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3in1 PC「ONEXPLAYER X1 mini」は遊びも仕事もこなせる“小さな巨人”だ

ITmedia PC USER 2024年8月8日 12時45分

 One-NetBook Technologyの3in1 PC「ONEXPLAYER X1 mini」(以下、X1 mini)は、8.8型ディスプレイにAMD Ryzen 7 8840Uと32GBメモリ、1TBのSSDを搭載した、ビジネスにも遊びにも使えるポータブルゲーミングPCだ。

 前回は、箱を開けてからのファーストインプレッションとして、外観や初代3in1ともいえる「ONEXPLAYER 2」との比較などを紹介した。今回は実際の仕事に使えるか、ゲーミングPCとしての性能は、といった部分を見ていきたい。

●意外と使える専用カバーキーボード

 X1 miniはポータブルゲーミングPCとはいえ、セットアップで他のWindows PCと異なる部分はない。「こんにちは」画面が出てきたら、日本語や日本を選んでキーボードレイアウトやWi-Fiを設定していくだけだ。

 X1 miniの専用カバーキーボードは筆者がクラウドファンディングの特典として受け取ったものだ。筆者はかな入力派であり、HHKBやKeychronなど常に使いやすいキーボードを求めていることもあり、薄いキーボードカバータイプのUSキーボードをもらってもほとんど使い道がない。

 とはいえ、セッティング時には大いに役に立った。特に新しいX1 miniの専用カバーキーボードはアカウント設定で毎回頭を悩ませる「_」(アンダースコア)の位置が分かりやすい。「Fn」キーと「R」の同時押しで入力できる。

 大まかなセットアップを終え、「メモ帳」アプリを開き、専用カバーキーボードでつらつらと入力をしてみる。

 専用カバーキーボードで文章入力をしてみたところ、使えるレベルに達していると感じた。日本語を入力するには長音記号を「Fn」キーと組み合わせて使わなければならないこと、そうでなくとも最上段にある数字キーがかなり右に寄っていることなど、多少の癖はあるが、時折キーボードに目を落として入力する一般ユーザーであれば、何の問題もないだろう。

 前モデルでは、半角/全角切り替えのショートカットに使う「~」が左上の「Esc」キー位置にあったが、本モデルでは右上の「F11」キーと同居する形になっている。それに伴い、「Esc」キーが単押しで機能するようになった。個人的には、Escキーを多用するのでこの変更はありがたい。ちなみに、半角/全角の切り替えは「Shift」+「CapsLock」でもいけるので、「~」の位置の移動で受けるダメージは少ないだろう。

 「長文を入力するほどではないが、キーボードを使った作業が必要だ」という場合、この専用カバーキーボードをX1 miniと一緒に持ち歩けば、それなりに作業ができそうだ。

 その他、指紋認証センサーやWindows Hello対応のWebカメラを搭載している。カメラのレンズはディスプレイの右側に配置されており、顔認証動作時はIRカメラが派手に赤く光るのが印象的だ。

 電源オフからの起動やスリープからの復帰時に顔認証でログインできるのは非常に快適だ。

●「OneXConsole」でコントローラーがより便利に

 One-NetBook TechnologyのポータブルゲーミングPCには「OneXConsole」という管理ソフトがプリインストールされている。OneXConsoleでは、SteamやEpic Games、Xbox Gaming Passなどで購入したゲームタイトルを、プラットフォームを気にせず並べておいてランチャーとして利用できる。

 また、コントローラーの各ボタンのカスタマイズも行える。例えば、トリガーボタンの感度やデッドゾーンの設定、ABXYキーの入れ替え、あらかじめ作成しておいたマクロの割り当てなどだ。

 OneXConsoleは常駐ソフトで、「Turbo」ボタンの短押しでCPUのTDP設定やファンの回転数、バイブレーション、RGBライトエフェクト、ディスプレイ解像度などを設定する簡易画面を呼び出せる。先述したゲームタイトルのランチャー機能やボタンのカスタマイズを行うには、Turboボタンを長押しする。

 OneXConsoleが常駐していれば、コントローラーにある「キーボードボタン」を長押しすることにより、コントローラーをマウスとして使えるようになる。左のジョイスティックでマウスカーソルを動かし、「A」ボタンでクリック、右のジョイスティックでスクロールといった具合だ。

 なお、キーボードボタンを短押しすれば、ソフトウェアキーボードが表示される。パスワードを入力する際などに便利なので覚えておきたい。

●“本当に”仕事に使えるかどうかをチェック

 ここからは、“本当に”仕事に使えるかどうかをチェックしていこう。

 まず筆者なりに行ったのは、専用カバーキーボードでは入力スピードが落ちるため、快適にキー入力が行える外付けキーボードを用意した。8.8型と小さいながらも、2560×1600ピクセルと高い解像度を備えているので表示できる情報量は多いのだが、普段からトリプルディスプレイ環境で仕事をしているので、サブディスプレイも追加した。

 Googleドキュメントを使って文字を入力してみたところ、さすがにハイスペックなだけあり、遅延するなどということはなかった。

 では、画像の編集ではどうだろうか。複数枚の写真を同時に扱う際に、処理が遅くなるようなことがあるだろうか。無料の画像編集ソフト「Photoscape X」を利用し、複数枚の写真を1枚に並べて合成する「連結」機能で試してみた。

 利用した写真は、Galaxy Note10+で撮影した1枚2MB以上あるもので、長辺は4000ピクセルを超える。これを12枚、ブロック状に並べて連結したところ、長辺が1万6128ピクセル、サイズが39.6MBの画像が生成された。縮小などをせず、そのままテキストを乗せてみたが、それでもCPU利用率は1%、メモリでは31%とまだまだ余裕があるようだった。

 実際の作業では写真を12枚も合成することはないし、テキストを乗せるなどする際には長辺を2000ピクセル以下にしてから行うので、出先で画像編集しなければならなくなったとしても全く問題ないことが分かった。

●ゲームプレイは?

 続いてX1 miniにコントローラーを取り付けて「Goat Simulator」や「Stray」などいくつかのゲームをプレイしてみたが、筆者が遊ぶ程度のゲームであればカクツキや遅延といった不具合が生じることはなかった。

 コントローラーを合わせると、約861gという重量級の“ポータブル”ゲーミングPCになるので、保持したままゲームプレイできるか不安であったが、コントローラーが手にフィットするからか、あまり重さを感じることはなかった。

 X1 miniの記者向け発表会で「AAAタイトルも遊べる」と伝えられていたので、ベンチマークテストを実施して確かめてみたい。

 おなじみ「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」は少し古いこともあり、AMD Ryzen 7 5700Uを搭載している「AYANEO Retro Mini PC AM01」での結果も「とても快適」だった。CPUが8840UのX1 miniであれば、間違いなく「とても快適」になるだろう。

 そこで、2024年4月14日にリリースされたばかりの「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシーベンチマーク」と、2023年3月1日リリースの「BLUE PROTOCOLベンチマーク」を試してみた。TDPの設定は「15W」とした。

 「ファイナルファンタジーXIX:黄金のレガシー」はデフォルトでグラフィックが「高品質(デスクトップPC)」になっていたので、その設定のままベンチマークテストを走らせた。その結果はスコアが4552の「普通」であった。

 そこで「最高品質」を試してみたところ、スコア3615で「設定変更を推奨」という結果になり、キャラクターたちと一緒にしょんぼりしてしまった。

 「標準画質(デスクトップPC)」に設定してもスコアは5264の「普通」だったので「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」を快適にプレイしたいのであれば、画質設定を調整するか、思い切って外付けGPUボックスを別途用意した方が良いのかもしれない。

 次は「BLUE PROTOCOL」だ。こちらはデフォルトが「最高画質」になっていたのでそのままの設定で走らせたが、スコアは6579で「普通」と表示された。

 そこでグラフィック品質を少し落とし、「高画質」にしたところ、スコア8426の「快適」と判定された。

 その他、容量1TBのストレージがPCI Express 4.0 ×4対応のSSDということで読み書きの速度がどれくらいなのか気になり、「CrystaldiskMark 8.0.5 x64」(ひよひよ氏作)を使って計測した。TPDは15W、テストは5回行い、その平均値を取った。

 その結果、読み書きともに高速で、読み出し速度の平均は毎秒7102.76MB、書き込み速度の平均は毎秒6699.83MBであった。ちなみに、最高値は読み出し速度が毎秒7106.27MB、書き込み速度は毎秒6726.98MBだった。

 CPUの性能を測る「Cinebench 2024」も試した。こちらはCPUのTDPを30Wに、ファンの回転数も性能を引き出す設定にしたところ、CPUスコアがマルチコアで777pts、シングルコアで98ptsというスコアにだった。ちなみにTDPを15Wにすると、マルチコアで427、シングルコアで84となった。

 また、X1 miniにはOCuLink端子という希望がある。グラフィックスの性能を上げたいと本気で考えるようになったときに、本体そのものを買い替えることなく、また改造することなく外付けGPUボックスなどを追加しさえすればそれがかなうからだ(それなりに手間はかかるが)。

 最後に、3Dグラフィックスの描画性能を測定する「3DMark」で検証しよう。3DMarkでも新しいテストが追加されており、今回使用したのは2024年5月にリリースされた「Steel Nomad」だ。果たして、高負荷のかかるテストに耐えられるのだろうか。

 5階計測したスコアの平均値は487でフレームレートは4.88FPS。最高ではそれぞれ541と5.41FPSとなり、「Excellent」という評価であった。

 拡張性もそれなりに備え、仕事にも遊びにも使える異色の3in1 PC X1 mini。本機の価格は15万円を超えてしまうが、自宅でも出先でもこの1台に作業を集約できるだけのポテンシャルがありそうだと感じた。

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