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いかにラクして「Apple Vision Pro」を使えるか? 3Dプリンタ活用の奇想天外なアイデアを試行錯誤してみた

ITmedia PC USER 2024年7月19日 12時5分

 Apple Vision Proの日本発売を楽しみにしていた私は、実機を手にしてから毎日“チビチビ”と使用しています。チビチビというのは、ずっと装着するには重く、疲れるためです。

 Vision Proを仕事で活用するためには、まずはこの装着感をなんとかせねばと思い、いろいろと試行錯誤しています。その中で良さげだと感じた2つを紹介しましょう。

 「そこまでしてVision Proを使う必要あるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、私はこうしたことも含めて、使い方を楽しんでいこうと考えています。いろいろな発想をもって、より便利に、生産性が向上できるような使い方ができないかを探っていきたいです。

●そもそもは「デュアルループバンド」が良いのでは

 Vision Proは、最初は「ソロニットバンド」というものが装着されています。製品紹介などでも装着されている、後頭部を使い、ダイヤルで締め付けるバンドです。

 これ、非常に装着はしやすいのですが、締め付けて固定するので顔面が痛くなります。本体重量の約620gを頭部に締め付けるのは、なかなか厳しいものがあります。

 実は本体には「デュアルループバンド」と呼ばれる別のバンドも付属しており、こちらは頭上も使って支えるタイプです。Meta Questなど、他のヘッドセットでも採用されている一般的な方法です。

 やはり、頭上で支えられるというのは楽で、長時間着けるならこちらになると感じます。重力に逆らって顔の前後で支えるよりも、頭上で支えた方が楽なのは自明でしょう。私も普段はこちらを使用しています。ただし、装着はややしづらくなるので、そのあたりは仕方ないのかなと思います。

 もしデュアルループバンドに変えたことがない方は、ぜひ一度お試しください。

●楽に使う方法その1:頭を支える

 よく言われることですが、後頭部の後ろに支えがあれば、重さの負担はかなり軽減されます。デスクチェアでヘッドサポートがあるようなタイプだと、そこに頭を預けることでかなり負担は減るでしょう。

 Vision Proを快適に使うためにリクライニングチェアを買い換えたという方もいました。ポイントはVision Proの重さを顔ではなく、頭の後ろに持っていくということですね。

 ただし、これらの方法は顔の角度が上方45度(天井)くらいに傾きます。つまり、物理キーボードを机に置いて使いづらい状態となります。バリバリとビジネスワークをするというよりは、簡単にメールやチャットを確認したり、映画鑑賞といった休憩に使うのが主になりそうです。

 VisionOSの仮想キーボードで入力することも可能ですが、指一本でしかキーを押せないため、長文を書くにはストレスがたまります。

 ウィンドウ自体は天井に表示させるなど、100%自由です。表示に対する問題はないでしょう。仮想キーボードの入力が快適になれば、この方法は化けるかもしれません。

 私はさらに怠惰に、無印良品の「体にフィットするソファ」の快適さを知ってしまいました。このソファ、体がやや沈み込むのですが、Vision Proを装着して頭を預けると、完璧なフィットになります。

 スマホやタブレットですと、手で本体を持ちながら操作が必要になりますが、Vision Proの場合は指のみで操作できます。機器を持つ必要もないため、映画鑑賞のような動画系のみならず、Webブラウジングなどもスマホを超えた快適さだと感じました。体を動かす必要のない、危ない未来がやってくるのでは……という恐ろしさを感じたほどです。

●楽に使う方法その2:肩で支える

 次に、私が考えついた方法です。「この方法、真面目に製品化してもらえないだろうか……」と考えています。

 デュアルループバンドの利用や、その他の(非公式な)補助パーツを使い、顔・頭を活用して支える方法はいろいろと出てきています。悪くはないのですが、本体自体が軽くなるわけではもちろんないので「頭が重たい」のです。

 「では、他に使える部位はないか……?」と試行錯誤し、思い付いたのが肩で支える方法です。厳密には首を使う形になります。

 「ネックスピーカー」のように、首にかけて使うガジェットがあります。それらと同じように、首にフックのようにかけて、下からVision Proを支えようという発想です。つまり、重さが肩や首に方にきます。

 Vision Proは重いと言っても、約620gです。肩に乗せる重さとすれば、大したことはありません。こうした着想を、3Dモデリングを行い、3Dプリントしてみました。仮説の検証、ですのでデザインは考えず、かなりエイヤでプリントしました。長さも取りあえずは適当に作成しましたが……これ、真面目に重さの大部分がなくなりました!

 3Dプリンタは1回でプリントできる長さに限りがあります。私が所有しているFDM方式の3Dプリンタは最大256mm×256mm×256mmと、家庭用3Dプリンタでは大きい部類のものです。しかし、それでも顔の周囲を一度にプリントするには足りません。

 そのためジョイント部分を作って接続できるようにしたのですが、実はコレ、顔の可動範囲を広げたり、高さの微調整ができるようにとの意図もあります。中に詰め物をすれば、他のパーツの長さを変えなくても高さを変えられるわけですね。FDM方式でプリントしたものは固いので、全て固定してしまうと顔がまったく動かなくなります。

 Vision ProはMeta Questとは違い、本体から伸びている側面部分は固定で上下に動きません。そのため、逆に、下から支えても動くことがないのです。

 こうした実験を経て「肩で支えると楽では?」という仮説の有効性が見えました。この先、さまざまな部位を改良したバージョンを作ろうと考えています。各パーツはもっと細くしても、耐久性に問題はなさそうです。

●NGな使い方ですが、ライトシーリングを外せる可能性もあり

 この奇想天外!? なパーツを作り始めたのですが、使っていて、さらに気がついたことがあります。それは、Vision Proのライトシーリングを外せるということです。

 顔で支えるためにはライトシーリングは必要なのですが、下から支えるのであれば、ライトシーリングはなくても固定できます。実際にライトシーリングを外して使ってみたところ、アイトラッキングも含め、完全に動作しました。

 もちろんライトシーリングで遮断していた現実世界の部分(目線の上下左右、本体以外の部分です)は、そのまま見えることになります。しかし、映画鑑賞などであれば気になるかもしれませんが、ビジネス利用では気にならないでしょう。

 そして、ライトシーリングを外して使うことの一番大きなメリット。それは、通気性です。

 この暑いさなか、顔に密着させる必要のあるライトシーリングはしんどいものがあります。しかし、この方式であれば……。密着するものがなくなり、実は、ビックリするくらい快適に使うことができます。

 ARグラスであるXREAL Airを装着しているかのような、メガネをかけているような印象です。私の場合、オプティカルインサート(ようするに度付きメガネのレンズ)を装着したVision Proなので、本当にメガネをかけるようなものです。そして、さまざまなデジタル情報が空間に表示できます。

 仰々しいパーツと、有線でつながったVision Proのバッテリーがあるわけですが、それらを差し置いても、Vision Proを快適に使うことには大きなメリットがあると感じます。もちろん、これらのパーツも使い勝手面においてはまだまだ改善の余地がありますが。

 最終的には、3Dプリンタで作成するには素材面でもできることに限界があります。どなたか、真面目に一緒に製品化させていただけないでしょうか? ぜひ、石黒までお声がけください!

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