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2024年ベストスマホ? 撮ってて楽しかった“ほぼカメラ”な「Xiaomi 14 Ultra」を振り返る

ITmedia NEWS 2024年12月24日 13時20分

 2024年ベストスマホを挙げるとしたら何を選ぶだろうか。魅力的なモデルが各社から出たが、中でも注目度が高かったスマホの一つが、中国Xiaomiが満を持して国内投入した「Xiaomi 14 Ultra」だ。今もなお写りがいいスマホとして名高い。

 なにはともあれ、まず作例を見てほしい。どれも14 Ultraで撮影した“撮って出し”の写真だ。一部露出やフィルターなどの設定は変えているものの、基本シャッターを押したあとは加工を加えていない、純正のカメラアプリだけで撮影した。

●何が良い? トーンがいい!

 14 Ultraは、アクセントになっている円形デザインの中に4つのカメラ(13mmの超広角、23mmの広角、75mm/120mmの望遠)を内蔵している。特筆すべきは23mmで、ソニーの最新1インチセンサー「LYT-900」と、F1.63~F4までの可変絞りに対応した、「Summilux」名のレンズをあしらっている。また、超広角だけでなく75mmは10cm、120mmは30cmまで近づけるテレマクロ機能も特徴で、1ページ目に載せた水滴の作例はこのマクロ機能を使って撮影している。

 では、14 Ultraのカメラの何が良かったか。シンプルに言えば「トーンの豊かさ」に尽きる。スマートフォンのカメラは、小さなセンサーを高度なISP&プロセッサパワーで駆動させる、画像処理の歴史でもある。HDRもそうで、ナイトモードなどの高感度撮影、ボケを再現するポートレートモードなど、画像処理でジワジワと本家カメラとの差を詰めてきた。しかし、まだ差があるとすれば“色作り”の分野で、ここは各カメラメーカーが長年かけて育ててきた部分でもある。

 一時期の中国製スマートフォンのカメラは、かなり派手な色使いだった。初めて独Leicaとコラボしたスマホメーカーといえば中国Huawei。筆者も「P20 Pro」をメインスマホとして一時期使っていたが、スマホとは思えない写りの良さに感動した。しかしやはりビビッドさ、鮮やかさが先行していたように思う。豊かなトーンとは、鮮やかさとはまた違う、階調に余裕を感じさせるものだ。これを再現するには当時のセンサー/ISP/プロセッサは非力だったのかもしれない。

 しかしキーパーツと実装が進化し、薄型ボディながら1インチセンサーを搭載できるまでになった。しかも14 Ultraが採用するLYTIAシリーズは、ダイナミックレンジが大幅に改善しており、一眼カメラに匹敵する14ストップのレンジを確保できるというのだから驚きだ。これにプロセッシングパワーや画像処理の進化と、Leicaとのコラボレーションによる色のノウハウが加わり、世代を増すごとに熟成が進んだ結果なのだろう。

 14 Ultraには、Leicaの名前を冠したカラープロファイルとして「Leica Authentic Look」と「Leica Vibrant Look」の2つが選べるが、オススメはAuthentic Lookだ。落ち着いたトーンなのだが、色が素っ気ないというわけではなく、落ち着きながらも階調・色再現性に富んだ画が出てくる。

 また、Authentic Lookには、フィルターのように色味を変えられる「Leica Image Look」が用意されている。モノクロからカラーフィルム調のものまで多くのプリセットがあり、モノクロだけでもシンプルなものから青みがかったものまで複数から選ぶことができる。被写体にハマればかなり印象的な写真が撮れ、「後からアプリでレタッチ」なんてことも考えなくて良い。

 ただ、14 Ultraの写りには少しクセがある。夕方や夜、日陰、室内などの場合は露出を「マイナス0.7~マイナス1」にしたほうが見た印象に近かった。デフォルトだとハイライトが飽和し、HDRっぽいアンダーの浮きが気になる。マイナス1にすると全体の露出は若干下がるが、黒浮きが大人しくなり、写真が締まって見える。

●なにはともあれグリップが良い

 個人的にかなり気に入ったのが純正グリップ。シャッターボタンとズームレバー、露出などを調整できるダイヤルと、カメラに必要なものが一通り揃っており、タッチパネルに触らずとも操作できる。スリープ状態でも、シャッターボタンを長押しすればカメラアプリが即起動。シャッターチャンスにも強い。

 ラバーが巻かれたグリップは手に馴染み、適度な厚みもあって持ちやすい。1世代前だがまだまだ現役「Snapdragon 8 Gen 3」のサクサク動作と相まって、シンプルに撮影が楽しい。筆者は普段横構図が多いが、不思議と14 Ultraは縦構図がスパスパ決まり、おかげで1ページ目のように縦ばかりの作例になってしまった。

 本体とグリップはUSB Type-Cで接続し、ラッチをスライドすれば固定される。グリップにもUSB Type-Cポートがあるので、本体側のポートが塞がれていても両方に給電できる。グリップつけっぱなしでも運用しやすいのはありがたい。

 グリップがセットになっている「Photography Kit」には、装着時に使う専用スマホケースも付属している。これも手が込んでいて、67mm径のねじ込み式フィルターを取り付けられるようになっている。NDでもC-PLでもなんでもござれ。レンズキャップも取り付けられる。

●気になる部分は「ある」

 気になる点もある。それが2倍ズーム(正確には46mm)の画質だ。50mm付近の画角は、パースが程よく取れ、スナップからブツ撮り、ポートレートまでこなせる万能画角だが、23mmの広角をデジタルズームするためか、画質が少し甘い。

 14 Ultraは全カメラに5000万画素センサーを搭載しているが、4画素を1つに統合してセンサー性能を引き上げるビニング処理のためか、基本的に約1250万画素で記録される(オプションで50Mモードもある)。確証はないが、どうも2倍ズームは1250万画素を2倍相当にクロップ(約300万画素)し、そこから超解像をかけている印象だ。この“甘さ”や、小さな文字の“変質”がどうしても気になり、望遠カメラに切り替わる75mmばかり使っていた。こちらの方がクリーンな写りをする。

 最新のiPhoneでは、広角カメラに4800万画素のセンサーを使い、4800万画素とビニング処理した1200万画素を統合し、2400万画素を作り出している。2倍ズームは、フル画素からクロップ(4800万画素→1200万画素)させることで実現しており、1画素あたりの性能は落ちるが、解像度を補間する際の甘さや文字のにじみといった“ミス”が起きにくく、他のカメラユニットに近い解像感を実現している。14 Ultraもこの方向性で2倍ズームできたらな……と思えて仕方ない。

 また、これは14 Ultraだけの話ではなくスマホのカメラ全般にいえることだが、「よく写るけど本家カメラとは別物だなぁ……」と痛感する場面が何度かあった。スマホのカメラは本家カメラが持つ特性をユースケースごとに切り出して機能化している、いわば「カメラシミュレーター」のようなもの。本家カメラならできることがスマホではできない……がままある。

 例えば、14 Ultraにはポートレートモードに似た、Leicaレンズを再現する「マスターレンズシステム」というモードがある。以下の作例は夜の公衆電話を撮影したものだが、背後を走る車のヘッドライトが玉ボケとして綺麗に映り込んでいる。そこで「ライトの軌跡を残したいな」と、シャッタースピードを遅くしようとしても、そもそも設定項目がない。じゃあ、マニュアル設定できるプロモードでシャッタースピードを設定したとして、今度はボケをシミュレートする機能ではないため、センサーとレンズ本来の画しか出てこない。

 ただ、こういう不満が出てくるのも、本家カメラに迫る写りができるようになったからで、人間の欲深さの表れかもしれない。もし今後、センサーサイズやレンズの焦点距離とF値、シャッタースピードなどの関係性を完璧にシミュレートできる、真の意味でのカメラシミュレーターがスマホで実現すれば、一層「カメラはスマホで十分」の世界になるだろう。

 その他、電源管理がお粗末でバッテリーの消費が早かったり、グリップを装着したまま充電しても本体は満充電、グリップは空のまま……ということも何度かあった。ただ、この辺はアップデートが入ったようで、持ちが大幅に改善したという声もある。あと、本体が大きく重いこと、FeliCa非対応でSuicaやiD/QUICPayなどが使えないこと(クレジットカードのタッチ決済は利用可能)などは、人によっては外せないポイントだろう。

●Xiaomi 15 Ultra(?)に期待すること

 LeicaとXiaomiのコラボは22年の12Sシリーズから始まったが、Leicaコラボを大々的にアピールしたXiaomiスマホは長らく日本ではお目にかかれなかった。12S登場の少し前にシャープがLeicaとのコラボをスタートさせており、独占ライセンスの関係か、当時の日本向け戦略の影響があったのかもしれないが、14シリーズになってようやくXiaomi本気のカメラスマホを日本でも体験できるようになった。

 では後継機(Xiaomi 15 Ultra?)に期待することは何か。個人的には望遠カメラの大型化を挙げたい。

 最近、望遠カメラの「大型センサー化」がトレンドになりつつある。一般的に、薄いスマホのボディに短い/長い焦点距離のレンズを組み込もうとすると、センサーサイズが犠牲になる。一眼カメラの望遠レンズが、焦点距離と明るさに応じてデカくなるのと同じで、光学系をコンパクトにするなら、センサーは小さくする必要がある。そこで、ほどほどの倍率&光学系の改良で、望遠用のセンサーを大型化させることで、高感度性能やダイナミックレンジ性能を引き上げる流れが来ている。

 イメージセンサーを外販するソニーも決算会見で同様の指摘をしており、カメラの高性能化に伴い、サブカメラ(超広角・望遠)の大判化が進むと予測している。

 実際、中国Oppoが最近国内に投入した「Find X8」の望遠カメラは、世界初をうたうWプリズム型の光学系を使うことで、1/1.95インチの大型センサーを搭載。シャープの「AQUOS R9 Pro」は1/1.56インチ、中国VivoのX200シリーズでは無印モデルが1/1.95インチ、Proモデルは1/1.4インチという、望遠カメラとしては大きなセンサーを搭載している。いずれも3倍前後のズーム域だ。

 Xiaomi 14 Ultraでは、13mmの超広角、75mm/120mmの望遠ともにIMX858という、ソニーの1/2.51インチセンサーを使っている。広角の1インチと比べると小ぶりなので当然性能差も大きい。ぜひ後継機では先述の2倍ズーム時のディティール向上に加え、他社と同じく「センサー格差」の改善を期待したい。特に75mmはポートレートでも使いやすい画角なので、クオリティアップは大歓迎である。

 とはいえ、14 Ultraでも画質は十分満足するレベル。特に、階調や画作りはスマホとして1段上のステップに上がっている。発売から半年経ったためか、格安で販売されることも増えており、「Suica非対応でも構わないのでカメラがきれいなスマホが欲しい!」というニーズなら、Xiaomi 14 Ultraは十分選択肢に入る。何より撮ってて楽しいので、グリップ付きの「Photography Kit」をオススメしたい。

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