Infoseek 楽天

ASUS JAPANの新型ポータブルゲーミングPC「ROG Ally X」を試す パワーアップで実用性向上 マルチに活躍できる1台に

ITmedia PC USER 2024年7月22日 14時10分

 7月24日、ASUS JAPANから新型のポータブルゲーミングPC「ROG Ally X」が発売される。予想実売価格は13万9800円(税込み)で、直販サイト(ASUS Store)や家電量販店、ECサイトで予約販売を受け付けている。

 発売を目前に控え、ASUS JAPANからROG Ally Xの実機をお借りできたので、その“実力”をチェックしていく。

●ROG Ally XってどんなPC?

 まずはROG Ally XがどんなPCなのか、おさらいを兼ねつつチェックしていきたい。

 ROG Ally Xは、2023年6月に発売された「ROG Ally(エイライ)」のパワーアップモデルという位置付けだ。

 同社のPCを取り扱う店舗が全国的に多いこともあり、先代は郊外や地方でも実機に触れられる機会が多かった。先行発売された上位モデルの実売価格は11万円弱、2023年9月に追加発売された下位モデルの実売価格が9万円弱と手頃だったことも手伝って、ポータブルゲーミングPC市場の“裾野”を広げる役割を果たした。

 新たに登場するROG Ally Xは、そんなROG Allyのメリットを引き継ぎつつ、同モデルで課題になったポイントを改善したモデルとなる。

 ディスプレイは、引き続きタッチ対応の7型フルHD(1920×1080ピクセル)液晶を搭載している。本体の左右に一体型のゲームコントローラー(パッド)を搭載していることや、コントローラーのボタン配置など、基本的な部分は保持されている。

 APU(GPU統合型CPU)は、Allyの上位モデルと同じく「Ryzen Z1 Extreme」を搭載している。

 「ではどこが変わったのか?」という点だが、順を追って説明していこう。

変更点1:メインメモリの増量

 メインメモリの容量が16GBから24GBに増えた。

 APUに統合されたGPU「Radeon Graphics」(※1)は、メインメモリのうち最大で8GBをグラフィックスメモリとして確保する。Allyの上位モデルの場合、グラフィックスメモリが最大限確保されるとシステム(≒OSとアプリ)で使える容量が8GBしか残らなかったが、本モデルなら(単純計算で)16GB残せるようになる。

 これにより、ゲームを含む多くのアプリでメモリ不足によるパフォーマンス低下を防げるようになった。

(※1)Ryzen Z1 ExtremeのRadeon Graphicsは、Ryzen 7040/8040シリーズにおける「Radeon 780M」と同等の性能を有する

変更点2:ストレージの増量

 Allyは、全モデルにおいて512GBのSSDを備えている。「これで十分」という人もいるかもしれないが、最近のPCゲームはアップデートや追加(ダウンロード)コンテンツを含めると100GBを超える容量が求められることがある。

 その点、Ally XのSSD容量は2倍の1TBに増えている。これにより、より多くのゲームタイトルを持ち運びやすくなった。

変更点3:バッテリー容量

 ROG Allyは、40Wh(定格値、以下同様)のリチウムポリマーバッテリーを搭載している。本体サイズの割に大容量ではあるものの、「ゲームを思いきり楽しむと容量が足りない」という声があったのも事実だ。

 その点、ROG Allyではバッテリーの容量を2倍の80Whに引き上げている。単純計算すると、バッテリーによる駆動時間はAllyの2倍。“ポータブル”ゲーミングPCであることを考えれば、一番の改良点といえるのかもしれない。

 なお、バッテリーの増量に伴い、本体の厚さと重量は少し増している(※2)。実際のバッテリー駆動時間は、テストを通して検証したい。

(※2)厚さは約21.22~32.43mm→約24.7~36.9mm、重量は約608g→約679gとなった

 他の変更点は、各部のチェックと合わせて見ていきたい。

●ROG Ally Xの各部をチェック!

 続いて、写真を交えつつROG Ally Xの各部をチェックしていこう。

 ROG Allyからの変更点として、パッと見で誰でも分かるのはボディーカラーだろう。Allyではホワイト1色であり、所々で「ブラックがあればなぁ……」という声が聞かれた。

 その声に応えてか、Ally Xではブラックボディーを採用した。ブラック派にとっては待望の新色だ。本体素材は樹脂で、マットな質感で指紋も目立ちづらい。またグリップ部には滑り止めのパターンも設けられているので、ホールド感も良好だ。

 なお先述の通り、ゲームコントローラーの位置や配列はAllyから変わりない。本体左側に左スティックと方向キー、表示ボタンと「コマンドセンター」ボタンを、本体右側にABXYボタン、右スティック、メニューボタンと「Armoury Crate」ボタンを備えている。本体上部には左右両方にバンパーボタンとトリガーボタンを、そして背面には同じく左右にマクロボタンを搭載している。

 Ally/Ally Xのゲームコントローラーの位置/配列は「Xbox コントローラー」に準拠している。パッド対応のゲームであれば、ごく一部の例外を除けば特に設定を変えることなく楽しめる。

 コマンドセンターボタンを押すと、ゲームプレイ中に本体の各種設定を変更できる。またArmoury Crateボタンを押すと、ROGブランドのハードウェア共通のユーティリティーアプリ「Armoury Crate」が起動する。

 ROG AllyシリーズのArmoury Crateはゲームコントローラーでの操作に最適化されており、ゲームランチャー機能も備えているので、快適にゲームを楽しめる。

 Allyと同様に、ROG Ally Xの冷却機構は背面に設けられた吸気スリットから吸気し、本体上部から排気を行うようになっている。

 ゲームコントローラーでゲームを楽しむ場合、プレイ中にグリップ部分が熱を持つことはないので快適だ。ただ、画面をタッチして楽しむゲームをプレイする場合は、膝上に置くと吸気口がふさがれてしまう恐れがるので注意したい。

 本体上部を見ると、本機の大きな変更点をもう1つ見つけられる。それはポート類の構成だ。

 Allyと同様に、Ally Xのポート類も本体上部に集約されている。しかし、Allyで備えられていた独自の「ROG XG Mobile端子」が廃止され、代わりにUSB4(USB 40Gbps)端子が搭載された。その名の通り、ROG XG Mobile端子は外部グラフィックスユニット「ROG XG Mobile」を装着するための専用端子だった。それを汎用(はんよう)性の高いUSB4端子に置き換えたことになる。

 外部グラフィックスユニット(GPUボックス)をつなぎたい場合は、ここにUSB4対応のものをつなげばグラフィックスの“強化”を図ることができる(※3)。専用端子でなくなったことで、外部グラフィックスユニットの選択肢が広がっているのはうれしいポイントだ。

(※3)全てのUSB4対応GPUボックスの動作を保証するものではありません

 他のポート類の構成(USB 3.2 Gen 2 Type-C、microSDメモリーカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック)に変更はない。USB4端子を含むUSB Type-C端子はUSB PD(Power Delivery)による電源入力と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力にも対応する。

 上面にある電源ボタンには、Windows Hello対応の指紋センサーを備えている。指紋を使ってサッとログインができて便利だ。

 本体の付属品は、ACアダプター(最大65W出力)、簡易マニュアル(保証書兼用)、紙素材のスタンドとシンプルだ。ACアダプターはケーブル一体型なので、可搬性を重視する場合は65W出力に対応するUSB PDアダプターを用意するとよいだろう。

 ハードウェアのスペックを一通りチェックした所で、ベンチマークテストを通してROG Allyの“実力”をチェックしていこう。

●ROG Ally Xの実力をベンチマークテストでチェック!

 ここからは各種ベンチマークテストを実行し、ROG Ally Xの性能をテストしていく。

 ROG Ally Xは動作モードを「ターボ」「パフォーマンス」「サイレント」と切り替えることが機能で、APUのTDP(熱設計電力)はそれぞれ「29W」「17W」「13W」に設定される。ターボモードに限り、電源接続中はTDPを「30W」(Ryzen Z1 Extremeの定格最大値)まで引き上げられる。

 特記のない限り、今回のテストは電源接続時のターボモード(=フルパワー)で実施している。比較用として、本誌で過去にレビューを行ったROG Ally(上位モデル)の結果も一部掲載する(ベンチマークアプリやOSバージョンが当時と異なるため、あくまでも参考値として見てほしい)。

CINEBENCH R23

 まず、3Dレンダリングを通してCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」を実行してみた。結果は以下の通りだ。

・マルチコア:1万3801ポイント

・シングルコア:1753ポイント

 同じAPUだから当然かもしれないが、ROG Allyとのスコア差はほとんどない。しかし、一般的なゲーミングノートPCに搭載されるCPU/APUや、デスクトップPCに搭載されるミドルレンジCPUに迫る性能は確保している。

 こんなコンパクトなポータブルPCで、ここまでのCPU性能を引き出せるのは、今でも驚異的に思える。

PCMark 10

 続いて、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」を試してみよう。

 総合スコアは「7181ポイント」で、過去のROG Allyにおける結果よりも少し上昇した。メインメモリとストレージの“増量”がプラスに働いたものと思われる。

 メモリが増えればPCの操作が快適になるのは当然だが、ストレージであるSSDも、基本的には容量が大きいほどパフォーマンスが向上する。わずかな変更が、意外と快適さの向上につながるものなのだ。

3DMark

 次に、3Dグラフィックスのパフォーマンスをチェックする「3DMark」において、幾つかのテストを実行してみよう。

 今回はDirectX 12を使用する「Time Spy」「Night Raid」と、DirectX 11を使用する「Fire Strike Extreme」「Fire Strike」の4種類を実行した。総合スコアは以下の通りだ。

・Time Spy:3435ポイント

・Night Raid:2万9319ポイント

・Fire Strike:8042ポイント

・Fire Strike Extreme:4223ポイント

 ここまでのテストと同じく、過去のROG Allyと比べるとスコアが少し向上している。グラフィックスドライバーの改善はもちろんのこと、メモリやストレージの増量が効果を発揮している様子が伺える。

 次のページでは、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを試す。

FF15ベンチマーク

 ゲームベースのベンチマークテストを進めていく。まず、負荷の比較的重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」を「高品質」「1920×1080ピクセル(フルHD)」に設定してベンチマークを実行したところ、スコアは2883ポイントで評価は「やや重い」となった。

 メモリとストレージがプラスされたとはいえ、Ally Xでもこの設定はさすがに厳しいようだ。

 しかし、解像度設定を「1280×720ピクセル(HD)」に下げてみたところ、スコアが4076ポイントまで改善し、評価も「普通」に上昇した。画面の精細さは失われるものの、ゲームは問題なく楽しめそうだ。

サイバーパンク2077

 より重たいゲームは楽しめるのか――興味が湧く。そこでPCゲームの中でも特にシステムへの負荷が重いされる「サイバーパンク2077」のゲーム内ベンチマーク機能で平均フレームレートを測ってみることにしよう。

 ベンチマーク時は、クイックプリセットの「レイトレーシング:低」を選択した。また、解像度は「フルHD」と「HD」の2つで試すこととする(以下同様)。結果は以下の通りだ。

・フルHD:平均22.45fps

・HD:平均36.89fps

 いわゆる「AAAタイトル」の中でもヘビーな部類だけあって、フルHD解像度では平均フレームレートが25fpsを割ってしまっている。しかし、HD解像度ならゲーム中に引っかかりをほとんど気にせずプレイできる基準の平均30fpsを上回る。

 AAAタイトルの強みである美麗なグラフィックス、キャラクターなどのなめらかな動きは体験できないものの、1世代前のゲーム機くらいの画質では遊べる。設定次第だが、外出先で取りあえずのプレイはできそうだ。

Microsoft Flight Simulator

 「Microsoft Flight Simulator」も、重量級タイトルとして定番だ。実写を見ているかのようなリアルな風景は見ているだけでも楽しいのだが、そのリアルさを体験するには相当のGPUパワーが必要とされる。「ポータブルゲーミングPC向きではない」と言われそうだが、先のサイバーパンク2077と比べれば、映像の動きが少なめなので「意外と楽しめるのでは?」とも思ってしまう。

 そこで今回は、計測方法はディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦し、「CapFrameX」を使って2分間の平均フレームレートを計測した。結果は以下の通りだ。

・フルHD:平均41.1fps

・HD:平均48.4fps

 さすがにサイバーパンク2077よりもフレームは高いものの、HD解像度に落としても60fpsに届かない。高い高度で飛んでいるシーンでは問題ないものの、オブジェクト(建物など)が多く存在する低高度のシーンでは動きにどうしても引っかかりが生じる。

 重量級のゲームタイトルを遊ぶ場合は、グラフィックス設定を“とにかく軽く”を心掛けたい。

アーマードコア6

 筆者が一番遊んでいるゲームタイトル「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマードコア6)」でも平均フレームレートを測ってみた。

 アーマードコア6は、先に試したサイバーパンク2077やMicrosoft Flight Simulatorと比べると負荷は低いものの、軽量級でもない。今回は画質設定を「最高」、上限フレームレートを120fpsとした上で、ゲーム前半の関門ステージ「ウォッチポイント襲撃」を遊んだ際の2分間の平均フレームレートをCapFrameXで計測した。結果は以下の通りだ。

・フルHD:平均40.3fps

・HD:平均64.4fps

 先の2タイトルと比べると軽いこともあり、HD解像度であれば平均60fpsを超えた。これだけのフレームレートが出れば、かなり快適にプレイできる。テストでは画質設定を「最高」としたが、画質を少し落とせばフルHD解像度でも快適にプレイできそうだ。

電源設定別の動作パフォーマンスは?

 ROG Ally Xは先に紹介した通り、「ターボ」「パフォーマンス」「サイレント」と3種類のパフォーマンスモードが用意されている。モードの差がパフォーマンスにどのくらいの影響を与えるのか、アーマードコア6のテストをそれぞれのモード(HD解像度)で行ってみた。

 すると以下のような結果となった。

・ターボ:64.4fps

・パフォーマンス:52.4fps

・サイレント:33fps

 意外と差が付くことが分かる。サイレントモードにすると、さすがにターボモード比でフレームレートが半分近く下がる。しかし、本タイトルは平均30fps出ればプレイ上の支障がほとんどないため、遊べなくはない。

 基本的に、ゲームは平均30~60fpsを確保できれば十分に遊べる。その観点でいうと、ROG Ally Xで遊ぶ場合、ほとんどのタイトルでは画質や解像度を低く設定した方が快適だ。

 さすがに“ガチの”ゲーミングノートPCと比べると分が悪いことは確かだが、サイズや重量を考えると、ここまでできるのは驚異的なことではある。

●増量されたバッテリーは効果てきめん

 ROG Ally XはポータブルゲーミングPCだ。コントローラーまで一体化されているため、携帯型ゲーム機のように遊びたいときに“いつでもどこでも”楽しめるのが望ましい。

 そこで気になるのがバッテリー駆動時間だ。そこでPCMark 10に内蔵されているバッテリーベンチマークで駆動時間を試してみることにしよう。

 今回はバッテリーベンチマークの「Gaming」シナリオを使って、ターボモードとサイレントモードにおける駆動時間を計測した。結果は以下の通りだ。

・ターボ:2時間9分

・サイレント:3時間43分

 先程までの結果と合わせて考えると、重量級のゲームタイトルやフレームレートを重視するゲームなら2時間程度、そうではない軽いゲームなら3時間強は楽しめそうだ。

 「え、たった2時間?」と思うかもしれないが、ROG Allyで同じテストをやると1~1.5時間程度しか持たなかったことを考えると、十分な進歩といえる。バッテリーの容量が2倍になった効果は、明らかに出ている。

 もちろん、旅の途中でゲームで遊びたいとなれば、モバイルバッテリーなどで充電することも必要になる。しかし、少なくとも普段の通勤や通学でゲームを遊ぶような使い方なら、実用できるレベルになったといえるだろう。

●先代の弱点を確実につぶした良いマシンに

 ポータブルゲーミングPC市場は、PC業界全体でもホットな市場の1つであり、さまざまなメーカーから色々な工夫が施された新モデルが続々登場している。

 ROG Ally Xは、このジャンルにおける代名詞になったROG Allyの良さはそのままに、より「持ち運んで使うこと」にスポットを当て正統進化した最上位モデルといっていいだろう。特にバッテリー持ちの改善は持ち運ぶ機器として最もシンプルかつ嬉しい強化といえる。

 また好みの部分ではあるが、ボディカラーがブラックになったことで左右スティックのイルミネーションがより“映える”ようになり、その他のROG製品と並べても統一感のある見た目になった。

 ASUSのROGのファンであれば、カラーをそろえて持ちたいと考える人も多いだろう。実際、ROG Allyの登場時、ブラックカラーの追加を望む声は多く、1年越しで登場したブラックカラーというだけで購入に踏み切る人も出てくるかもしれない。

 そういうファンの人に向けても、基本性能の向上で「より満足度の高い1台」に仕上がったと、今回のテストでは感じた次第だ。

この記事の関連ニュース