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たくさん働いてくれたロボット掃除機に感謝とお別れを――アイロボットジャパンが神田明神で「ルンバ感謝祭」を開催

ITmedia PC USER 2024年6月10日 12時30分

 「ルンバ(Roomba)」はただのロボット掃除機ではない――アイロボットジャパン(iRobot)のルンバのユーザーには、新しいルンバを「お迎えする」と言い、利用中のルンバを「うちのコ」と表現する人が少なくないという。ペット、または我が子のようにいとおしく思うユーザーがいるのだ。

 今まで働いてくれていたルンバに、感謝の気持ちを込めつつ、“おはらい”をしてお別れしたい――そんなユーザーのために、アイロボットジャパンが「2024 ルンバ感謝祭」を神田明神(東京都千代田区、※1)で開催した。

 ルンバへの“おはらい”とはどのようなものなのか、そして参加したユーザーの心中は……? イベントの様子を紹介する。

(※1)神田明神の正式名称は「神田神社」で、周辺の108町会の氏神様として知られる

●祈祷、そしてお別れ――

 今回のルンバ感謝祭は、1年以上ルンバと暮らしてきたユーザー20組40人が参加した。小学生以下の子どもを同伴できるということで、数人の子どもの姿も見受けられた。

 イベントでは、使わなくなったルンバをおはらいした後、神田明神に“お納め”することになる。ユーザーたちは家族のように接してきたルンバをそれぞれ持ち寄っており、中にはシールなどでデコレーションしてルンバへの感謝の気持ちを“見える”ように表している人もいた。

 やがて時間がきて、巫女(みこ)による案内で各自ルンバを手にして儀式の行われる本殿へ向かう。ルンバとの“お別れ”の時間が迫る。

 雅楽の演奏が響き渡る本殿にオーナーたちが着席すると、神職による祈祷でルンバがおはらいを受け、その後に華やかな「巫女舞」と「福鈴の儀」が行われた。

 オーナーたちによる玉串拝礼の後、オーナーを代表して小学2年生の田中杏樹さんによる「ルンバあて感謝の手紙」の朗読が行われた。

 手紙には、4歳の頃からずっと部屋を掃除してくれていたルンバに「ゆきちゃん」という名前をつけて家族のように大切にしてきたこと、ゆきちゃんがやってきた当初、幼い弟がルンバを怖がっていたものの、そのうち仲良くなっていったこと、ゆきちゃんとお別れをするのは寂しいが、新しいロボットにも名前をつけて仲良くなりたいという決意、それでも家族みんなが“ゆきちゃん”を忘れることはないだろう――そんな感謝がつづられていた。

 なお、納められたルンバは、神田明神と同じ千代田区に本社を構えるリサイクル認定業者「リーテム」の東京工場に搬入され、資源として生まれ変わる。

 オーナーにとっては「新しい姿になって、どこかで巡り会えるかもしれない」――そんな期待につながるだろう。

●ルンバは「家族同様」「ワーママの力強い助っ人」「教育にも有利」

 2018年発売の「ルンバ e5」を納めに来た家族は、「まだ娘が幼かった頃は(ルンバが動き始めると)怖くて泣いていたが、大きくなるにつれて、どんどん仲良しになっていった。ルンバに乗るなどして、楽しく付き合っていたようだ。他にもいろいろしなければならないことがある中で、掃除だけでも任せられたルンバには感謝している。娘の成長と共にあったルンバと別れるのはやはり寂しい……」と語っていた。

 「感謝の御言葉」でルンバへの手紙を朗読した田中さんの家族からも、話を聞くことができた。

 杏樹が4歳、弟が1歳の頃にルンバがやってきて、3年半を共に過ごしました。ルンバには「ゆき」という名前を付けました。(手紙にもある通り)弟は最初のうち怖がって逃げていましたが、今では話しかけたり、どこかにはまっている時には助けたり、ダストボックスがいっぱいになっていると「捨ててあげて」と教えてくれたりするまでになりました。 「散らかっていると、ゆきちゃんが掃除できないよ」と声がけをすれば、子どもたちは自発的に床に散らかっているものを片付けてくれます。「ゆき」の存在は、教育にも良かったと思っています。 最初は、家事を楽にしたいとのことで導入したのですが、部屋の清潔さを保てることが、ここまで心の安定につながるのかと、感謝しかありません。「食器洗浄乾燥機」「乾燥機付き全自動洗濯機」と共に、現代の“三種の神器”だと思います。

 ちなみに、ルンバに「ゆき」と名付けたのは冬にやってきた(購入した)からとのこと。次は水拭きもできる“子”をお迎え予定で、名前は「なっちゃん」(夏にやってくるから)にすると、うれしそうに話してくれた。

●なぜ神田明神でルンバの「お別れ会(おはらい)」をやったのか?

 神田明神とルンバといえば、2023年末に行われた「煤(すす)納めの儀」にルンバ11台が登場したというニュースを思い出す人がいるだろう。

 ルンバを展開するアイロボットジャパンの本社は、東京都千代田区神田錦町にある。神田錦町の氏神様でもある神田明神は、「秋葉原」という通称で知られる千代田区外神田に所在しており(※2)、ITやサブカルチャーを積極的に取り入れる神社としても有名だ。

(※2)「秋葉原」という地名は本来、区境を挟んで外神田と隣接する東京都台東区のものである

 実はアイロボットジャパンは神田明神の氏子でもある。ただ、それだけでは先日の煤(すす)払いの儀、そして今回の感謝祭を開催する理由としては薄い。

 その点について、神田明神の権禰宜(ごんねぎ)で、広報担当を務める加藤哲平氏はこう語る。

 日本には「モノにみ霊が宿る」という考えがあります。は針供養や刃物供養など、仏教でこれまでお世話になったモノを「供養する」と言いますが、神道では同じ感謝でも供養という言葉を使わない。 そこで今回、感謝祭という儀式という形を取ることにしました。

 通電するプロダクトのおはらいは初めてだったそうだが、「み霊が宿るのは(ロボット掃除機も)同じこと。それを清めて、おはらいできて良かった」と語る。

 さらに加藤氏は、アイロボットジャパンだけでなく、同じ千代田区内にあるリサイクル業者のリーテムも関係するようになったことについて、次のように話してくれた。

 神田明神は、縁結びの神を祭る神社でもあります。(2023年に行った)煤納めの儀でアイロボットジャパンさんとの御縁をいただき、そのニュースを見た再資源化企業であるリーテムさんからもお声がけいただいた。神社が両社の架け橋、縁結びのきっかけになれたと考えています。 今回、感謝祭という形で両社の御縁を目に見えるものにできました。氏子さん同士をつなげる、コミュニティーを作る役割を与えてもらったのはすてきなことだと感謝しています。

 今回の感謝祭には「2024」という西暦年が頭についている。もしかしたら来年(2025年)も開催されるかも……と期待するのは筆者だけではないはずだ。

 これまで働いてくれた家族同然のルンバにふさわしいお別れイベントが恒例行事になる日が、そう遠くない未来にやってくるのかもしれない。

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