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AMDの新型CPU「Ryzen 5 9600X」「Ryzen 7 9700X」はエントリーモデルでも高コスパで魅力的! ライバルCPUと比較して分かったこと

ITmedia PC USER 2024年8月8日 6時0分

 AMDの新型デスクトップ向けCPU「Ryzen 9000シリーズ」のうち、ハイエンドモデル(Ryzen 9000Xシリーズ)の下位に相当する「Ryzen 5 9600X」「Ryzen 7 9700X」の日本における発売日時が8月10日午前11時に決定した。日本における想定販売価格は以下の通りとなる。

・Ryzen 5 9600X:5万4800円

・Ryzen 7 9700X:7万800円

 新しい「Zen 5アーキテクチャ」を採用するデスクトップ向けCPUの第1弾として、発売を今か今かと待っている人も少なくないだろう。

 今回、AMDから発売前にRyzen 5 9600XとRyzen 7 9700Xのレビューキットを借りることができたので、ベンチマークテストを通して性能をチェックしていく。

●Ryzen 5 9600X/Ryzen 7 9700Xの概要(一部おさらい)

 今回レビューを行うRyzen 5 9600XとRyzen 7 9700Xについて、簡単におさらいしておこう。

 両CPUは、COMPUTEX TAIPEI 2024に合わせて発表された。先述の通り、Ryzen 9000Xシリーズとしては下位に相当し、上位モデルの「Ryzen 9 9900X」「Ryzen 9 9950X」と併せて米国では7月31日に発売される予定だった。

 しかし、ハイエンドモデルは初期生産分に品質面で不備があったため、在庫の差し替えを行うために発売が延期された。

 両CPU共に、CPUコアは最新のZen 5アーキテクチャを採用する。一方で、GPUコアはRDNA 2アーキテクチャベースの「Radeon Graphics」(2コア)で据え置かれているため、特にゲームや映像編集に活用する際はグラフィックスカード(外部GPU)を別途用意することが望ましい。

 CPUコアの製造プロセスは、TSMCの 「N4X(4nm)」で、先代の「Ryzen 7000シリーズ」比で微細化が進んだ。両CPUの場合、CPUコアのユニット(CCD:Core Complex Die)は1基構成となる。一方、入出力回りを担うI/Oダイは、先代と同じくTSMCの「N6(6nm)」プロセスで製造される。

 冷却機構を検討する際に重要なTDP(熱設計電力)は、両モデル共に65Wだ。CPUコアの微細化が進み、そもそもの消費電力と熱抵抗値が改善した結果だろう。「ハイエンド(Xシリーズ)でも、65Wモデルが出てきたのか……」と思うと感慨深い。特に、小型のフォームファクターで「高クロックCPUを使った自作PCを組みたい」と考える人には“朗報”といえる。

 ただし、Xシリーズということもあってか、両モデルには純正CPUファンが付属しない。CPUの冷却機構については、別途用意する必要があるので注意したい。

 また見えない部分での性能向上として、IPC(クロック当たりの処理命令数)が先代(Zen 4アーキテクチャ)と比べて平均16%向上している。同じクロックではより多くの命令を処理できることになるため、Ryzen 7000シリーズのハイエンドモデル(Ryzen 7000Xシリーズ)で同等クラスのCPUを使っている場合は、CPUを換装するだけで一定のパフォーマンスアップ(と省電力効果)を得られる(※1)。

(※1)Ryzen 7000/8000Gシリーズ対応のマザーボードを流用する場合、出荷時期によってはUEFI(BIOS)を事前に更新する必要があります

 その他、主な仕様は以下の通りとなる。

・Ryzen 5 9600X

・CPUコア:6基12スレッド(3.9GHz~5.4GHz)

・L1キャッシュ:480KB

・L2キャッシュ:6MB

・L3キャッシュ:32MB

Ryzen 7 9700X

・CPUコア数:8基16スレッド(3.8GHz~5.5GHz)

・L1キャッシュ:640KB

・L2キャッシュ:8MB

・L3キャッシュ:32MB

 次ページからは、Ryzen 5 9600X/Ryzen 7 9700Xの実力をベンチマークテストを通してチェックしていく。

●ベンチマークテストで実力をチェック!

 ここからは、Ryzen 5 7600XとRyzen 7 9700Xの実力をベンチマークテストを通してチェックする。今回はAMDから借りたCPUと、各種自作PCパーツを組み合わせてベンチマーク環境を構築している。

 また比較用として、過去にベンチマークテストを実施したRyzen 7000Xシリーズのスコアや、今回のテスト環境と同様に、外部GPUとしてGeForce RTX 4080 SUPERを搭載したPCにおけるスコアを掲載している。ベンチマークソフトを含め、現在とバージョンが異なるため、あくまでも参考値程度に捉えてもらえれば幸いだ。

CINEBENCH R23

 まず、3Dレンダリングを通してCPU/GPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH 2R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。

・シングルコア

・Ryzen 7 9700X:2196ポイント

・Ryzen 7 9600X:2174ポイント

・Ryzen 7 7700X:2001ポイント

・Ryzen 7 7600X:1965ポイント

・Core i7-14700K:2115ポイント

・Core i5-14600K:2009ポイント

マルチコア

・Ryzen 7 9700X:1万9858ポイント

・Ryzen 7 9600X:1万6682ポイント

・Ryzen 7 7700X:1万9515ポイント

・Ryzen 7 7600X:1万4988ポイント

・Core i7-14700K:3万3035ポイント

・Core i5-14600K:2万3602ポイント

 シングルコアのスコアについては、Ryzen 9000シリーズはスコアが先代比で10%程度向上している。シングルコアでのスコアについては、ライバルのCoreプロセッサ(第14世代)の同等モデルを上回っている。一方、マルチコアのスコアは伸びてはいるものの、幅はそれほど大きくない。

 シングルコア性能がモノを言う傾向にあるPCゲーミングをメインに据えるなら、良い選択肢となりそうだ。

PCMark 10

 次は、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」の結果を見ていこう。

 なお、ここからはRyzen 9000シリーズとCore i9-13900Kを搭載するPCで比較していく。総合スコアは以下の通りだ。

・Ryzen 7 9700X:1万646ポイント

・Ryzen 5 9600X:9120ポイント

・Core i9-13900K:1万54ポイント

 PCMark 10は、Webブラウジングやオフィスソフトの利用といった処理の軽いものから、ビデオ会議や画像編集といった重たい作業まで、PCで行われる多くの作業をまとめてテストする“総合テスト”だ。テスト中は、意図的にいくつかの作業を並行して行うシーンも用意されている。

 基本的に、並行作業は物理コア(あるいはスレッド数)が多いCPUほど優位に立ちやすい。ゆえに、1世代前とはいえ現行製品(第14世代)と性能に大差のないCore i9-13900Kが優位……と思いきや、僅差だがRyzen 7 9700Xがトップに立った。

 先のCINEBENCH R23の結果でもそうだが、Ryzen 9000Xシリーズはシングルコアの性能が改善している。いくらコア数が多くとも、全てのコアを使い切るシーンは限られるため、純粋に1コア当たりの処理能力が結果を左右したと考えていいだろう。

3DMark

 続けて、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」の主要テストを一通り実行してみた。今回はDirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」における総合スコアは以下の通りだ。

・Fire Strike(フルHD:1920×1080ピクセル)

・Ryzen 7 9700X:4万9218ポイント

・Ryzen 5 9600X:4万6596ポイント

・Core i9-13900K:4万781ポイント

Fire Strike Extreme(WQHD:2560×1440ピクセル)

・Ryzen 7 9700X:3万1862ポイント

・Ryzen 5 9600X:3万783ポイント

・Core i9-13900K:3万1613ポイント

Fire Strike Ultra(4K:3840×2160ピクセル)

・Ryzen 7 9700X:1万7730ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万7339ポイント

・Core i9-13900K:1万7982ポイント

Time Spy(WQHD:2560×1440ピクセル)

・Ryzen 7 9700X:2万4506ポイント

・Ryzen 5 9600X:2万2391ポイント

・Core i9-13900K:2万6660ポイント

Time Spy Extreme(4K:3840×2160ピクセル)

・Ryzen 7 9700X:1万2066ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万1239ポイント

・Core i9-13900K:1万4118ポイント

 DirectX 11ベースのFire Strikeシリーズでは、Ryzen 9000XシリーズがCore i9-13900Kを大きく引き離す結果となった。グラフィックスドライバーの改善という要素もあるのだが、それを差し引いたとしても、旧世代の他社製フラグシップCPUに“勝っている”ということ自体驚きだ。

 一方、DirectX 12を使用するTime Spyシリーズでは、Core i9-13900Kが勝ったものの、Ryzen 9000Xシリーズも健闘している。すごく端的な推測だが、「コアが少ない分が、そのままスコア差につながった」という感じの僅差だ。

 なお、先に少し触れた通り、PCゲームの多くでは、シングルコア性能がパフォーマンスを左右する。言い換えると多コアを生かし切れないケースが少なくない。世代の近いCPUでは、コア数の多さがゲームの体験に与える影響はごくわずかといえる。

 むしろ、PCゲーミングを考えると、コア1基当たりの性能が高い方がスコア(≒パフォーマンス)は伸びやすい。3DMarkのスコアは、Ryzen 9000シリーズ(Zen 5アーキテクチャ)の「シングルコア性能を高める作戦」がうまく行っている証拠だ。

FF14旧ベンチマーク/FF15ベンチマーク

 続いて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを実行してみよう。

 まず、比較的軽量な「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14旧ベンチマーク)」を試してみる。

 本来であれば、最新バージョンの「ファイナルファンタジーXIV: 黄昏のレガシー ベンチマーク(FF14新ベンチマーク)」を実施したかったのだが、比較用のCore i9-13900K環境においてテストした時点では同ベンチマークはリリース前だった。そのため、今回はあえて旧バージョンでのテストを実施して比較する。

 画質設定は「最高品質」として、フルHD(1920×1080ピクセル)/WQHD(2560×1440ピクセル)/4K(3840×2160ピクセル)の3つの解像度でテストを行った。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 7 9700X:3万7517ポイント

・Ryzen 5 9600X:3万6740ポイント

・Core i9-13900K:3万9402ポイント

WQHD

・Ryzen 7 9700X:3万2215ポイント

・Ryzen 5 9600X:3万2076ポイント

・Core i9-13900K:3万4457ポイント

4K

・Ryzen 7 9700X:2万1780ポイント

・Ryzen 5 9600X:2万1703ポイント

・Core i9-13900K:2万2292ポイント

 FF14旧ベンチマークの動作要件を見てみると、推奨GPUが「GeForce GTX 970」など、およそ8年ほど前のハイスペックPCを基準としている。そのため、現代のPCにとっては「軽いゲーム(ベンチマーク)」に分類されるため、ご覧の通りどのCPUも、全ての解像度で良好なスコアを残し、差も大きくない。

 このことは「古いゲームタイトルを遊ぶなら、CPUは必ずしもハイエンドである必要はない」ということ……なのだが、ちょっと見方を変えると「Ryzen 9000Xシリーズの下位製品は、古いゲームタイトルならハイエンドCPUと同じパフォーマンスを発揮できる」ともいえる。

 では、負荷のやや重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」では、スコアに差が付くのだろうか。今回は画質を「高品質」として、FF14旧ベンチマークと同じ3つの解像度でテストを行った。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 7 9700X:2万1915ポイント

・Ryzen 5 9600X:2万1446ポイント

・Core i9-13900K:2万2100ポイント

WQHD

・Ryzen 7 9700X:1万9134ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万9564ポイント

・Core i9-13900K:1万9398ポイント

4K

・Ryzen 7 9700X:1万1936ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万1958ポイント

・Core i9-13900K:1万2154ポイント

 こちらも僅差といえば僅差だ。というのも、ある程度の負荷のゲームまでは、基本的に一定以上のCPU性能があれば、ボトルネックになるのはGPUのみだからだ。

 CPUもGPUもゴリゴリ使うような“超”高負荷なゲーム(後述)をたくさん遊ばないのであれば、CPUをRyzen 5 9600XかRyzen 7 9700Xあたりにして予算を抑えて、グラフィックスカードに厚めの予算を回す――そんなマシンの組み方も“アリ”だと思う。

●より高負荷なゲームタイトルでも強い?

 CPUだけでなく、GPUにも大きな負荷を掛ける場合、Ryzen 5 9600X/Ryzen 7 9700Xは健闘を続けられるのだろうか。「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマードコア6)」「Cyberpunk 2077」「Microsoft Flight Simulator」の3タイトルで、平均フレームレートをチェックしてみよう。

アーマードコア6

 アーマードコア6では、フルHD/WQHD/4Kの3解像度で画質設定「最高」にしてテストを行った。表示モードは「フルスクリーン」、上限フレームレートは「120(fps)」として、ゲーム前半の関門ステージ「ウォッチポイント襲撃」をプレイした際の2分間の平均フレームレートを「CapFrameX」で計測している。

 結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 7 9700X:119.7fps

・Ryzen 5 9600X:119.8fps

・Core i9-13900K:119.3fps

WQHD

・Ryzen 7 9700X:119.8fps

・Ryzen 5 9600X:119.8fps

・Core i9-13900K:119.7fps

4K

・Ryzen 7 9700X:116.6fps

・Ryzen 5 9600X:117.8fps

・Core i9-13900K:118.1fps

 アーマードコア6は、グラフィックスの密度の割に、負荷はそれほど重たくない。今回のテスト環境であれば、どの組み合わせであってもフレームレートはほぼ上限に張り付き、非常に快適に遊ぶことができた。

 「テスト環境のグラフィックスカードが(CPUに対して)強すぎるのでは?」と思う人もいるかもしれないが、Ryzen 5 9600X/Ryzen 7 9700Xなら高性能GPUの足を引っ張ることはないともいえる。

Cyberpunk 2077

 現行のPCゲームの中でも、上位を争う高負荷タイトルであるCyberpunk 2077では、ゲーム内に設けられたベンチマーク機能を使って平均フレームレートのチェックを行った。

 ゲーム設定はプリセットの「レイトレーシング:ウルトラ」を選択し、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度でテストした。DLSS(超解像技術)も有効にし「クオリティ・フレーム生成あり」をオンにしている。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 7 9700X:224.81fps

・Ryzen 5 9600X:217.69fps

・≪Core i9-13900K:218.31fps

・WQHD

・Ryzen 7 9700X:180.37fps

・Ryzen 5 9600X:184.26fps

・Core i9-13900K:150.12fps

・4K

・Ryzen 7 9700X:120.05fps

・Ryzen 5 9600X:120.33fps

・Core i9-13900K:102.01fps

 Core i9-13900Kにおける過去のテストと比べると、Ryzen 9000シリーズを使ったテストでは高解像度における平均フレームレートが高い。もちろん、グラフィックスドライバーの改善(最適化の進行)が原因ということも考えられるが、それにしてもすごいことだと思う。

 繰り返しだが、重量級タイトルでもCPUがボトルネックに“ならない”ことは見逃せない。

Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorも、重量級タイトルとして定番だ。高精細なグラフィックで描かれる風景なさながら実写を見ているかのような再現度なのだが、読み込まれるデータ量が多いことからGPUだけでなく、CPUにもかなりの負荷がかかる。

 今回はDLSSをオンにしてフレーム生成も有効とし、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度においてディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦し、CapFrameXで2分間の平均フレームレートを計測した。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 7 9700X:192.4fps

・Ryzen 5 9600X:188.4fps

・Core i9-13900K:188.4fps

WQHD

・Ryzen 7 9700X:191.3fps

・Ryzen 5 9600X:178.2fps

・Core i9-13900K:185.3fps

4K

・Ryzen 7 9700X:146.6fps

・Ryzen 5 9600X:147.5fps

・Core i9-13900K:170.3fps

 こちらも、Ryzen 9000シリーズが10%ほど劣る結果になった4K解像度を除き、Core i9-13900Kと比べ極端に遅いという結果にはなっていない。よほどのことがない限り、肉眼では認識できない差だ。テスト中に画面を見ている限り極端に動作が重たくなるといったこともなかった。

 ここまで見てきて、ゲーム用途ではかなり優秀であることが分かったRyzen 9000Xシリーズだが、それ以外の用途でも優秀なのだろうか。

●クリエイター系アプリでもRyzen 9000Xは優秀?

 PCで行う「重たい処理」は、何もゲームに限ったことではない。写真や動画の編集でもCPUパワーが求められるシーンは多い。時間の都合で、今回は「Adobe Lightroom Classic」を使って写真(RAWファイル)の現像(書き出し)処理に要する時間のみ計測した。

 本アプリでは写真の編集時にはGPUもフル活用しているが、写真の現像処理にはCPUを使っている。つまり、現像はCPUのパフォーマンスを見る上で有用なのだ。

 テストでは、レンズ交換式カメラ「Nikon Z 7II」で撮影したRAWファイル100枚分を、解像度を維持したままJPEGファイルとして書き出すのにかかる時間を測定した。結果は以下の通りだ。

・Ryzen 7 9700X:33.4秒

・Ryzen 5 9600X:38.3秒

・Core i9-13900K:47.6秒

 Ryzen 9000Xシリーズがここまで早いのは予想外だった。Core i9-13900Kも、「4000万画素超のRAWファイルを連続で100枚現像」と考えれば十分過ぎるほどに高速なのだが、それを上回っている。

 余談が、筆者のプライベートで使っているPCのCPUは「Core i7-12700F」で同じテストを行うと1分以上かかる。Ryzen 9000Xシリーズは下位モデルでも、かなり高速に動作するということだ。

●期待以上に良い性能 特にRyzen 5 9600Xのコスパはバッチリ!

 Ryzen 7000Xシリーズの登場から約2年。新アーキテクチャを採用したRyzenを心待ちにしていたファンにとって、Ryzen 9000Xシリーズは納得感のある性能向上が図られていると言っていいだろう。特にシングルコア性能の向上はめざましく、各種テストにおいてCPUがボトルネックとなりうる部分で“遅れ”を取ることはなかった。

 個人的にお勧めなのは、ラインアップで“最下位”となるRyzen 5 9600Xだ。今回比較したCPUの中で極端にスコアが離されることもなかったので、「CPUはミドルレンジに、抑えたコストはグラフィックスカードやストレージに回す」という戦術を採れば、高いバランスの取れたPCを作れるはずだ。もちろん、浮いたコストをゲーミングデバイスやディスプレイに回すのもいいだろう。

 なお、消費電力だが、今回のテスト環境ではアイドル時で「91W」、3DMark(Time Spy Extreme)実行中のピーク時でRyzen 7 9700Xは「507W」、Ryzen 5 7600Xは「497W」となった。GeForce RTX 4080 SUPERの消費電力(320W)を考えると、CPUはかなりの省エネといってもいいだろう。この調子なら、新しくPCを組む際にCPUクーラーの選択肢を広げやすい。幅広い構成に対応しやすい点も評価できる。

 いずれにしても、Ryzen 9000シリーズは2年ぶりのアーキテクチャ刷新に見合うだけの性能向上を果たしている。既存PCのアップグレードでも、これから新規に組むのであっても積極的に選びたいCPUだ。

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