ミラーレス一眼といえば、フルサイズセンサー機が話題の中心であるが、それよりセンサーがコンパクトなAPS-Cサイズセンサー機があり、さらに4/3型センサー(大ざっぱにいえばAPS-Cの半分くらいのサイズ)を採用したマイクロフォーサーズシステムがある。
マイクロフォーサーズの雄といえばPENやOMでその存在を定着させたOMデジタルソリューションズ(以下OMDS)。2020年にオリンパスの映像事業が切り離されてできた企業で、カメラのブランドも「OM SYSTEM」になった。
そして2月6日、OMデジタルソリューションズ(以下OMDS)からOMシリーズ4つめのラインが発表されたのである。
現在のOMシリーズは、フラッグシップ機の「OM-1」、初代OM-Dであった「EM-5」の系統を受け継ぐややコンパクトでミドルクラスの「OM-5」。そしてエントリーモデルとして「OM-10」……はまだなくて、OLYMPUSロゴ時代の「E-M10」だ(これもいずれOM-10としてリニューアルされるだろうか)。
今回発表されたのは、OM-1とOM-5の中間に当たるミドルハイエンド機「OM-3」である。
●フィルム時代のOMを彷彿とさせるOM-3のボディ
OM-3の特徴は2点。
一つはデザインだ。
OM-3は、同名のフィルムカメラ(1984年発売)があったのでちょっと紛らわしいが、もちろんそれとは関係ない……けど、見た目はそっくり。
OM-1と並べてみたのがこちらだ。
ゴツっとしたデザイン、グリップのないフラットなボディなどすごく意識したのが分かる。
もともと、初代OM-DだったE-M5が、当時としては珍しくフィルムの一眼レフ(OM-1系)に寄せた、ファインダー部がとんがったデザインだったが、その後、機能性や操作性を重視した上位モデルでは、しっかりしたグリップがつき、ファインダー部のとんがりも丸くなっていった。
OM-3は、初代のEM-5以上に先祖返りした感じだ。
だからグリップのないフラットなボディだし、電源スイッチも左肩のフィルム時代と同じ場所だ。
ダイヤルの構成は他のOMと変わらずミラーレス一眼そのものだが、いっそのこと、フィルム時代のOMのようにマウント部にシャッタースピードダイヤルを、右肩にISO感度ダイヤルを置いても面白かったのに、とは思う。まあ、さすがに今からそれは無理か。
手にした感じは、実に昔のフィルム一眼レフ感。あの頃はグリップがフラットだったものな。
そして横幅も今までのOMシリーズより広くなった。
その理由はバッテリーらしい。
グリップの膨らみをなくしてボディの薄さを保ちつつ上位機のOM-1と同じ大容量のバッテリーを入れるために幅が広くなったのだ。
横幅が広くなったところにバリアングル式の背面モニタを搭載したため、背後から観るとモニタの中心とファインダーの中心がズレていてちょっと美しくない。違和感がある。
なお、初代OM-DであるE-M5は別売りで外付けのカメラグリップが用意されており、望遠レンズを使うときなどしっかりグリップしたいときに便利だったが、今回、それは用意されていないようだ。
●「OM-1 Mark II」と同じ裏面照射積層型センサー搭載
もう一つの特徴は、根幹部分であるイメージセンサーと画像処理エンジン。イメージセンサーはフラグシップ機である「OM-1 Mark II」と同じものを採用している。高速読み出しが可能な裏面照射積層型センサーだ。
これは約2037万画素だが、一つの画素が4つに分かれているクアッドピクセルで(なので、8000万画素と言ってもいいかも)、それを利用して縦横両方向で位相差情報を検出するため、高速で正確なAFが可能となっている。「1053点オールクロス像面位相差クアッドピクセルAF」である。
画像処理エンジンもOM-1 Mark IIと同じ「TruePicX」で、被写体検出AFもOM-1 Mark IIと同じく、人物も動物も乗り物も鳥も対応している。
ミドルクラスのOM-5と比べると、センサー性能も世代も先を行っているし、画像処理エンジンもワンランク上であり、性能面では大きな差がありそうだ。
常用ISO感度もOM-1 Mark IIと同じで、OM-5とはまったく違う。
ただ、さすがにOM-1 Mark IIと全部同じというわけにはいかない。メカシャッター時の連写速度、ボディ内手ブレ補正の性能(OM-1 Mark IIは約8段分だが、OM-3は約6.5段)、SDカードスロットの数(OM-1 Mark IIはデュアルスロットだがOM-3はシングル)などで差がある。
また、EVFのクオリティもOM-5同等に抑えられている。ただボディのデザインからして長いレンズを付けてフィールドで走り回ったり撮り回るって使い方はあまりしないだろうからまあ問題はないだろう。
OM-3ならではの特徴として、前面に設けられたクリエイティブダイヤルがある。
これはかつてPEN-F(2016年発売)に搭載されたものと同じで、標準の他にART(アートフィルター用)と、カラー、モノクロの4ポジション。カラーとモノクロはそれぞれプロファイルを変えたり、カラーフィルターをコントロールして、好みの画作りをするためのもの。細かく色を調整するカラークリエイター機能もある。
昨今の画作りトレンドを反映してか、独立したダイヤルから画をいじれるダイヤルを復活させたのだろう。
アートフィルターもカラークリエイターもOM-1にまで受け継がれているが、使ってない人も多いかと思う。今のこのタイミングでクリエイティブダイヤルを復活させたのは良いことだ。
この辺は実機を使ってのレビュー時にあれこれ試してみたい。
もう一つ、新たにCPボタンも装備。これはコンピュテーショナルフォトグラフィーボタンで、高速なセンサーを生かした連写+合成を使った撮影機能(ライブGNDやハイレゾショットなど)をすぐ呼び出せる。
●頑丈さと高性能とデザインが並び立つOM-3
OM-3と同時に3本のレンズがリニューアルされた。スナップに向いた「M.ZUIKO DIGITL 17mm F1.8 II」と「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II」。そして手ブレ補正機能を強化した望遠ズームの「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II」だ。単焦点レンズ2本はOM-3によく似合う。
OMDSはOM SYSTEMのブランドサイトをリニューアルし、シリーズに共通する強力な手ブレ補正と防塵防滴性能をアピールすべく「冒険」を前面に押し出してきた。アウトドアフィールドに持ち出すカメラという位置づけだ。
OM-3はそれとは少しテイストが異なる、どちらかというとスナップ撮影を楽しむカメラであるが、中身はOM-1 Mark IIとほぼ同じという高性能仕様なのが素晴らしい点だ。防塵防滴もハイレベルなので街中でも映えるデザインだし、過酷なアウトドアでの撮影でも使える本格的なカメラと考えていいだろう。
なお、価格はOM-1 Mark IIより少し安く、市場想定価格はボディのみで約26万4000円。12-45mm F4.0 PROのレンズキットが約29万7000円。3月1日に発売予定だ。今から楽しみである。