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税込み5万8800円で買える「10.9インチiPad(第10世代)」の実力を最新iPad Proユーザーが改めてチェックした

ITmedia PC USER 2024年5月29日 12時5分

 ガジェット大好きな私は、当然のように「iPad Pro」も使っています。ただし、ここ数年はあまり大きな変化がなく、毎年買い換えるようなものではないと感じています。最近は「都合によりもう1台必要になった」ということで、6年ぶりに最新の「11インチiPad Pro」(税込16万8800円から)を購入しました。久々の購入でしたが、円安の影響もあり、ものすごく高価なタブレットになっていると感じます。

 そうした円安の中ではありますが、先日の新iPad発表のタイミングで、現行モデルでもある「10.9インチiPad(第10世代)」(2022年発売)が6万8800円から5万8800円に値下げされました。

 はっきり言って、M4チップを搭載したiPad Proは多くのユーザーにとってオーバースペックです。一般的なビジネス利用であれば標準のiPadでも問題ないはずということで、どこまでiPadのベーシックモデルが“戦える”のかを検証しました。

 結論から言うと「一般的なビジネス利用には全く問題なし」です。それくらいiPadは低価格なベーシックモデルでも品質が高いと感じます。しかし、どこまで快適さを追求するかを考えた時、やはり上位モデルとはハードウェアの違いが見えてきます。

 細かな使い勝手の向上を求めたとき、そのために必要な(上位モデル購入の)金額感がかなりアンバランスだとは思うので非常に悩ましい問題だと感じますが……。

●普通に使えすぎる、優秀なiPad

 iPad Proを使っているとは書きましたが、私自身はiPadにハイスペックが必要な使い方はしておらず、ごく一般的な用途でしか使っていません。Webブラウジング、メール、各種チャットツール、Officeアプリ系、Apple Pencilを使ったメモ書き、電子書籍の閲覧ぐらいです。

 iPadは機動力が高いので、さっと使う軽度な作業には最適です。時間や手間がかかるような作業は最初からMacやWindowsで行います。その他、利用するとすればオンライン会議や動画視聴でしょうか。

 お気付きかもしれませんが、これらの用途であれば10.9インチiPad(第10世代)でも全く問題なく利用できます。処理が重いと感じることはありません。

 作業のネックになるとすれば、iPadOS固有の問題です。例えば「ウィンドウのコントロールがMacやWindowsと比べると相当劣る」「ファイルの取り扱いが独特」「キーボードにはファンクションキー(文字変換などに使いたい)がない」「外部キーボード利用時は標準のIMEしか使えない」など、全iPadに共通して引っ掛かってくる点です。

 このような「iPadOS固有の問題」を除くと、私の用途であれば何ら問題ありません。しかし、これはOSレイヤー(ソフトウェア)で見た時のお話です。

 なお、OSレイヤーであえて言えば、10.9インチiPad(第10世代)だとステージマネージャ(ウィンドウ表示方法の一つ)が使えないというデメリットがあります。iPadに外部ディスプレイを接続する時に気になってくるポイントですが、そもそも、そこまでするならMacBookでよいという話かもしれません。

●過剰な性能面以外にも、さまざまなハードウェア的ネックがある

 性能面では特には気になりません。となると、後は「どこまで快適に利用するためにハードウェアに投資するか」になります。

 まずはセキュリティ機能です。10.9インチiPad(第10世代)や「iPad Air」はボタンに内蔵された指紋センサーを使います。私はタブレット以上のサイズは顔認証が基本だと思っています。というのも、スマホサイズであれば指紋認証は指を動かすレベルのお話ですが、iPadの大きさとなると「腕ごとわざわざ指紋認証しにいく」行為が必要になるためです。顔認証であれば、この問題は起こりません。

 次にディスプレイです。iPad Airは使ったことがないため割愛しますが、10.9インチiPad(第10世代)とiPad Proを見比べてしまうと、その表現力に違いを感じます。リフレッシュレートの違いについても顕著です。

 また、これは個人的な感覚かもしれませんが、目の疲れが10.9インチiPad(第10世代)の方が強いと感じます。昔、「iPhone 12 Pro Max」と「iPhone SE」を同時に使っていたことがありますが、この時もiPhone SEの方が疲れを感じました。

 10.9インチiPad(第10世代)のディスプレイの質が悪いとは言いませんが、より良いものを知っていると“差”は分かってしまいます。しかし、ビジネス利用に致命的な影響があるかというと、そうではないでしょう。

●オプション品も悩ましい

 極め付きは「Apple Pencil」です。使い勝手や反応ではなく「本体にマグネットで装着できるか」が大きな違いとなります。10.9インチiPad(第10世代)が対応しているのは「Apple Pencil(USB-C)」か「Apple Pencil(第1世代)」です。どちらも、ペアリングを含めて手間がかかります。

 ペアリングには有線接続が必須です。Apple Pencil(第1世代)の場合、Pencil側のコネクターがLightning端子であるため、専用の変換コネクターが必要になります。なんと、これがないとまずペアリングができないため、Pencilが利用できません。

 そして、もちろん充電にも有線接続が必要です。マグネットで充電できる第2世代モデルやApple Pencil Proの手軽さから考えると、これはマイナスポイントになるでしょう。

 「iPadを使うのはApple Pencilを使うため」という方も多いのではないでしょうか。この手間は使い勝手に地味に影響してきます。

 お絵かきなど、細かなタッチやホバー機能が必要な方はより上位のモデルを使う価値が出てくると思います。しかし、私のような「ただメモ書きができればよい」レベルであれば、正直、ペンの反応がよければ後はペン先の物理的な書き心地の問題だと感じます。「無線充電やマグネット装着のためにApple Pencil Proが必要」というのも、少しやりすぎな感はあります。

 そしてもう一つの悩みとなるのが、キーボードとトラックパッドです。ここではいったんサードパーティー製品は除いて考えます。

 10.9インチiPad(第10世代)に限らず、Apple純正のキーボード「Magic Keyboard Folio」(4万2800円)ははっきりいって価格と折り合っていません。まず、10~11インチiPadのキーボードはサイズの都合もあり、キーピッチは左右がやや変則です。(13インチ用は幅がとれるので問題ありません。)

 先ほども触れましたが、ファンクションキーとして使えるキーがないのもマイナスです。カバータイプとはいえ、高級キーボードといわれるようなクラスのキーボード感とは全く異なります。

 なお、細かなことを言うと、過去のiPadOSよりもキーボードの使い勝手は上がっています。ファンクションキーとしてよく利用する「平仮名」「片仮名」などの変換は、「Ctrl+j or k」などで代替できるのです。しかし、リモートデスクトップアプリを使ってWindowsを操作しようとすると、ファンクションキーがないのがダメージとなってきます……。

 そして、iPadの特徴を捨ててしまいかねない「重さ」(最も軽いWi-Fiモデルで約477g)もデメリットです。キーボード装着時は1kgを超えてしまい、横向き固定となってしまうのも大きなマイナスですね。そもそも、iPadOSの文字入力が、さまざまなプラットフォームでATOKを利用している私からすると作業ネックになります。

 このようなデメリットを受け入れて高価なキーボードカバーを購入するかは、決断が必要になります。そもそもキー入力の快適さを求めてキーボードを購入するのであれば「それはMacBookの方がよいのでは」というお話になってきます。

●10.9インチiPad(第10世代)と最新の11インチiPad Pro(M4)を同時に使った、率直な感想

 一般的なビジネス利用であれば、10.9インチiPad(第10世代)で特に問題はありません。しかし、最新のiPad Pro(M4)と比べてしまうと、やはりiPad Pro(M4)を触ってしまいます(金額感が全く違うのは理解しているので、比較してどうするのという感じもありますが)。

 まず、最新の11インチiPad Pro(M4)は薄くなったのが大きいです。重さは10.9インチiPad(第10世代)がWi-Fi+Cellularモデルで約481g、11インチiPad Pro(M4)が約446gなので、実はものすごく大きな差があるわけではないのですが、厚さの7mmと5.3mmは見た目からして違いますし、持っている時の感触が異なります。薄い方が心地よいですね。

 そして、Apple Pencilを本体に装着できるため、さっとペン書きしたい時に余計なストレスがないのです。そうした場面で顔認証の利便性も効いてきます。ディスプレイの質も言わずもがなです。

●最後は、コスパとの勝負

 しかしこのような差異は、ある意味ただの「こだわり」とも言えます。この使い勝手にどこまでこだわるかは、どこまで「iPad」という世界に投資するか次第だと感じます。どれだけ投資しても「iPad」なので、MacやWindowsの方が優位な点はいくらお金を出しても解決できません。

 生体認証の使い勝手、ディスプレイの表示品質、Apple Pencilに関してそれほど気にならないのであれば、税込み5万8800円で買える10.9インチiPad(第10世代)のコスパは大変優れていると思います。

 自身の利用用途とハードウェア的な使い勝手をどこまで求めるか──これがiPadの選択基準になると思います。

 それにしても10.9インチiPad(第10世代)は約1年半前に発売したモデルとはいえ、現在も快適に使えるというのは素晴らしいことだと思いますね。

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