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「Nature Remo Lapis」は節電機能にフォーカス! 新タイプのスマートリモコンを試して分かったこと

ITmedia PC USER 2024年7月18日 11時5分

 スマートリモコン「Nature Remo」の新型モデル「Nature Remo Lapis」が登場した。本物の石を模した外観が目を引くが、スマートリモコンとしての実力はどうなのだろうか。メーカーから機材を借用したので、レビューをお届けする。

●機能面は一般的なスマートリモコン 壁掛けには非対応

 本製品は、赤外線リモコン搭載の家電製品を登録することで、スマートフォンアプリからの操作を可能にする、いわゆるスマートリモコンと呼ばれるカテゴリーの製品だ。本製品を室内に設置しておけば、屋内外を問わず、さまざまな赤外線リモコン対応の家電をスマホから操作したり、スマートスピーカーと連携させての音声によって操作したりが可能になる。

 見た目のデザインこそ突飛だが、スマートリモコンとしての機能は一般的だ。表面には赤外線信号の送信部が、裏面には給電用のUSBポートがある設計は従来通りだし、内部のLEDがステータスによって発光するのも変わらない。

 さらに、温度センサーおよび湿度センサーを搭載しており、これらの測定値をトリガーに、エアコンを自動運転するといったオートメーション操作にも対応する。ちなみに、過去の一部モデルにあった人感センサ―および照度センサーは省かれている。

 スマート家電の共通規格「Matter」にも対応しており、最大20台までのデバイスを接続できる。同じくMatterに対応した従来モデル「Nature Remo nano」は最大3台までだったので、大幅に数が増えたことになる。Matterに対応していることで、Appleのホームアプリから扱えるのはメリットだ。

 この他、特定メーカーの家電製品との連携もいっそう強化されており、従来の「SESAME 5」や「Qrio Lock」などに加えて、今後は「Philips Hue」にも対応予定としている。きちんと実装されれば利便性が向上するのは間違いなく、こういった方向での進化は歓迎したいところだ。

 そんな本製品の利用にあたっての最大の注意点は、壁掛けに対応しないことだ。従来のNature Remoのほとんどのモデルは裏面のフック穴を用いての壁掛けをサポートしていたが、本製品はフック穴がないため、デスクや棚の上に置いて使わざるを得ない。壁掛け可能な従来モデルと入れ替える場合は、このことはネガティブな部分になるだろう。

 もともと本製品は本物の石のようなデザインゆえ、壁に掛かっているのはデザイン的にも不自然で、リモコン信号が届けば壁掛けができなくても構わないという見方もあるだろうが、そもそもスマートリモコンを壁に掛けて使うのは、デスクの上にこういったデバイスを置きたくないニーズも多くを占めるはずで(筆者がまさにこれである)、個人的にはこの時点で買い替え候補から外れてしまう。次期モデルでは再考を要望したい。

 なお、試しに本製品を稼働中の「Nature Remo mini 2」と入れ替えてみた限りでは、壁掛けが床置きになったからといって、リモコン信号が届かなくなることはなかった。よってリモコンの信号さえ届けば置き方はこだわらないという人にとっては、特にネックにはならないはずだ。

●設定手順は従来と変わらず ケーブルはサイズに注意?

 アプリ上での表示や赤外線リモコンの登録手順などは、ざっと見た限りでは従来モデルと変わらない。Nature Remoはローカル内に複数の製品が存在した場合、家電製品ごとにどのNature Remoで操作するかを選べるので、既存のNature Remoが導入済みの環境に本製品を追加して家電製品の操作元として選択すれば、既に登録済みの家電製品をすぐに操作できるようになる。

 気をつけたいのは、本製品には接続用のUSBケーブルが付属していないことだ。ケーブルの仕様自体は100均ストアで購入できる一般的なものなので、余っているケーブルがあればそれを使えばいいし、買うにしてもコスト的な負担はほぼないが、ケーブルコネクターを収める裏面のくぼみがかなり小さく、ケーブルが収まりきらない場合があるのが困りものだ。

 実際、手元にあった100均製のケーブルを使おうとしたところ、付け根の部分が収まらず奥まで差し込めないという事態に遭遇した。ハウジング部がそれほど大きいとは思えないケーブルでもこれなので、同様の事態が起こる可能性はそれなりに高そうだ。ユーザーがケーブルを用意しなければいけないのならば、設計の段階で本体側のマージンを大きく取っておくべきで、ちょっといただけないというのが個人的な感想だ。

 このように、スマートリモコンとしての機能はこなれている一方、設計については少々ツッコミどころが多い印象だ。デザインについては好き嫌いが出る部分なのでコメントを控えるが、ケーブルを差し込めない可能性があるのは別の問題だし、壁掛けという選択肢がないのは痛い。もう少しデザインや理念よりも、実用性が優先されてもよいのではないかと感じる。

●複数の節電機能を搭載 その設定方法と実際の効果は?

 本製品のもう1つの目玉である、節電機能について見ていこう。本製品は複数の節電機能が用意されており、どれだけの電気代が節約できたかをアプリ上で見ることができる。この機能は現時点で他のモデルには搭載されておらず、本製品だけの特徴ということになる。

 今回は、本稿執筆時点で実装済みの機能の1つである「オートエコ機能」を試してみた。これはエアコンのオン/オフを繰り返し、ユーザーの反応がなければオフの時間を徐々に増やし、ユーザーが自力で温度を下げるなどアクションがあればオンの時間を増やすといった最適化を繰り返し、トータルで節電につなげようという機能である。表現はあまりよくないが、ある種の“人体実験”を行っているようなものだ。

 利用にあたっては、エアコンのオートメーション機能で「〇〇度を上回れば冷房をオンにする」といった設定を追加し、その時にオートエコ機能をオンにする必要がある。本製品を導入しただけで自動的に有効になるわけではないため要注意だ。ちなみに節電を優先するか、それとも快適さを優先するかは3段階から選べる。

 今回、筆者がこれらの設定を行ったのは午後だったので、そのまま翌々日まで放置し、2日目にあたる24時間分の結果を確認したところ、40円の節約効果があったと表示された。詳細画面で運転履歴を見ると、2~3時間に一度のペースで冷房のオンとオフが繰り返されており、それらの積み重ねが節約につながったようだ。特に操作をしていないのにエアコンが「ピッ」と音を発することが何度もあったのは、どうやらこれらしい。

 この運転履歴には、それぞれの自動運転を評価する機能がある。エアコンをもっと長時間止めていても耐えられたのであれば「もっと頑張れた」を、耐えられずにエアコンを手動操作してしまった場合には「我慢できなかった」を選択すると、次回以降の自動運転にフィードバックされ、節電額が増えていく仕組みだ。特に何もしなければ「大丈夫だった」として処理されるので、ズボラな人はそのまま放っておいても構わない。

●よくできた節電機能だが一抹の不安も?

 以上ざっと節電機能を使ってみたが、仕組みとしてはよくできている印象を受けた。これが運転内容が全く開示されないブラックボックス状態であれば、かなりの気持ち悪さがあったはずだが、前述のように履歴はきちんと可視化されており、なおかつ各操作に感想をフィードバックすることで、ユーザー側の意思も反映される。節電額がどのくらい正確なのか確かめようがないのは気になるが、それでもオンにしておく価値はある。

 とはいえ、不明瞭な点はいくつかある。例えば本製品を経由せず、エアコンの純正リモコンで操作した場合にその結果がどう反映されるのか、本製品1台に対してエアコン1台ではなく、2つの部屋にある2台のエアコンをまとめて制御するようなケースではどうなるのかといった点だ。ユーザーが意図しないところで操作が行われることから、エアコンやリモコンの不具合や本製品の故障時などに、原因の切り分けがしづらくなる懸念もある。

 また本製品の節電機能はこれだけではなく、今回紹介しなかった「コスパ起動」「消し忘れ通知」「熱中症アラート」「快適指数表示」「バイタルデータ連携」といった機能が今後搭載予定であることが告知されている。今回の1つだけでも相当ややこしかったので、複数の機能が実装された時、使いこなすのはかなりの難関のように感じる。

 もちろん、使いたくなければスルーすれば済むため実害はないのだが、アプリの「みつける」タブが既に煩雑な状態にあり、UI的には危険な兆候もあるので、ユーザーが正しく使える機能となるかは一抹の不安もある。現状これら新機能のほとんどは予告されているに過ぎないため、興味を持った場合もきちんと実装され、使えると分かってから購入するくらいの慎重さがあってもよさそうだ。

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