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超初心者向けの“RAW現像入門”的な話

ITmedia NEWS 2025年2月2日 8時20分

 唐突ですが、RAW現像ってしてます?

 いや、そもそもデジカメでの「現像」ってなんやとか、「RAW」ってよく分からないという人も多いだろう。今回は初心者向けにRAW現像について噛み砕いて話をしてみたい。

●そもそもデジタルカメラにおける「現像」ってなに?

 大事なのは「現像」という言葉。フィルム時代の言葉を流用しているのでデジタルカメラ黎明期はいろいろと誤解されたりもしたけど、すっかり定着してしまった。

 フィルムのカメラって、レンズを通った光がフィルムにあたって化学変化を起こし、画像が記録されるのだけど、そのままでは肉眼では何も映ってないように見える。いやそもそも撮ったばかりのフィルムを見ちゃいけない。見ようと思って光に当てるとそこでさらに感光してまっ白になるだけだ。

 それ以上光が当たらない環境(暗室とか)で現像液に浸して化学反応を起こして画像を目に見えるようにする。撮影したフィルムに対して化学反応によって像を浮かび上がらせ、肉眼でも見えるようにするのが「現像」作業だ。

 現像したフィルムは、印画紙に焼き付けることで、誰でも見られるようになる。これがプリント。フィルム時代は現像+プリントを連続して行う店が主流だったので(同時プリントと呼んでいた)、印画紙に焼き付けることを現像と勘違いしてる人も多いようだけど、それはプリント。

 では、デジタルカメラだとどうか。

 レンズを通った光がイメージセンサーにあたるとそれに反応して電気信号が発生し、それをまずデジタル信号に変換する。その変換された信号が「RAWデータ」と思っていい。RAWは「生」って意味で、「ロウ」と読んでいる。まあ「生データ」だ。

 この時点ではまだ画像じゃない。ナマだからね。

 RAWデータをカメラ内の画像処理エンジンで処理をして「画像」にする。それがデジタルカメラの「現像」だ。現像処理をした結果を、JPEGなりなんなりの汎用的な画像ファイルにして保存することで、人間の目に見える形になるのである。

 大事なのは、RAWの時点ではまだ画像とはいえない、ということ。

 RAWの時点では、まだホワイトバランスも固定されてないし(どの設定で撮ったかという情報だけ持ってる)、ピクチャーコントロールなどの細かい画作りも繁栄されてないし、ノイズ低減処理などもされてない。料理前の状態なのだ。

 「RAWで保存したデータもPC画面で表示できるじゃないか」と言われがちだけど、実はアレはPC上で「とりあえず撮影時のセッティングで現像して」表示してるのだ。

 ちなみに、RAWデータは「生」データであるために、メーカーごとに仕様が異なっている。それぞれ拡張子も違うし、機種によって異なることもある独自仕様なので、最終的には何らかの標準的な画像フォーマット(JPEGとかTIFFとか)にする必要がある。

●後からホワイトバランスを自在に調節できる

 RAWデータは生データであるために「ファイルサイズがデカい」。RAWデータを現像して圧縮して保存したものがJPEGなので、JPEGに比べるとめちゃデカい。でも持っている情報量が段違いなので、あとから仕上げるときにすごくいい。

 では、実際に現像してみる。

 RAWデータがRAWならではの力を発揮するのは、大きく分けて「ホワイトバランス」「画作り」(ピクチャーコントロールとかフィルムシミュレーションとか)「階調」の3つだ。

 まずは「ホワイトバランス」。JPEG画像はホワイトバランス決定後のものだが、RAWデータにはホワイトバランス決定前の情報が入っている。

 撮影後にホワイトバランスを変えたいとき、すでにホワイトバランスが固定されたJPEG画像だと微調整くらいしかできないが、RAWデータなら白熱灯から太陽光へ、などホワイトバランス(主に色温度)を大きく変えることができる。

 アプリはAdobeの「Lightroom Classic」を使った。

 サンプルは3つならんだプチ招き猫が可愛かったので撮影したのだが、背景が茶色かったせいか、オートホワイトバランス(AWB)の結果が良くない。白いはずの招き猫が青くなってしまった。これの色を直したい。

 そこで、Lightroom Classicのホワイトバランス調整機能で、「撮影時」から「昼光」に変更すると、いい感じのリアルな色に。

 最初から昼光で撮っておけよ、という話もあるけど、これ「Z50 II」のレビュー用作例の一環で撮影したものなので、基本的にAWBなのだ。

 撮影時に完璧にホワイトバランスを合わせられればいいけど、いつもその余裕があるとは限らないし、撮影後にその写真を使用するシーンによってホワイトバランスを変えたいこともあるわけで、RAWで撮っておけば安心である。

 ちなみに、JPEGで撮った写真に対してもアプリでWB調整機能を使えるけど、現像してホワイトバランスを固定した時点でRAWデータが持っていた豊富な色情報が失われているので、微調整くらいならともかく、大きく変えるのは無理。

●フィルムシミュレーションを変える

 2番目はカメラの持ってる画作り。ソニーの「クリエイティブルック」、ニコンの「ピクチャーコントロール」、富士フイルムの「フィルムシミュレーション」などなど、各社とも様々なルックを用意してくれている。

 実はこれ、RAWデータの時点では反映されてない。だからRAWで撮っていればあとからそれを変更できるのだ。分かりやすいところでフィルムシミュレーションをサンプルに引っ張り出してみた。

 その場でここは「クラシックネガ」で撮りたい、と思って撮ったけど、あとからその写真を使う段になって、ここで使うにはそれは相応しくないな、ってとき。RAWで撮っていれば、後から変えられるのだ。

 逆に、標準で撮っておいてあとから変えてやることもできる。ソニーのクリエイティブルックで3パターン見てみよう。α1 IIの作例用に望遠で撮った河原にいたオオバンの群れだ。

 このようにRAWで撮っておけば、後からこのクリエイティブルックならどう写りが変わってたんだろうってのをチェックするのにも使える。

●階調の調整もRAWなら幅広く対応できる

 3番目は階調のコントロール。特に役立つのはハイライト部の白トビだ。JPEGだと白トビしてしまったものはしょうがないけれども、RAWだと少しダイナミックレンジが広いデータを持っているので、白トビしていても少しは復活できるのだ。

 試してみよう。レトロな室内で撮った照明。背景は暗いし、照明は白トビしてて形がよく分からない。

 ここでハイライトをぐっと落としてみる。すると、RAWの段階で白トビしていた部分はしょうがないが、花をかたどったランプシェードの形が出てきた。さらにシャドウ部を持ち上げてみる。すると部屋の様子も見えてきた。

 ではこれをJPEGファイルに対してかけてみると……ハイライト部が完全に失われているので、ハイライトを落としてもただ暗くなって不自然になるだけである。

 また、RAWではノイズ低減処理をかける前のデータが入っているので、シャドウ部を持ち上げて出たノイズや、暗所で感度を上げて撮ったときのノイズもあとからどのくらい低減するかを微調整できる。

 最近の例だと、AdobeがAIを使ったノイズ低減処理機能を実装したが、これはRAWデータにしか対応していない。

 さらに、Adobeはガラスの反射を消す機能をプレビュー版として搭載してきたが、これもRAWデータのみの対応だ。

 私が普段使ってるのがAdobeなので画面例はAdobeだらけだが、メーカー純正アプリでも他社のアプリでもRAW現像ならではの調整はできる。

●RAW現像は楽しいよ

 なお、RAWで撮ったからといってなんでもできるわけじゃないので(ブレは直せないし、ピンボケも原理的に無理……AIを駆使して疑似的に修正できるようにはなりそうだけど)、撮影時にちゃんとセッティングするのが大事だけど、まあそれはそれ、だ。

 ちなみに私は基本的に「RAW+JPEG」で撮影している。JPEGのままでokなときはそのまま使い、調整して出したいなというときは、RAWデータから現像し直している。

 RAW+JPEGで撮るとあっという間にストレージを消費しちゃうし、何かと時間がかかるけれども、何かと融通が効くのでありがたいのだ。

 あとね、RAWデータから自分好みに、あるいはその写真を使うシチュエーションやその写真で見せたいものがきっちり伝わるように調整していく作業ってけっこう楽しいのである。

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