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私たちの“仕事”に適したビジネスPCをどう選ぶ? ポイントを連載で解説

ITmedia PC USER 2024年8月2日 12時10分

 企業や組織の情シスにとって、従業員に支給するビジネスPCの機種選定は避けて通れない重要な仕事だ。業務の内容によって必要なスペックは異なり、常に新モデルの情報収集は欠かせない。スペックが不足していると社内から不満が出るだけではなく、最悪の場合、業務効率が落ちることもあり得る。逆にスペックが過剰であると費用対効果が得られないなど、意外と難易度が高い。

 また、最近はAI処理に強みを持つ「Copilot+ PC」も登場している。やはりそうした機種はビジネスPCを選ぶ上で重要になってくるのだろうか。

 本連載では、ビジネスPCを構成するパーツにそれぞれフォーカスを当て、情シスの方々に向けたビジネスPCの選び方を掘り下げていく。本稿では、それぞれを深く掘り下げる前に、各パーツの選定基準について解説していこう。

●CPU

 PC選びにおいて、最初に思い浮かぶパーツといえばCPUだろう。CPUは低価格帯から高価格帯まで、あるいは用途に応じて非常に多岐にわたる製品ラインアップがあり、PCのスペック構成を選ぶ選択画面でも最初に選ぶことが多いのではないだろうか。

 まず、CPUは価格だけで選んではいけない。例えば、コストを下げるために最安値のCPUが搭載されているモデルを何も考えずに購入すると、「業務で必要なアプリの要件を満たせない」「複数のアプリを同時に起動すると動作が非常に重たくなる」など、スペックが不足して業務効率が著しく低下してしまう可能性がある。

 であれば、なるべく高いCPUを搭載しているモデルを選べば良いかといわれるとそういうわけでもない。性能が高すぎて持て余す状況になってしまうと、過剰な投資となってしまう。

 さらにCPUの処理能力の高さだけではなく、IntelのvProやAMD Ryzen PROシリーズのように、リモート管理や高いセキュリティを実現させることもできるので、ビジネス用PCを選ぶ際には、処理能力以外の要素も検討する必要があることにも注意したい。

 CPUを選ぶ際に重要な事は、現在の業務の洗い出しをし、社員の用途や情シス部門として管理機能が必要か等を踏まえた上で過不足ないモデルを選び、投資効果を最大限得られる物を選択することだ。

●ディスプレイ

 続いては、ノートPCのサイズにも直接影響のあるディスプレイのサイズについて触れていこう。ディスプレイと一口に言っても、「IPS液晶」「有機EL」などパネル方式の違いや、バックライト方式の違い、色域やHDRなど、比較する項目が多数ある奥深いパーツだ。

 それぞれの詳細については今後の連載記事で詳しく掘り下げていくが、今回はもう少し簡単に触れていこう。

 ディスプレイのパネルは13型や15型など、モデルによってさまざまなサイズが用意されており、パネルサイズが大きくなればなるほど、PC本体のサイズもどんどん大きくなる。

 ノートPCに限った話で言えば、ディスプレイパネルのサイズが大きくなると、基本的に価格は安くなる。その分、PC本体のサイズも大きくなるため、頻繁にPCを持ち運ぶ職種の場合、価格だけ見てディスプレイパネルのサイズが大きい物を選ぶと、社内から苦情が出てくるだろう。

 頻繁に持ち運ぶのであれば、筆者の経験上、1.3kgぐらいなら持ち運びが苦では無くなる。これを踏まえると、基本的には14型ぐらいまでのサイズのモデルかつ重さは1.3kg以内に収まったモデルを選ぶと良いだろう。

●ストレージ

 続いては、作成したデータやインストールしたアプリを保存するためのストレージについて触れていこう。最近は基本的に動作の速いSSDが搭載されたモデルが主流なので、快適なPC操作を実現するためにも必ずSSD搭載モデルを選ぶのが定石だ。

 SSD搭載モデルを選定した上で、必要なストレージ容量を選んでいくのだが、これも業務内容によって必要な容量が変わってくるため、CPUを選んだときと同じく業務の洗い出しをした上で、作成されるデータのサイズを予測して適切な容量を選ぼう。

●メモリ

 続いては、PC選びでよく論争の種となるメモリについて触れていこう。メモリはPCで処理するデータを一時的に保管しておくための場所で、主にPCの処理速度に影響を与えるパーツだ。よく作業机に例えて説明される。

 価格の安いPCを選ぶとメモリ容量は4GBになりがちだが、ビジネスPCとして考えた場合、4GBでは既に不十分である。以前は最低でも8GBのメモリを搭載すると良いといわれていたが、最近はMicrosoftが定義した“AI PC”のメモリ要件が最低16GBに設定されるなど、徐々に必要なメモリ要件が増えてきている。

 AIを利用しなければ、メモリは16GBでなくてもよいのではと考えがちだが、最近のアプリやWebサイトで扱うコンテンツがどんどんリッチになってきている。今後ビジネスPCを選定するのであれば、このAI PCのメモリ要件である最低16GBを目安として選定したい。

●GPU

 続いては、GPUについて触れていこう。ノートPCのGPUといえば、CPU内蔵のGPUが基本で、オフィススイートやWebブラウザベースの業務であれば、統合型iGPUで何も困ることはない。ただし、映像製作やイラスト制作などのクリエイティブな業務や、AIを使った開発業務を行う場合は、外付けタイプのGPUが搭載されている物が必要となる。

 イメージしづらいかもしれないが、最近ではノートPCにもGeForce RTX 40 シリーズ Laptop GPUや、AMD Radeon RXシリーズなどのdGPUが搭載されている製品も出ている。クリエイティブな業務などにデスクトップPCが必須という時代ではないことに留意したい。

●キーボードなど入力デバイス関連

 続いては、文字の入力や操作に必須なキーボードやトラックパッド、有線LANや無線LANを含むインタフェース関連について触れていこう。特にノートPCのキーボードはモデルによって、オーソドックスなキー配列から特徴的なキー配列の物が展開されている。ノートPCのみで業務する場合、キー配列はできるかぎりオーソドックスなタイプの物を選びたい。

 トラックパッドも、ひとくくりにできないものだ。モデルや価格帯によって操作性の違いやトラックパッド自体のサイズが変わってくる。ノートPCのみで業務する場合、このトラックパッドの操作性が業務効率やユーザー体験に直結するため、選定する際におざなりにできないので注意したい。

 ビジネス用PCとして利用する場合、有線LANの有無もオフィスのレイアウトや設備によっては非常に重要となってくる。オフィス内のどこでも無線LANが接続できるのであれば、有線LAN搭載モデルを採用する必要はないが、無線LAN環境が整っていないオフィスであれば、有線LANは必須だ。

 ノートPCの場合、有線LANを搭載したモデルがどんどん少なくなってきているので、必然的に選択できるモデルの幅が狭くなってしまうが、USB接続タイプの有線LANアダプターを配布するという手だてもあるので、メリット/デメリットを比較した上で選択するようにしよう。

●インタフェース

 続いては、USBポートなどのインタフェースについて触れていこう。最近のノートPCはThunderbolt 4やUSB4(いずれもUSB Type-C)に対応したモデルも出てきている。Thunderbolt 4とUSB4について詳しい違いについては、今後の連載記事で触れていくが、概略を説明すると最大40Gnpsの転送速度と、USB PD出力に対応しているという大きなメリットがある。

 例えば、オフィスにUSB Type-C接続のディスプレイを設置していれば、USBケーブルをつなげるだけで、映像出力やノートPCへの給電が利用できるので、オフィスの机回りがスッキリする。

 とはいえ、業務利用PCとして考えた場合、オフィスにあるUSB機器との互換性を考えると、USB Type-Cポートのみではまだまだ厳しい。なので、ビジネス用PCを選択する際は、オフィスでよく利用されているUSB機器などを確認した上で、USB Standard-Aポートが必要な場合は可能な限りUSB Standard-Aポートが搭載されたモデルを選択したい。

●高いパフォーマンスを維持する冷却機能

 続いてはPCの冷却について触れていこう。PCは基本的に性能が高くなればなるほど消費電力が上がり、発熱量が大きくなってしまう。ノートPCの使い方を思い浮かべてほしいのだが、ノートPCを操作する際は手のひらをパームレストに置いて作業する。発熱が大きいとパームレストが熱くなり、置いている手が熱くなり不快な思いをすることもある。

 そんな不快な思いをしないために、各モデルとも冷却機能に力を入れているが、冷却機構についても気を付けたい。ただファンを回すだけであれば、熱量が大きくなるとファンの回転速度も速くなり、騒音が発生してしまう。ファンの回転速度を速くしなくても、大型のヒートシンクを搭載することで、ファンの回転速度を上げなくても十分な冷却機能を得られるモデルもある。

 ビジネス用PCとして購入する場合、事前に貸し出し機を借りた上で、高負荷時のファン回転音の大きさや、冷却機能については必ず確認しておきたい。

●バッテリー駆動時間

 最後にバッテリー駆動時間について触れていこう。ノートPCには必ず搭載されているバッテリーだが、モデルによって大小さまざまなバッテリーが搭載されている。バッテリー駆動時間については、長ければ長いほど良いのだが、こちらも長時間バッテリーが持つモデルを選ぶと購入価格が高くなる、もしくは超低電力CPUを採用されており、期待していた性能を達成できないといったミスマッチが発生する。

 CPUを選定するときにも触れたが、ビジネス用PCを購入する場合、業務利用において過不足ないモデルを選択して、投資効果を最大限得られるモデルを選ぶようにしよう。

●リモートワークが終わってもWebカメラは重要

 コロナ禍において、自宅などで働くリモートワークが盛況だった際は、ZoomやMicrosoft Teamsなどを使ったビデオ会議が頻繁に行われていた関係で、Webカメラの重要性が非常に高まった。では、現在のようなアフターコロナの時代であれば、Webカメラは不要なのか、といわれると決してそうでは無い。

 例えば人事に携わっている場合、「遠隔地に住む応募者と面接を行う」「対面する必要はないが会議は実施したい」といったユースケースがあるため、可能であればWebカメラを搭載したモデルを選びたい。

 最近のモデルではWebカメラを搭載した上で、さらに画像補正に力を入れているモデルも用意されている。社員への付加価値を提供できるため、Webカメラの画素数だけでなく、付加価値にも着目してモデルを選ぶと良いだろう。

●モデル選定時に見落としがちな内蔵スピーカーとマイク

 Web会議用途で見てみると、内蔵されているスピーカーも重要となる。それぞれのメーカーによってコストを削減する部分は異なるが、モデルによっては内蔵スピーカーの音質が相対的に低い物も存在する。スピーカーの音質が悪ければ、ビデオ会議の際に相手の声が聞こえづらくなる、など業務に支障を来してしまうため、PC選定時に漏れがちな内蔵スピーカーの質にも着目したい。

 ビデオ会議で必要な物として、Webカメラと内蔵スピーカーについても触れてきたが、もう1つ重要なコンポーネントとして、内蔵マイクが上げられる。特に内蔵マイクはモデルによって搭載されている場所が異なっており、使い方によっては声が乗りにくい、といった問題がおきることもある。そのため、内蔵マイクの位置もしっかり把握しておくことをオススメする。

 また、最近一部のモデルではノイズキャンセリング機能を搭載したモデルも用意されており、外付けのスピーカーやマイクを使わなくても、快適なビデオ会議ができるようになっている。PC好事家の方であれば、Bluetooth接続のヘッドセットを持っているため見落としがちなのだが、意外とPCの内蔵スピーカーとマイクだけでビデオ会議をする社員もいる。そのため、ノイズキャンセリング機能を搭載したモデルも可能であれば選定しておきたい。

●業務用PCを選ぶポイントはズバリ、「投資効果が高いか」

 ビジネス用PCを構成するパーツについて、簡単にビジネス用PCを選ぶ際のポイントについて触れてきた。どの項目にもいえるのだが、ビジネス用PCは1台あたりの調達予算が限られているため大は小を兼ねる、の考えで選定せず、洗い出した業務内容や普段の社員のPC利用スタイルから投資効果が最大限得られるモデルを選ぶことが重要だ。

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