Infoseek 楽天

「Copilot+ PC」なら最高のAI経験を得られる? リコールやコクリエイター機能を使ってみた

ITmedia PC USER 2024年6月17日 17時30分

 日本マイクロソフトは6月18日、新しいAI PCの要件を満たす「Copilot+ PC」の出荷を開始した。CPU/SoCにNPU(ニューラルプロセッサ)の搭載を必須とすることで、オンデバイスでのAI(人工知能)処理を高速化したことが特徴だ。

 発売に先駆けて、同社は6月17日にCopilot+ PCに関する説明会を開催し、そのメリットを報道関係者に説明した。

●「シリコン」「システム」「ユーザー体験」が変わるCopilot+ PC

 Copilot+ PCは、AI時代に向けて「シリコン」「システム」「ユーザー体験」を刷新した「これまでで最も早く、最も高性能なWindows PC」だという。

シリコン/システム:40TOPS以上のNPUの統合が必須に

 先述の通り、Copilot+ PCではCPU/SoCへのNPU統合が必須条件となる。ただNPUを搭載すれば良いだけではなく、ピーク時の処理性能を40TOPS(毎秒40兆回)以上とする必要がある。6月時点において、この要件を満たすCPU/SoCは以下の通りだ。

・Snapdragon X Elite(Qualcomm)

・Snapdragon X Plus(Qualcomm)

・Ryzen AI 300シリーズ(AMD)

・Lunar Lake(開発コード名)(Intel)

 日本マイクロソフトによると、Snapdragon X Eliteを搭載するCopilot+ PCは「5年前のPC比で最大5倍の性能」を備え(※1)、最大22時間のローカルビデオ再生が可能だという。そこにNPUによるオンデバイスAI処理を加えることで、より快適なPCライフを送れるという。

「CINNEBENCH 2024」におけるCPUテスト(マルチコア)のスコア

 Windows 11 Proをプリインストールする一部モデルは「Secured-Core PC」にも準拠しており、より高いセキュリティを実現できるという。

ユーザー体験:Copilot+ PC専用機能も用意

 Windows 11には、今後Copilot+ PC限定の機能が順次提供される。ただし、一部は「Windows Insider Preview」の参加者向けプレビュー版としての提供となる。

【リコール】

 「リコール」機能は、PCの操作履歴を“画像で”保管しておくことで、文字列(日本語を含む6言語に対応)またはタイムラインで振り返れる機能だ。

 例えば「あるグラフを見た記憶があるけど、どのアプリで見たのか忘れた」という時に「円グラフ」とテキスト検索すると、円グラフを表示したアプリを一覧表示してくれる。あるいは「海と子どもが写った写真を画像検索したけど、どこのサイトで見たか忘れちゃった」という場合にも、「海と子ども」でテキスト検索すると、キーワードに当てはまる表示を過去のウィンドウから探し出してくれる。

 操作履歴の画像は四六時中ずっと保存しているわけではなく、ウィンドウ/タブの切り替えやデータの保存操作など、タイミングを見計らって保存される。履歴の保存を含めて、本機能はオンデバイスで処理が完結するようになっているため、プライバシー面でも安全だ。

 なお、本機能は当初、Insider Previewの参加者向けにプレビュー版として提供される。また、利用を希望する場合は、Windows Hello(生体認証)を有効化した上で、ユーザー自らが機能を有効化する必要がある(オプトイン式)。さらに、利用するには、ストレージについて以下の要件を全て満たさなければならない。

・容量が256GB以上であること

・少なくとも50GB以上の空き容量を確保すること

 リコール用に予約されるストレージの容量は、元々のストレージ容量によって以下の通りとなる(かっこ内は設定可能な予約容量)。ただし、予約容量にかかわらず、ストレージの残容量が25GB以下となるとリコール機能は自動的に無効化される。

・ストレージ容量が256GB:25GB(10GB)

・ストレージ容量が512GB:75GB(25GB/50GB)

・ストレージ容量が1TB以上:150GB(25GB/50GB/75GB/100GB)

 リコールで保存した画像の保存期間は3カ月間で、予約容量を超過した場合は古い順に自動的に削除されていく。

【コクリエイター】

 「コクリエイター(Cocreator)」機能は、新しい「ペイント」アプリに組み込まれる生成AI機能だ。本機能もプレビュー提供だが、Copilot+ PCであれば誰でも利用できる。

 一般的に「画像生成AI」というと、プロンプトを入れると、それに従って画像が生成されるというイメージだが、コクリエイターはペイントアプリで作った(または開いた)画像に対して、プロンプトで指示をするとそれっぽい構図の画像を生成するものとなる。

 例えば赤い丸を描いて、その下に黒い波線を描き、さらにその下を水色で塗りつぶした後に、Cocreatorに「夕日の海辺の風景」と打ち込むと、自分で描いた構図に近い、それっぽい画像を生成してくれる。生成のレベルは「創造性スライダー」を左右することで調整可能だ。

 なお、現時点ではプロンプト入力は米国英語に最適化されており、他言語(日本語など)では処理に時間が掛かる可能性があるという。また、イメージの生成など、本機能の処理の大部分はローカルで行われるが、一部に“あえて”クラウド処理を加えている。これは「責任あるAI」を提供する観点によるもので、ユーザーが不用意に著作権や肖像権を侵害しないようにするための配慮だという。

 また、コクリエイター機能を使って生成された画像には、C2PA規格に準拠した来歴情報も付与される。

【イメージクリエイター】

 「イメージクリエイター(Image Creator)」は、「フォト」アプリに組み込まれる生成AI機能だ。

 コクリエイターとは異なり、こちらは一般的な画像生成AIと同様にプロンプトに従って新しい画像を生成する。ただし、コクリエイターと同様に、大部分の処理はオンデバイスで行いつつ、一部の処理を意図的にクラウドで行っている。

 既存機能にも、Copilot+ PC限定で利用できるものが用意される。

【Windows Studio Effects】

 Webカメラの映像にリアルタイムで補正や加工を加える「Windows Studio Effects」は、現行ノートPCの多くのモデルで利用できるようになった。

 Copilot+ PCでは、本機能のフィルターにおいて追加の「クリエイティブフィルター」を利用できる。クリエイティブフィルターは「イラスト」「アニメーション」「水彩画」の3種類が用意されており、従来通りアプリ側での特別な対応なく利用できる。

【ライブキャプション】

 Windows 11では、アクセシビリティーを向上する機能の1つとして「ライブキャプション(Live Caption)」機能をバージョン22H2から搭載している。その名の通り、ライブキャプションはPCから出力される音声をリアルタイムに文字に起こす機能だ。

 搭載しているNPUを生かして、Copilot+ PCでは日本語を含む44言語を、英語にリアルタイム翻訳して字幕表示する機能が追加される。この処理は完全にローカルで行われる。ただし、現時点では「英語から他言語への翻訳」「他言語から他言語への翻訳」には対応していない。

この記事の関連ニュース