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データ探しにAI活用、クラウドの使い勝手も取り込んだ新世代のNAS「UGREEN NASync」

ITmedia NEWS 2025年1月30日 8時20分

 そろそろデータ管理をどうにかしないとまずいんじゃないかな? と考えることが、人生において何度かあると思います。デジタルのデータというのは、自分で何か対策をしない限り、いつ一瞬でデータがなくなるか分からないものですから。

 これまで、データ管理に対するアプローチはたくさんありました。単にPCに接続した装置でバックアップを作成する。NASをネットワーク上に設置する。クラウドストレージを使うといったことなどです。ただ、どれにも一長一短があり、それを複合的に使っているケースも多いでしょう。

 そういった中、モバイルバッテリーなどで知られる中国UGREENの日本法人、ユーグリーン・ジャパンが1月15日に「UGREEN NASync」を発表しました。すでにクラウドファンディングサイトの米国「Kickstarter」で約10億円を集めることに成功したそうですが、どこがそんなに支持されたのでしょうか。今回はじっくりチェックしました。

●変わりゆくストレージのニーズ

 NASは長年、ネットワーク接続型のストレージソリューションとして活用されてきました。しかし、PCだけではなくスマホも当たり前となると、多くのユーザーが使いやすさと様々な機能が充実したクラウドストレージを使うようになりました。中にはNASなんて使ったことがないという人たちもいたでしょう。

 その一方で、クラウドストレージには月額コストの積み重なりがあり、写真や動画などのデータの巨大化という問題も出てきていました。私自身もクラウドストレージをそろそろ見直さないといけないというタイミングでもありました。

 UGREEN NASyncは、このような状況に対して提案された新世代のNASといえます。ローカルストレージの利点とクラウドのような使いやすさを組み合わせた製品と考えて問題ありません。

 実際に操作してみると、これはただのデータストレージ装置ではなく、ファイル管理に特化した専用コンピューターという印象を受けます。アプリも用意されており、しかもAIも活用しているというおまけ付きです。

 上位モデルでは、RAID5やRAID6によるデータの冗長化が可能で、大切なデータを安全に保管できます。これにより、別途バックアップを用意することなく、データの保護が実現できます。

 今回、私は6ベイの「NASync DXP 6800 Pro」をお借りしてテストしているので、10TBのHDDを6個(計約60TB)使ってRAID6の環境設定をしました。実際に使える容量は約36TBとなりますが、最悪3台のHDDが同時に壊れてもデータの心配がないという運用が可能となります。

 もちろん、RAID5でも大きな問題はないですし、使える容量は増えるのですが、RAID5で運用していてトラブルが起きた時にRAID6にしておけばよかったと後悔するのがすごく嫌という心理的な理由でRAID6にしているというわけです。

 各ベイへのHDDの取り付けはネジなしで可能になっており、今時のNASの設置はこんなに簡単なのかと驚きました。もちろんHDDの設定やメンテナンスのために必要な情報もすアプリから確認、設定可能です。

●AI機能がもたらす新しい可能性

 NASの一番の利点として、クラウドストレージと比較するとはるかに大容量を扱えることにあります。ただ、NASの問題点として、いくらでもファイルを突っ込めるのはいいけど、肝心の欲しいものを探すのが大変というのがあります。容量が増えれば増えるほど、フォルダ管理にも限界がありますから。

 ところが、このUGREEN NASync、まずファイルなどの検索機能がなかなか悪くありません。NASに入ったデータのインデックス作成を待たなくてはいけませんが、一度インデックス作成が終わってしまえば、キーワードによる検索結果は、ほぼ一瞬で出てきます。また検索も2段階になっており、ユニバーサル検索を使えば、ファイル・画像・ビデオ・アプリといった分類でも検索可能になっています。

 そして、探せないとイライラする大量のデータの代表として写真があります。そのため、写真についてはフォトクラウドを使っている人も多いでしょう。クラウドの方がいろいろな方法で写真を探すことができるようにデータを整備してくれるからです。

 ところが、このNASyncには写真アプリがあり、そこでGPS情報、写真分析、顔での分類といったフォトクラウドで提供されているような機能はひととおり揃っています。

 さらに特筆すべきは、カスタムAIモデルの作成機能です。例えば、企業などで使う場合、自社ロゴを認識するモデルを作成して大量の写真ライブラリから自社ロゴの入った画像を探し出す、みたいなこともできるのです。写真好きな人であれば、特定の撮影スタイルや被写体を識別するモデルも作ることができます。

 なお、これらのAI処理はすべてローカルで行われるため、プライバシーを確保しながらクラウドのような便利さを実現しています。AIの学習データはローカルのアプリに保存されるので、アプリを削除すると学習データもなくなるという仕様となっています。

●使い勝手に直結するインタフェース

 NASyncへのアクセスは、従来のNASとは一線を画すデスクトップの様なインタフェースになっています。そして、それはWebブラウザ経由でもPCのアプリ経由でも、ほぼ同じ画面で提供されます。複雑な操作も直感的に行えるよう設計されており、日々の操作を助ける以下のような機能を備えています。

・NASの動作設定をするコントロールパネル

・複雑な操作を監視できるタスクセンター

・包括的な通知システム

・権限設定が可能なマルチユーザーアクセス

・リモートアクセス機能

 リモートアクセス可能でブラウザさえあれば、いつでも自宅のNASにつなげることができるというのは、他の端末にからでもほぼ準備なしで使えますし、NASにユーザーを追加しても、アプリのインストールをしないで、すぐに使えるというのも大きな利点です。

なお、ユーザーを追加する際には、そのユーザーが使えるデータ領域を指定することができるので、他のユーザーが容量を使いまくる心配も不要です。またリモートアクセスを使う場合は、UGREENNlinkのユーザー登録が必要となります。

●アプリも充実

 さらにUGREEN NASyncの可能性を広げてくれるのが、多数のアプリの存在です。アプリをうまく使ってもらうためにも、デスクトップ風のインタフェースは単なる見た目以上の意味を持ち、必要な機能をアプリとして追加できる拡張性の提供をスムーズにしています。

●アプリ例

・バックアップアプリ:PCやモバイルデバイス(写真など)の自動バックアップを実現

・ファイル共有アプリ:外部ユーザーとの安全なデータ共有を実現

・ユニバーサル検索アプリ:横断的な検索を実現

・メディア管理アプリ(写真・シアター):写真や動画の整理・閲覧を効率化

・DLNAサーバアプリ:家庭内でのメディアストリーミングを可能に

 DLNAアプリのおかげで、ネットワーク上のPlayStation 4などからでもNASのデータにアクセスできます。データをコピーせずに、テレビでみんなで動画を見ることができるため、家庭内のメディアハブとしての役割も果たせることになります。

●モバイルアプリの完成度

 そして、ここまでお話してきたことは、基本すべてスマホのアプリからも操作可能になっています。NASとしての基本機能だけではなく、アプリによる追加機能も含めて利用可能です。デスクトップで利用できるほぼすべての機能を、モバイルからもシームレスに利用可能です。写真のバックアップから高度なAI検索、リモートアクセスまで、外出先でもアプリさえあれば大丈夫です。

●クリエイティブワークフローへの統合

 スタジオなどのプロフェッショナルな環境では、Thunderboltポートを活用した高速データ転送と、アプリを組み合わせることで、効率的なワークフローを構築できます。

 例えば、以下のようなワークフローが実現可能です。

1. スタジオで撮影データの直接取り込み(SDカードスロット経由)

2. チーム内での即時ファイル共有

3. 権限管理による安全なプロジェクト管理

4. AIを活用したアセット管理

●ハードウェア設計は実用性を重視

 お借りしたNASync、ネットワークの都合もあり、机の下に設置してみましたが、動作音などが気になることもなく、とても安定して稼働しています。ほこりを防ぐフィルターの搭載など、長期使用とメンテナンスを考慮した設計になっています。

 また、ハードウェアスペックも拡張の余地を残した仕様となっています。

・DDR5 RAM(増設可能)

・Thunderboltポート搭載

・SDカードリーダー内蔵

・SSD拡張オプション

●これからのデータ管理を見据えて

 ここまで見てきたように、UGREEN NASyncは、単なるストレージソリューション以上の存在です。AIを活用した整理機能とクラウドのような使いやすさを組み合わせることで、純粋なクラウド依存に対する魅力的な選択肢を提示しています。もちろん、NASがあるから、クラウドを全部解約すればいいなんてものではなく、コストと容量のバランスをうまく両立させていくのが現実的な運用スタイルになっていくのだと思います。

 例えば、SNSに日々アップしているデータなども、自分のアカウントが永久にあるなんてことはありません。たまにでいいので、バックアップをしておくの自衛手段として必要になります。そして、そんなデータは巨大なものになりますし、普段は使わないので、NASに放り込んでいけばいいわけです。

 なお「GREEN FUNDING」でも約2週間後からクラウドファンディングを実施予定で、早期支援者向けに最大40%のディスカウントが設定されています(ドライブは別途)。

 最後に。今回の記事、出てくるのが遅いと編集部にさんざんせっつかれたのですが、ずっとUGREEN NASyncが多機能だから書くのに時間が掛かっていると言い訳していました。でも実は、NASで遊ぶのがすっかり楽しくなってしまった日があったことも正直に告白させていただきます。

 自分のデータをいくらでも突っ込めて、それをNASが自動的にあれこれよしなにしてくれるんだから、そりゃ楽しくて仕方がないんですよ。特に動画を一覧で見ることができるシアターアプリが最高。持っているデータ次第ではありますが、あれはもう、自分専用ネトフリみたいなものです。

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