12月16日、突然現れた新SNS「mixi2」が、急激に盛り上がっている。
mixi2は、往年のSNS「mixi」を開発したMIXI社が提供する、スマートフォン向けの新しい短文SNSだ。完全な新規サービスで、mixiとの互換性はない。
筆者は「mixi」を初期(2004年)から使っており、ユーザーとして、取材者として、その栄枯盛衰を見てきた。その約20年後。mixi2を昨日の初日から使い、一晩でずぶずぶにハマった。
mixi2は「ポストX」の本命になれるだろうか? 使い心地を解説しながら考えたい。
●mixi2は「Xっぽい」が……
mixi2は「完全招待制」をうたうSNSだが、実質、誰でも利用できる。
招待リンクから登録できるユーザー数は無制限。Xなど外部に貼り付けもOKな、オープンな仕様だ。Xで大量のフォロワーをかかる人が拡散しており、一晩でユーザーが激増した(ITmedia NEWSからの招待リンクはこちら。ご利用ください)。
使い心地はXに近い。気になるユーザーをフォローし、その投稿がタイムラインに流れる。短文を次々に投稿でき、最大文字数は「149.3文字」(逆から読むとミクシィ)だ。
Xにはない機能として、属性や趣味が近いユーザー同士が集まって交流する「コミュニティ」がある。初代mixiでも人気の機能で、コミュニティの投稿もタイムラインに流れる。
●リプライ欄やリアクションボタンが平和
投稿には返信(リプライ)したり、リポストしたり、リアクションアイコン(スタンプ)を選んで反応を付けることができる。
その実装をみると、「人を傷つけない、平和なSNSにしたい」という思いが伝わってくる。
例えばリプライ欄には「やさしいことばで返信しよう」と書かれている。きつい言葉や中傷などのリプライがつくこと避けたい、という意図だろう。
100以上あるリアクションアイコンも、平成スタイルのポップな字体で描かれており、そのほとんどがポジティブなもの。笑顔やハートといった基本の絵文字の他、「ありがと」「いいな」「かわいい」「がんばれ」「愛」など日本語文字のアイコンも豊富だ。
●完全時系列→平和
タイムラインは「フォロー」「発見」の2種類。前者がデフォルト(初期画面)に表示され、フォロー先とコミュニティの投稿が時系列で並ぶ。「発見」には、おすすめの投稿が並んでいるようだ。
XやFacebook、Threadsなど既存のグローバルSNSは、デフォルトが「おすすめ」(mixi2でいう「発見」)で、注目を浴びた(バズった)投稿が上位に表示されがち。完全時系列で、どの投稿もフラットに見ることは難しい。
「おすすめ」が優先されても、心地良い投稿だけなら良いのだが、ユーザーが望まないものも出がちなのがグローバルSNSの難点だ。「バズっているだけで興味がない内容」や、「炎上しているネガティブな内容」などがおすすめされやすく、SNSから人が離れる原因になっていた。
mixi2の「フォロー優先」「完全時系列」という割り切りは、グローバルSNSへのそうした声を考慮したうえでの実装だろう。
●トレンドがない→平和
mixi2には「トレンド」機能がないのも特徴だ。
Xのトレンドは、ユーザーがその瞬間によくつぶやいている言葉をピックアップし、ランキング形式で教えてくれる機能だが、ネガティブな情報に関連する言葉が浮上しやすく、“炎上”が再拡散されるハブにもなってしまっている。
また、“バズってトレンドに載る”ことをSNS利用の目的にしたユーザーが増えると、真偽不明のセンセーショナルな情報や、他人がつぶやいて受けた投稿を無断で拝借して再投稿する“パクツイ”などが氾濫しがちになり、場が荒れていく。
トレンド機能や、ニュースを伝える機能などを実装しないことで、平和なSNSの維持を目指しているように感じた。
●人間しかいない→平和
完全招待制で始まった日本語SNSであるmixi2には、今のところ(おそらく)人間しかいない。さらに言うと、日本のユーザー(日本語話者)しかいない。
Xなど他社のグローバルSNSはbotだらけだし、無意味なレスで閲覧数を稼ぎ、収益を得ようとする、海外発の“インプレゾンビ”も大量にいる。自動配信される、無味乾燥な広告投稿も多い。
mixi2は人間しかいないので、ポストへの反応を見ても「誰か(日本語を理解する人間)が見てくれたんだな」と実感できるし、それがうれしい。リアクションボタンはアニメーションするので、反応が生き生きと感じられる。
●超活発なコミュニティは、投稿が秒単位
筆者のタイムラインは、フォローした人と、面白そうなコミュニティのつぶやきであふれておおり、今のところとても平和だ。
ただ、一晩でユーザーが激増したため、タイムラインが激流に。参加者が多いコミュニティでは数秒に1回の頻度で投稿が集まっている。
現状のmixi2は、フォロー相手とコミュニティの投稿がタイムラインに混じって表示される仕様だ。コミュニティの投稿を分けたり、ミュートしたりすることはできない。このため、活発なコミュニティに入るとタイムラインが占領され、フォロー相手のつぶやきを見逃してしまいがちだ。
おそらく運営も、ここまで急速ににユーザーが増え、タイムラインがすぐに埋まるとは想定していなかったのだろう。「フォロー相手とコミュニティのタイムラインを分けてほしい」という声が、初日からあちこちで上がっている。
●“Twitter老人会”の受け皿は、末永く続くのか
おそらく今mixi2を楽しんでいるのは30代~50代前後の「mixi世代」だろう。筆者は46歳だが、同世代がたくさん戻ってきていると感じる。
より若い世代がmixi2に来るかどうかは未知数だ。盛り上がっているコミュニティは「Twitter老人会」や「インターネット老人会」。リアクションアイコンのデザインは平成っぽい。そもそも利用は18歳以上に限られている。
運営側も、mixiになつかしさを感じ、「あの心地良いSNSをもう一度」と思う世代をターゲットにしている。「mixi2」というそのまんまな名前を付けたことや、平成っぽいアイコンデザインなどから、そう感じる。
荒れきったXからの“移住先”を探していたmixi世代をmixi2が直撃し、想定を超える初速をたたき出した。だがこの勢いが続くかは、まだ分からない。
最近は、急激に流行ったSNSが失速するケースも多い。ClubhouseやMastodonがその例だ。飽きられるのが早いことに加え、「Xにいたユーザーが見当たらないので、Xに戻っていった」とか、「初期ユーザーは居心地の良い空間を作っていたが、後からやってきた商業目的のユーザーなどが場を荒らした」などのケースがある。
mixi2は末永く、日本の“インターネット老人会”の憩いの場であり続けられるだろうか。これからの運営に期待していきたい。