバンスドモードだ。

 この段階を追って使える機能が増えていく仕組みは慣れないでむちゃな飛行をしてトラブるのを防げていい。

 慣れたらマニュアルモードだ。

 スマホの専用アプリとつなぎ、画面を見ながら操作しつつ撮影できるというドローンらしい機能だ。

 見ての通り、一通り動きを制御できる。ジンバルの上下はカメラの角度を示す。正面から真下まで向きを変えられるのだ。

 そして画面左の丸いボタンを押すと撮影。

 ただドローンを自在に操って車載カメラを楽しむ、的な設計にはなってない。上昇下降や前進後退の速度も固定で、ゆるやかに動く。だから、ドローン操作に慣れてない人でも安全。一気に速度を上げて「あぎゃー」と言ってる間に木にツッコむとか壁にあたるってことがないからね。

 むしろ、ドローンを動かしながら構図を決めて、ここだというところで撮影するという、「空中浮遊カメラ」なのだ。

 そこが面白いところなのである。

 なので、HOVERAir X1 Smartは小さなドローンを自在に操って風景を撮ったりスピード感ある映像を撮りたいとか、アクロバティックな飛行を楽しみたい人には向かない。ある程度以上の低空飛行はできないし、何かにぶつかると検知してすぐ着陸する仕様になってるし。

 小さくて軽くて安定した飛行を見せてくれるので、操縦を楽しみたくもなるけど、それを求める人は他のドローンの方がいい。

●面白いけど価格と飛行場所のハードルが高いかな

 かくして、HOVERは空飛ぶ自撮りドローンとして、あるいは空中浮遊カメラとしてすごく面白いのだけど、難点は2つある。

 一つは99gのドローンにしては高価なこと。

 確かに、ミニドローンとは思えない画質で写真や動画を撮れるし、動きも安定していてすごく賢い。実用レベルのカメラ+ドローンで99gにおさえたと思えば高くないし、手のひらから飛び立って歩くとついてきてまた手のひらに着陸するなんてのは飛行ペットっぽい感じもして楽しい。

 ちょっとしたイベントや外出時に記念写真を撮ったり、旅先でフリーハンド自撮りできるのは面白い。小さくて軽いから荷物が増えても苦にならないし。

 ただ基本セットが約6万円というのはミニドローンとしてはちょっと高めだ。

 もう一つは飛行場所。

 99gなので航空法の制限を受けずどこででも飛ばせる。「小型無線機等飛行禁止法」規制は受けるけど、これは国の重要施設や空港周辺では飛ばしてはダメというだけなので、気をつけていれば問題なかろう。

 ただ、自治体の条例でドローンが一律禁止されていたり(例えば東京都の都立公園は一律禁止だ)、土地の所有者が禁止していることも多い(神社や寺院などでよく見る)。航空法的にはOkでも土地の所有者が禁止していたらダメだ。

 確かに、知らない人から見れば目の前で飛んでいるドローンが135gのものなのか99gのものなのかなんて分からないし、いくつか公的機関に問い合わせてみたが「***は法的にはOkだけど、他の人がいないところで遊んでね」というニュアンスの回答もあった。

 でも、どこで遊べばいいか頭を悩ましてるのは大都市圏の人間だけかもしれんなあとは思う。田舎なら法的な問題がなくて他の人もいない場所なんていくらでもありそうだし。

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