Infoseek 楽天

Shokzの“耳をふさがない”イヤフォン「OpenFit Air」と「OpenSwim Pro」どちらを選ぶ?

ITmedia PC USER 2024年7月17日 12時5分

 今では、すっかりメジャーになった耳をふさがない系のイヤフォン。各社からさまざまなタイプが発売されており、Shokzも2024年5月に新製品となる「OpenFit Air」と「OpenSwim Pro」を発売した。

 Shokzといえば骨伝導イヤフォンのイメージが強いが、2023年には独自の「DirectPitchテクノロジー」を採用したという同社初の耳をふさがないオープンイヤー型のイヤフォン「OpenFit」を発売しており、OpenFit Airは、その廉価モデルとなっている。

 もう1つのOpenSwim Proは、Shokzが得意な骨伝導イヤフォンだ。名前の通り水泳でも利用できるモデルとなっている。基本的な動作は一般的なBluetoothイヤフォンと同じだが、MP3モードを搭載しており、水中のようなBluetooth接続が利用できない場面でも、イヤフォン単体で音楽再生できる。

 この2つのモデルを短い時間ではあるが試用したので、どういった特徴がある製品なのか、簡単に紹介していこう。

●オープンイヤー型イヤフォン「OpenFit Air」

 OpenFit Airは耳をふさがないオープンイヤー型のイヤフォンだ。オープンイヤー型イヤフォンは、外耳道(耳の穴)をふさがないことで、装着したままでも周囲の音が聴け、そのまま会話も行えるというもの。耳をふさがないというのはメリットである反面、没入感に乏しく、音漏れが気になるというのがデメリットとなる。

 こうした問題のため、オープンイヤー型は音楽をじっくりと楽しむというよりも、ランニングやウオーキングなどのワークアウト中でも周りの音が聴こえるようにしたり、一日中装着して過ごし、BGM的に音楽を流し続けたりといった使い方に向いている。

 それでも、OpenFit Airは、DirectPitchテクノロジーによって、音質面にも力を入れている。音源と耳の距離と角度を最適化するために逆向きの音波を利用することで、耳に向かって相対的に音圧が大きくなり、外耳道以外の方向への音圧が小さくなるという。これにより、音が明瞭になる他、音漏れが少なくなるとしている。

 耳に入れない形状のため、ドライバーを大型化できるのも音質面のメリットだ。18×11mmのコンポジット・ダイナミック・ドライバー・ユニットを搭載しており、バランスの取れた高音、中音、低音を実現している。特に低音に関しては、独自の低音強化機能であるOpenBass Airを搭載しており、オープンイヤー型とは思えない厚みのある低音を感じさせてくれる。

 このOpenBass Airの効果を最大限に発揮するため、イヤフォンユニットは耳の内側にフィットするよう緩やかなカーブを描く形状となっている。耳への収まりも良く、ウオーキング中でもずれてしまうようなことはなかった。

 形状面では、「Airイヤーフック」と名付けられたイヤーフックにも特徴がある。0.75mmのニッケルチタン形状記憶合金を芯材として、周囲をソフトなシリコンで覆っているのだが、その断面はティアドロップ状にデザインされている。下側(耳に接する側)を大きくすることで、圧迫感を最小化している。そして上側を小さくすることで、メガネに干渉しづらくなっている。

 実際、ツルが細いメガネなら干渉はほとんど気にならない。ただし、ある程度の太さがあるメガネだと、やはり干渉はする。干渉はするが、イヤフォンの付け外しでメガネがずれる、メガネの付け外しでイヤフォンが落ちてしまうというほどではない。このあたりは、実際に試して確認するしかないが、あまり心配する必要はないだろう。

 音質面では、低音から高音までかなりクリアに聞こえる。厚みのある心地が良い低音の他、高音域も非常に抜けがいい。このあたりはオープンイヤーならではの開放感も関係しているのだろう。ただ、ANC(アクティブノイズキャンセル)があるわけではなく、周囲の音も一緒に聞こえてしまうので、没入感には乏しい。やはり、音楽を集中して聴くというよりも、何かしながら音楽を楽しむという“ながら聴き”に向いているといえるだろう。

 なお、専用アプリ「Shokz」から「スタンダード」「ボーカル」「低音強め」「高音強め」の4つのイコライザ・モードを変更できる。上位モデルのOpenFitでは、自分好みのオリジナル設定を追加できたが、OpenFit Airではカスタマイズには対応していない。

 オープンイヤーということで音漏れが気になるところだが、これが予想外に少なかった。音楽を再生しながら耳のすぐ横で音を録音してみたのだが、耳に密着させなければほぼ聞こえない。また、オープンイヤーに限らず、イヤフォンを装着した状態で耳を手で覆うと音が増幅されることがあるが、これはOpenFit Airではこれも感じることがなかった。つまり、外に音がもれていないということだ。

 周囲が騒がしいと音が聴こえづらくなるので、電車内や人混みの中では使いづらいが、そうした環境でも音漏れを心配する必要はなさそうだ。

 ちなみにマイク性能も優秀だ。こちらも自分の声を録音して確認したが、エアコンやすぐ横で3Dプリンタを動作させても、その騒音はまったく気にならなかった。公式の説明によると、アダプティブフォーミングとcVc8.0により、周囲の騒音を96.5%低減するという。

●骨伝導イヤフォン「OpenSwim Pro」

 OpenSwim Proは、Shokzではおなじみの骨伝導タイプのイヤフォンだ。左右がつながりネックバンドが後頭部にくるデザインは、Shokzらしいと言ってもいいだろう。

 本製品はProというネーミングで、無印の「OpenSwim」も販売されている。しかし、あちらはBluetoothに非対応のMP3プレーヤーだった。水泳や他のワークアウトでお気に入りの音楽を聞くことだけを考えるならこれでも良いのだろうが、OpenSwim ProはBluetooth対応になったことで、一般的なイヤフォンと同様にスマートフォンと接続してサブスクリプションを含めてさまざまな音楽を楽しめるようになった。

 BluetoothイヤフォンとMP3プレーヤーの切り替えは、Shokzアプリで行える他、本体のファンクションボタン、あるいは音量ボタン上下の同時押しで行える。この辺りの操作はアプリから変更が可能だ。

 MP3プレーヤーとして利用するには、まず本体に音楽を格納する必要がある。ストレージ容量は32GBだ。音楽の転送には、付属の充電ケーブルを利用する。このケーブルをPCに接続してPC経由での転送となる。残念ながらアプリを利用してBluetooth経由で転送することはできない。対応しているフォーマットはMP3/FLAC/WMA/WAV/AAC/M4A/APEと幅広い。

 MP3モードでの音楽再生は、「順に再生」「シャッフル再生」「1曲リピート」を選べる。本体の音量「+」ボタンと「マルチファンクション」ボタンの同時長押しでも切り替えられる。

 装着感については、これまでの骨伝導イヤフォンと同様に、耳に引っかけるというより本体のバネ性でこめかみに左右から押し付けるというイメージだ。このため、初めは違和感があるが、しばらくすれば気にならなくなる程度だ。

 メガネとの干渉は多少あるが、あまり気にならない。装着時にはメガネを外した方が楽かもしれないという程度で、装着さえしてしまえば多少メガネのツルが太めでも問題はないだろう。

 基本的には四六時、中身に着けて使うものではなく、ワークアウト時の使用を想定した製品だと思うが、装着感が軽いので普段から身に着けていても問題はないだろう。バッテリー持ちもBluetoothモードで9時間、MP3モードで6時間と1日使うには十分だ。マイクも搭載しており、通話やビデオ会議などでも利用できる。

 音質に関しては、OpenFit Airと比べてしまうと、全体的に物足りなく感じる。低音は比較的良好だが、中高音の伸びやかさ、きらびやかさといったものは感じにくい。ただ、骨伝導だということを考えると十分だろう。

 Shokzアプリからはイコライザの設定も可能だ。といっても、豊富に用意されているわけではない。Bluetoothモードでは音楽を聞くための「スタンダードモード」と、オーディオブックやポッドキャストなど人の声に最適化された「ボーカルモード」の2つを利用できる。

 ボーカルモードは、名称からするとボーカル曲でも利用できそうだが、確かに人の声は聴きやすくなるものの、それ以外が抑制されて、かなり薄っぺらい印象になってしまった。説明通りにオーディオブックなど、声がメインの用途向けと割り切ったほうが良さそうだ。

 MP3モードでは、スタンダードモードの他、スイミングモードが利用できる。実際に試したわけではないが、水泳時に特化した特別モードとのことだ。なお、このモードを使用する際には、付属の水泳用耳栓の併用が推奨されている。

●どちらを選ぶかは用途次第

 OpenFit Airの価格は1万9880円、OpenSwim Proは2万5880円(いずれも税込み)だ。筆者としては、性能的にも音質的にも、大多数の人にはOpenFit Airをおすすめしたい。ただし、OpenSwim Proは水中でも使えるという特徴がある。MP3モードがあるので、スマートフォンを持たなくても音楽を楽しめるのがメリットだ。

 プールをよく利用する、ウオーキングやランニングなどはスマートフォンも持たずにできるだけ身軽に行いたいと考えているなら、OpenSwim Proのほうが向いている。

 どちらの製品も、Shokzの技術力が生かされた高性能なイヤフォンだ。運動する間だけ使うのか、一日中装着していたいのかなど、自分の生活スタイルに合わせて選択するといいだろう。

この記事の関連ニュース