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「Apple Vision Pro」 を手にしたら、周囲の人に体験機会を提供しよう!

ITmedia PC USER 2024年7月3日 12時5分

 「Apple Vision Pro」 がついに日本でも発売しました。米国に次ぐ発売地域となり、欧州よりも早いというのは意外であり、うれしく思いました。

 個人的にも注目している、AR/MR/VR界ですが、これらの成熟と共に新たな仕事術や生活スタイルが生まれてくると考えています。私自身、これまで「Meta Quest」「XREAL」といったガジェットのレビューや、創業者へのインタビューを行ってきました。

 そうした中、もちろんVision Proについても大いに興味を持ってきました。2020年、iPad ProにLiDARを搭載したあたりから「いよいよ3D空間の創出に向けて本格的に動き出したな」と感じたものです。

 米国で発売したタイミングで手に入れたい思いもありましたが、購入のために時間を割くのは難しかったため、大人しく待っていました。日本で発売が決定してすぐに予約し、無事に発売日に手にすることができました。

 米国では既に発売されているということもあり、Vision Pro自体のレビューは数多く出ています。しかし、Vision Proはまだまだ未成熟で、これからソフトウェアやアプリと共に成長していく製品です。

 そこで、Vision Proについてもこの連載で体感した仕事術を都度お伝えしていければなと考えています。

 初回となる今回は「Vision Proができること」……と言いたいですが、違います。まずは、多くの方に体験してほしいと感じました。

 Vision Proを手にされた方が周囲に体験してもらうためにはどうすればよいか。また、体験する方は何を知っておけばよいか。今回は、そんな内容をお伝えできればなと思います。

●Vision Proを所有する、今しかない価値。それは「体験を提供できる」ということ

 Vision Proは、まず価格が「高い」と話題になります。ただし、今はこの壁は越えられません。価格について議論しても不毛なので、ここでは価格について無視します。

 私もARやVR機器をいろいろと体験してきました。しかし、この手の機器は実際に体験してみないと本当の感覚は分かりません。体験したことがない方からすると、なかなかイメージできないものです。

 例えば「このテレビの黒は本当に黒く見えるよ」「このスピーカーの重低音はすごいよ」「といった、既に触れたことのある技術の延長線であれば、ある程度イメージが湧くかと思います。しかし、VRのような機器を体験したことのない方は、情報を見るだけでは感覚がつかめません。

 そう、この記事を読んでいただいても、Vision Proのスクリーンショットを見たとしても、普通のディスプレイで見るかぎり本質は伝わらないのです。

 これはVision Proを入手された方へのお願いです。ぜひ周囲の方に“体験”を提供して頂きたいです。多少興味がある程度では、わざわざApple Storeの体験に行くことはないでしょう。

 現在の最高水準の技術を使ったVision Proが、どこまで表現できるのか。何がまだ未成熟なのか。そうした状況を体感するだけでも、ビジネスパーソンとしてアイデアは広がるでしょう。

 "仕事術"としてのVision Proの使い方。それは、リアルコミュニケーションへの活用です。

 皆さま、多少なりともVision Proに興味はあるでしょう。これが「Appleが出した」という威力だと思います。打ち合わせ後など、そうした会話を多少でもすると、コミュニケーションは盛り上がるでしょう。

 そして、オンラインではなく対面打ち合わせであれば……ぜひ持参したVision Proを体験いただきましょう。これはコミュニケーションという面だけではなく、最高峰のVR体験をすることで、ビジネスへのアイデアや、できることの限界などを感じ取れます。もしかしたら、新しいビジネスにつながるかもしれませんし、他社に先駆けてそうした対応に着手できるかもしれません。

 これぞ、発売直後の今ならではの、Vision Pro活用方法だと思います。私もできるかぎり持参しますので、その際はぜひお試しください!

●ゲストモードを使おう

 さて、では「人に使ってもらう」ためにはどうしたらよいか。実はVision Pro自体に「ゲストモード」という、所有者以外に使ってもらうためのモードが用意されています。

 iPhoneなどと同様に、Vision Proは自身のApple IDにひも付いたパーソナルな機器です。メールアプリといった個人情報たっぷりのアプリも使えるため、プライバシーの観点からもうかつに貸せません。Apple IDを変更するのであれば、本体を初期化して渡す必要があり、現実的ではないでしょう。

 ゲストモードを使えば、制約をつけた状態で試用してもらえます。

 そんなゲストモードですが、それでもさっと貸せるわけではありません。目線やハンドジェスチャーで操作するという特性から、ゲストが利用するたびに多少のセッティングが必要になります。

 操作説明やアプリの体験を考えると、1人あたり30分くらいは時間を確保した方がよいでしょう。打ち合わせの後、「30分くらいお時間ありますか?」といったところでしょうか。

 なお、ゲストモードで渡す際に「開いているアプリのみ」「すべてのアプリとデータ」のどちらかを選択することができます。使い始めるとパーソナルな情報も多くなるでしょうから、基本的には起動中のアプリのみを選択することになるでしょう。

●さらに、表示する準備が必要

 「ゲストモードにして渡すだけ」だと、難しい問題があります。それは、Vision Proは装着している人しかその画面が見えないため、操作のフォローなどが非常に困難だということです。

 しかし、この点もよく考えてあります。AirPlayを使って、Vision Proの画面を他デバイスで表示できるのです。そして、これはiPadを使うこともできます。個人的にはMacの画面に表示するより、iPadの方がビュワーとしては扱いやすいな、との印象です。

 Vision Pro側から送信操作をしますが、その前に、iPad側で受信できる設定が必要です。「iPadの設定>一般>AirPlay&Handoff」で、AirPlayレシーバーの設定をオンにしておきましょう。

 また、Wi-Fi環境が必要となるので、環境がない場合はiPhoneのテザリングでVision ProとiPadをぶら下げましょう。

●その他、留意点

 その他、気にしておいた方がよい点です。

 完璧なフィッティングが求められるのがVRゴーグルです。Vision Proはアイトラッキングを活用した操作となるため、より、繊細なセッティングが必要になります。本体と顔を設置する部分(ライトシーリング)の形状はかなりの種類があるらしく、自分のものがそのままフィッティングする可能性は低いかもしれません。

 また、ライトシーリングの接点となるライトシーリングクッションも幅のバリエーションがあるようです。Vision Pro購入前に、FaceID機能を活用して顔の形をスキャンしますが、このサイズを選定しています。Appleのフィッティングへのこだわりが感じられます。

 ゲストとしては物理的にどうしようもないため、自分のVision Proであればもっとフィットして使えるよ、ということはお伝えしておきましょう。よりよいフィッティングを試したい時は、素直にApple Storeに行きましょう。

 そして、メガネやハードコンタクトは利用不可です。視力が悪い場合、ソフトコンタクトは必須となります。多少の近視くらいであれば取りあえずはそのまま使えると思いますが、ベストではない点、注意しましょう。購入者自身は、メガネ相当のオプティカルインサートを作成できますので、その場合はソフトコンタクトも不要です。

 また、顔を密着して使う道具です。そうした事が気になる方、お化粧されている方などに向けて、消毒品やケアグッズなどは準備しておいた方がよいかもしれません。

●ゲストモードに入る手順

 さて、準備が多少大変かもしれませんが、慣れてしまえば流れ作業になるかと思います。おおよそ以下の流れとなります。

(1)ゲストモードの準備をする

 自分がVision Proを装着し、使ってもらいたいアプリを起動します。次に、iPadなどの表示機器を起動し、AirPlayを受信できるようにします。制限付きで渡す場合は「環境」の画像(いわゆる、バーチャル空間の背景です)も、見てほしい画像に変更しておきましょう。

 なお、逆に、不要なアプリを終了しておきたい時は、強制終了させてしまいましょう。トップボタンとDigital Crownを同時に長押しすると、アプリを選択して強制終了させることができます。

(2)ゲストモードに設定

 iPadなどにビューミラーリングを設定しつつ、ゲストモードをオンにしましょう。オンにすれば、自身はVision Proを外してしまって大丈夫です。オプティカルインサートを使っている場合は、ここで外しましょう。マグネット装着ですので、扱いが楽ですね。

 ミラーリング設定がうまく動作していれば、Vision Proを外してもiPad側は継続してミラーリングされたままの状態となります。

(3)ゲストの設定

 ゲストが装着し、画面に従って操作設定をしていきます。主にアイトラッキングの設定です。2~3分あれば完了できると思いますが、iPad画面を見ながらフォローしましょう。

 なお、Vision Proを持つ部位に困る可能性もあります。ライトシーリング部分はマグネット接着のため、外れて落とす可能性があります。一度外してみて、ここを持つと外れるかもしれない旨を伝えておくと安心でしょう。

(4)ゲストに使ってもらう

 起動しておいたアプリウィンドウがそのまま残った状態で再開されます。操作をフォローしながら、体験してもらいましょう。

 なお、個人的に面白いなと思ったのは、予備知識がない方が操作すると、手をタップしたい部位に持っていき、タッチパネルのように操作しようとする点ですね。その方が直感的ではありますが、続けると非常に疲れそうです。目線を活用することで、手を膝に置いたままで操作できるのは、慣れは必要ですがよくできているなぁと思います。

(5)ゲストが外し、元に戻す

 ゲストがVision Proを外すと、自動でゲストモードは終了します。オプティカルインサートなど、忘れ物をしないようにしましょう。

後は「〇〇なことが出来そうだね」「〇〇は出来ないのかな」など、盛り上がりましょう。

●現実空間は究極ではないが、他機器に比べるとレベルが高い

 Vision Proを体験する前に、今までどのようなAR/VR経験があるかで感想が変わってくると思います。他の機器がどのようなレベルなのかを知っておくのも、1つ、有益な情報かと思うので、私の体感をお伝えします。

 一番の競合は、Metaの「Quest 3」でしょう。

 Vision Proで表現していることと、ほぼ同じことができます。また、Meta Quest 3はコントローラーがあるので、ゲームなど、シーンによっては有利になることも多いと思います。

 しかし、やはりハードウェア性能の差か、Meta Quest 3だと空間としての快適さが劣ります。現実空間の表示にやや粗さがありますし、手を動かしたりするとその部分がゆがむことがあります。アニメや映画の表現において、時空がゆがむようなイメージでしょうか。また、ハンドトラッキングも機能としてはありますが、精度が違います。アイトラッキングは非搭載であるため、手をボタンの方に向けて操作する必要もあります。

 Vision Proの目線を使った操作はかなり直感的に違和感なく操作できてしまうので驚きがスルーされがちですが、それは現代の技術だとかなりすごいことなんだと伝えましょう。

 また、ARグラスであるXREALとの比較についてです。

 XREALでの画面の表示はかなりキレイですが、機能が拡張できるXREAL Beamといった機器を使っても、「空間にウィンドウを固定する」という実力はVision Proの方が上です。それくらい、Vision Proは空間上での位置がズレません。

 また、XREALは目で一度に見える範囲が狭いです。これは搭載されているディスプレイが、本人の視野の一部にしか該当しないためです。目の上あたりの一定の範囲に投影しているイメージでしょうか。

 なので空間にディスプレイを浮かせたとしても、大きな画面表示にすると、一度に全ての範囲が表示できません。顔を振って見る必要があるのです。この点、Vision Proは見える範囲は全て描画されますので、違和感がありません。

 また、XREALはどうしてもスマホなどで画面内を操作する必要があります。ハンドトラッキングで操作できるVision Proは、別格の使いやすさだと思います。

 当然、それぞれの価格は大きく違いますし、製品特性もかなり異なります。そうした違いも踏まえて、Vision Proを楽しめればよいのかなと思います。

●仕事でも、使い始めています

 まだ体験したことのない方が多い、新しいジャンルの製品です。今しかないこのタイミングを生かして、ぜひ、コミュニケーションツールの1つとして活用しましょう。

 使い始めて日は浅いですが、自身の仕事への活用も始めています。

 Vision Proは、言ってみればiPadのようなものなので、単体で稼働します。また、Bluetoothキーボードを接続することもできます。

 ということで、この記事の原稿はVision ProのMicrosoft Wordアプリで書きました。物理キーボードとしては、はるか昔に購入したApple Magic Keyboardを利用しています。なお、Bluetoothキーボードであれば直接接続できるようなので、Apple純正である必要はなさそうです。

 「Vision Pro+物理キーボード」のセットがあれば、普通に文字書きが可能です。場所の制約はほぼなく、ノートPCやディスプレイを置くスペースも不要です。変な話、壁に向かって書くこともできます。環境の自由度が高いですね。また、音声入力もかなり実用レベルで入力ができます。

 こうした実用面は、今後のレビューでお伝えしていければと思います。

 実はVision Proが先に米国で発売してから多くのレビュー記事が出ておおよそどんなものか分かってしまいました。そのため、日本発売が決定してもテンション低めで購入するか迷ったのは正直なところです。しかし、実際に手に取ると非常にワクワクする製品でした。この後も、さまざまな使い方をしてみたいと思います。

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