Infoseek 楽天

新型「Magic Keyboard」は何が変わった? 設計が一新され劇的に変化したモデルを13インチiPad Pro(M4)で試す

ITmedia PC USER 2024年7月19日 18時0分

 2024年5月に発売された新しい「iPad Pro (M4)」では、専用オプションであるMagic Keyboardもリニューアルされた。見た目は従来モデルとそっくりに見えるため、単なる対応モデルの変更かと思いきや、実際にはフルモデルチェンジと言っていい変化を遂げている。

 具体的にどのような点が異なるのか、従来のiPad Proや同時発売の「iPad Air」で使えるのかなど、13インチ用モデルを用いてじっくり検証した。

●完全な専用モデルとしてリニューアル 従来モデルとの互換性なし

 今回のMagic Keyboardは、ギミック自体は従来モデルと変わらない。キーボードとヒンジでつながった金属のプレートに、iPad Proをマグネットで吸着させることで、ノートPCとそっくりのスタイルで利用できるというものだ。データの転送はSmart Connector経由で行われるのでBluetoothのようなペアリングは必要なく、給電も不要だ。

 この吸着に用いられるiPad Pro内蔵のマグネットの位置は、過去のモデルでたびたび変更されており、それゆえMagic Keyboardも、iPad Proのモデルチェンジに合わせて節目で新モデルが投入されてきたという経緯がある。

 今回のモデルもまた、13インチiPad Pro(M4)に合わせた設計ということで、過去のモデルと互換性がない。試しに筆者私物の「第5世代12.9インチiPad Pro」を吸着させようと試みたが、全く位置が合わずにずり落ちてしまう。本製品と同時に発売された13インチiPad Air(M2)も同様だ。

 もっとも、仮にマグネットの位置が合致していても、今回の13インチiPad Pro(M4)は従来モデルに比べて圧倒的に薄くなっているため、それに合わせて作られた今回のMagic Keyboardに、厚みのある従来モデルを挟み込むのは不可能だろうし、その逆もスカスカになってしまうことは容易に想像できる。

 いずれにしても、iPad Pro本体を買い替えるにあたっては、このMagic Keyboardも併せて買い替えなくてはいけない。ユーザーの懐には極めてダメージが大きい製品ということになる。

●待望のファンクションキー列が追加

 さて本製品は、従来のMagic Keyboardと外観はそっくりだが、実際に比べてみると、別物と言っていいほど、設計が変更されている。

 最大の違いは、ファンクションキー列が追加されたことだ。従来モデルはキーが5段で、最上段にあるべきファンクションキーが省略されていたが、本モデルではそれらが追加されて6段となり、結果的にMacBookシリーズと同じ配列になった。従来はEscキーがなかったことから、別のキーに割り当てるなどの工夫だったが、それも不要になった。

 またキーボード手前のパームレスト部の奥行きが広くなっており、手のひらの付け根が段差にかかってしまうことがなくなった。快適にキー入力をする上で、これは非常に大きい。

 ファンクションキー列が追加されてキーボードの天地が広くなり、さらに手前のパームレスト部まで拡大しながら、奥行きそのものが従来とほぼ変わっていないのは、奥行きが有効に使えるように設計が見直されたためだ。

 これは、真横から見比べてみるとよく分かる。本製品は、これまでかなり前方へとせり出していたiPad本体が、垂直に持ち上がるようになったことで、iPadがキーボード面に覆いかぶさる面積が極限まで減らされている。これにより、キーボード面の奥行きを維持しつつ、ファンクションキーの追加やパームレスト部の拡大が可能になったというわけだ。

 ここで気になるのは、iPadの位置が後方寄りになったことで、背後へと転倒する危険が増したのではないかということだが、試した限りでは気にならない。むしろ、以前に比べて倒れにくくなったように感じる。

 これは今回のiPad Proは大幅に軽量化され、従来モデルにあった頭でっかちさが解消されたためだと考えられる。重心が後ろに寄っていること自体は相変わらずなのだが、軽量化とうまく相殺された結果、使っていて気にならないレベルまで落とし込まれているというわけだ。

 またマグネットによる吸着力自体、従来よりも強力になっているように感じられる。従来モデルでは画面を開いた時に、画面の下部、つまりiPad Proの下端を手前に引っ張ると、iPadが比較的簡単に脱落してしまっていたが、本製品はある程度の力を加えなければ外れない。

 iPad Proを取り付けたMagic Keyboardを手前に移動させようとして、本体を持たずにうっかり画面に手をかけて手前に引いてしまい、iPadがキーボードの上に落下するというのはよくあることなので、これが解消されたことにより、使い勝手はますますよくなったように感じる。

●キーボードはMacBookシリーズ似に パームレストはアルミに変更

 キーボード面についてもう少し詳しく見ていこう。

 キーピッチは従来と同じく19mmを確保しており、Enterキー回りのキーに至るまで十分な幅がある。感触はMacBookと非常によく似ており、軽快なタイプが可能だ。筆者はあまりストロークの深いキーボードは好まず、フルキーボードを使っていると疲れてしまうほどなので、ストロークが概ね1mm程度である本製品は、非常に使いやすいと感じる。

 最上段のファンクションキーは、Escキーが追加されたのはプラスだが、ホームボタンがないのがやや気になるところだ。もっとも、これは同じ配列であるMacBookも同じゆえ、ホームに戻る場合は、command+Hキーのショートカットを使うか、Mission Controlキーで代替するのがベターだろう。加えて、これらのショートカットの一覧を表示できるcommandキーの長押しも、優先的に覚えておくとよい。

 パームレストは、従来は外装と同じポリウレタンだったのがアルミに変更されており、手で触るとひんやりする。今はちょうど夏の暑い時期なので、この仕様は特に気にならないが、冬場は冷たいと感じることがあるかもしれない。一方で、ポリウレタンにつきものの劣化や、手の脂のつきやすさを気にしなくてよくなったのはプラスだろう。

 バックライトを内蔵するのは従来モデルと同様だが、新たに搭載されたファンクションキーの中にはバックライトの輝度調整キーはなく、輝度を調整するには、iPad本体側のハードウェアキーボードの設定から行う必要がある。このあたりの仕様は、従来モデルから変わっていない。

●ワンランク上のモデルへと進化! サードパーティー製品にも期待

 以上のように、外見は従来モデルとほぼ同じでありながら、これまでの問題点を着実に修正したワンランク上のモデルに仕上がっている。従来モデルでよく見聞きした、買ったはよいものの次第に使わなくなってしまったというケースも、これまでと比べると少なくなるのではないだろうか。

 ネックとなるのは、言うまでもなく価格だ。今回筆者が購入した13インチ用モデルは、実売価格が5万9800円(11インチ用は4万9800円)と、ミドルクラスのタブレットが1台買えてしまう値段で、iPad本体と合わせると20万円台後半からとなってしまう。既に13インチiPad Pro(M4)を所有しており、それを生かすために本製品を購入するという順序でなければ、なかなか手が出しにくいだろう。

 これらの価格上昇の背景には円安という要因もあると考えられるが、仮にそうだとしても、こういったアクセサリー系で一旦上がった価格水準が次のモデルで下がるケースはあまりないだけに、今後もこの価格帯で推移していくことになるはずだ。これは本製品の競合となるサードパーティーにとってはチャンスとなるわけで、ユーザーとしてはそちらの市場がより活発化することも視野に入れて、製品選びをしたいところだ。

この記事の関連ニュース