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レトロモダンなキーボード/マウス「Lofree」シリーズは、魅力的なルックスだけじゃない実力派だった

ITmedia PC USER 2024年7月23日 15時20分

 Lofreeという名前を聞いたことはあるだろうか。もともと一部のキーボード愛好家の間で知られる海外ブランドだが、2024年5月に日本の三陽合同会社が国内代理店契約を締結したことで、同ブランドのキーボード、マウスが国内でも正式に販売されるようになった。今回はその3製品を紹介しよう。

● Lofreeとは

 Lofreeは中国・深センにあるShenzhen Lofree Cultureの展開するライフスタイルブランドだ。特にコンピュータ周辺機器に強みを持っており、レトロモダンを中心としたユニークなデザインに対する評価が高い。2017年に発売したメカニカルキーボード「The Dot」シリーズは、全世界で200万台以上販売されるなど、単にデザインだけでは達成できない売れ行きを記録しており、日本でもその注目度は急上昇している。

 今回、国内販売が開始された同ブランドの製品は、テンキー付きメカニカルキーボード「Lofree Block」、84%ロープロファイルキーボード「Lofree Flow」、ワイヤレス/有線マウス「Lofree Touch PBTワイヤレスマウス」の3つだ。順に見ていこう。

●「Lofree Block」キーボード

 Lofree Blockキーボードは、レトロモダンなデザインが特徴のメカニカルキーボードだ。オレンジのアクセントは往年の「X68000」や「PC-6001」といったPCをほうふつとさせ、ボディーとキーキャップに施されたカラーのアイボリーとソフトグレーは、「IBM Model Mキーボード」以来の伝統的なカラーリングのようだ。

 機能キーなどの一部はテンキー上部に移動もしくは省略されており、全98キー、横幅387mmとテンキー付きとしてはコンパクトになっている。

 キースイッチはTTCと共同開発したリニアタイプのMX互換フルPOMメカニカルスイッチを採用している。キーを押し込んでオンになる深さを示すプリトラベルは1.6mm、荷重は43gの比較的オーソドックスなスタイルだが、ホットスワップに対応しており、好みに応じて交換できる。

 キーキャップは摩擦に強く、耐久性が高いダイサブ(昇華印刷)PBTだ。英語配列のみの展開で、キー印字も英数記号のみのすっきりしたものだが、バックスペースやエンターなど一部のキーには独自の意匠が施されている。

 Blockキーボードの内部構造は基板をボディーに固定せず、パッドで挟み込んで基板全体が沈み込むことで衝撃感を軽減するガスケットマウント設計を採用している。ボトムケースの上には反発力が強く、静音性を向上させるポロン、基板の上には衝撃を吸収するIXPEフォーム、さらにその上に緩衝材と、何層もの異なる衝撃吸収材を重ねることで、底打ち感のあるクリアなタイプ音になっている。重量は約1090gと、タイプ時の打鍵時の安定性も申し分ない。

 デザイン上、重要な右上のノブコントローラーは単なる装飾ではなく、左はボリューム(押し込みでミュート)、右は接続方式の切り替え兼電源スイッチとなっている。

 接続方式は有線(USB)、Bluetooth5.0、2.4GHz無線(専用ドングル)の3種類、Bluetoothのペアリングは3台まで保存可能だ。接続先の選択では、まずノブコントローラーで有線(CAB)、無線(WLS)のいずれかに設定、無線の場合はその後にFn+1~3でBluetooth、Fn+4で2.4GHzを選択する。

 このあたりの手順についてはやや不自然な印象を感じるが、デザイン先行の設計だったのかもしれない。例えば、押し込みで電源オン/オフ、回転で有線・Bluetooth1~3・2.4GHzが選択できるなど、1つのコントローラーで1つの機能を実現した方が分かりやすかったのではないだろうか。

 もう1つ、普通のキーボードにはないものがEnterキー右側とテンキー間のインジケーターだ。NUM/CAPSロック、無線接続先(BT1.2.3/2.4GHz)、バッテリー残量を表示するものだが、光量が弱く、やや見づらかった。とはいえ、接続先やバッテリー残量が分かりやすい形で常時表示されているキーボードも少数派なので、この点はアドバンテージだといえるだろう。

 昨今の高級キーボードの傾向である、キーマップ変更には対応しておらず、専用カスタマイズツールの提供もない。そのため、バックライト(白色)のエフェクトも本体からFn+←/→キーを使って14種類から選択するようになっている。

 全体としてLofree Blockはレトロデザインを採用したシンプルな高級キーボード、という印象だ。決して多機能ではないが、昇華印刷のPBTキーキャップ、フルPOMメカニカルスイッチ、何層もの衝撃吸収材を使ったガスケットマウント設計など、日常的に使う立場としてキーボードに求めたい基本的なスペックを高いレベルで実装している逸品といえるだろう。

●「Lofree Flow」キーボード

 Lofree Blockはノーマルプロファイルのメカニカルキーボードだが、ロープロファイルでありながら同様のガスケットマウント設計を実現している製品が「Lofree Flow」キーボードだ。2023年にクラウドファンディングサイトのKickstarterやグリーンファンディングでも大きな支持を集めており、Lofree FlowがきっかけでLofreeを知ったという日本のカスタマーも多い。

 Lofree Flowが注目された理由は、なんと言ってもロープロファイルらしからぬ、しっかりとしたストローク、タイプ感にある。フレームはアルミニウム合金、そしてポロンとシリコンパッドで挟んだ基板をガスケットマウントするという構造で衝撃を吸収、反響音の少ないコトコト音を実現している。

 キースイッチにはルブ済のKailhロープロファイルフルPOMスイッチを採用。レスポンシブキーストロークは1.6±0.3mm、キーストロークは2.8±0.25mmを確保している。シルバーモデルにはリニアタイプのGhost、グレーモデルにはタクタイルタイプのPhantomが装着されているが、これらのスイッチに加え、クリッキータイプのWizardも別売りで入手できる。

 ミニマムなデザインだが、あえて言えばビンテージインダストリアル風だろうか。シルバー/ブラックのアルミニウム合金製フレームに、右側面のロゴプレート、底面のスタンドが真ちゅうを思わせるブロンズゴールドのアクセントとなっている。スタンドは3.9度固定で調整はできない。

 接続方式は有線(USB)、Bluetooth5.0の2種類となる。Bluetoothは3台までペアリング可能だ。上部にある3ポジションスライドスイッチでOFF/ON/BTを選択するようになっているが、スイッチが小さく、真ん中のONにセットしづらい。Lofree Blockでのノブコントローラー、OFF/CAB(有線)/WLS(2.4GHzもしくはBluetooth)に対応した形ではあるが、ONだと有線、BTだと無線、というのはやや分かりづらい。もちろんLofree Flowの方が先行モデルであるため、Lofree Flowでの分かりにくさをLofree Blockで対処した、ということなのかもしれないが、やはり電源と接続方式は分ければいいのにと感じる。

 ライティングは白色バックライトに加え、RGBの7色から選択可能なサイドライトが用意されている。エフェクトはブレスのみだが、ゲーミングデバイスのような派手さを必要とするジャンルのキーボードではないため、不満を感じることはないだろう。

 Kailhのロープロファイルメカニカルスイッチと、Lofree Flow独自のガスケットマウント設計による打鍵感は使っているとロープロファイルであることを忘れてしまいそうになるレベルだ。ノーマルプロファイルのフィーリングを持ち歩きたい、という人にとって有力な選択肢となるだろう。

●「Lofree Touch PBTワイヤレスマウス」

 「Lofree Touch PBTワイヤレスマウス」は、左右ボタンがキーボードのキーのようなユニークなデザインのマウスだ。オレンジがかった温かみのあるサンドベージュカラーはレトロな印象も併せ持つが、11月にはカラーリングをLofree Blockに合わせたバリエーションも発売される予定となっている。

 左右ボタンはサイズ違いのキーキャップ風デザインで、実際にキーキャッププラーを使用することで取り外すことが可能になっている。換装用のキーキャップも販売されているが、どれもポップなイラスト好みが分かれそうだしれない。

 これらのユニークな左右ボタン、シンプルなホイールとあわせ、弁当のおかずのように小型ディスプレイが詰め込まれているのもユニークなデザインだ。ディスプレイにはDPI設定、接続方式、バッテリー容量が表示される。ただ、筆者の利用姿勢だと天板カバーと干渉してディスプレイが見えづらかった。

 接続方式は有線、2.4GHz、Bluetooth(最大2台ペアリング可能)をサポートしている。切り替えは底面のMボタンで行うが、1回押すごとに順次切り替わるため、Bluetooth(#2)からBluetooth(#1)に切り替えるためには3回押さなければならない。底面にはこの他に電源のスライドスイッチがあるが、3製品を通して見ると、どうにもこのあたりが整理されていないような印象だ。

 DPI設定は800/1600/2400/3600/4000、カスタムの5つを天板上のDPI切り替えスイッチで切り替える。カスタムはDPI切り替えスイッチを3秒長押ししてからホイールで設定、ホイールの押し込みで保存する。当初、直感的にDPI切り替えスイッチを押して保存だと思い込んでいたのだが、この操作だと設定キャンセルになってしまうので注意してほしい。DPI切り替えスイッチは天板カバーのスリットを通して操作するが、カバーに高さがあり、かなり爪を突っ込まないと操作できなかった。

 ボディー面はマットな仕上げになっており、触り心地が良く、指紋が付きにくい。素材にはPBTを使用しており、一般的なABS樹脂やポリカーボネイトに比べ、耐久性と耐摩擦性に優れている。紫外線にも強く、色あせしにくいため長期間に渡ってきれいな状態を保てる。

 サイズは約108(幅)×68.5(奥行き)×42.5(高さ)mmと、標準的な日本人にフィットするコンパクトなモデルだ。ただし、前後/左右が小ぶりな割には高さがある。この高さは天板部分のカバーによるものなので、カバーを外してしまえばかなり高さは抑えられる。その他にもディスプレイが見やすくなる、DPI切り替えスイッチが押しやすくなる、というメリットもあるが、カバー固定用のステム状パーツが露出するため、デザイン的にはかなり見劣りしてしまう。個人的には下半分のみのカバーパーツがあるといいのにと思った。

 このサイズのマウスとしては珍しく、左側に薄板状のサムレストがついている。親指の負担を減らせる点はメリットだが、ポジションが固定される分、大きめの手の人には進む/戻るボタンが少し窮屈に感じるかもしれない。また、全体的にマウスの滑りはあまり良くないように感じたが、これはサムレストで接地面が増えたことも影響しているのかもしれない。もっとも、サムレストの裏側はソール部以外はほとんど接地しないようになっているので、マウスソールの素材そのものの影響も大きそうだ。

●Lofreeのコンセプト

 Lofreeのブランドコンセプト「2m2」は、ユーザーの手の届く範囲に焦点を当て、身の回りの空間をスタイリッシュで機能的な製品で満たすことを目指すというもの。キーボードやマウスなどのPC周辺機器が含まれるOffice 2m2、扇風機やランプのLife 2m2、美容系のMakeup 2m2など、幅広い範囲で魅力的なデザインの製品を展開している。

 だが、デザインを前面に押し出しているブランドにもかかわらず、Lofree Flowの完成度の高さは目を見張るもので、ロープロファイルキーボードの最高傑作という評価も少なくない。いくつか苦言を呈したところもあるが、その中のいくつかは本体だけでカスタマイズできるようにしようとしたために生じたものにも思える。

 現在先行注文受付中の新モデルキーボード、「Lofree Edge」では専用カスタマイズソフトウェアがリリースされ、マクロなどにも対応できるようになった。機会があればこちらもレビューしたい。

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